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理研など、ネットワーク内の「情報の統合」を定量化するための数理的な枠組みを提案

2016-12-10

ネットワーク内部の情報の統合を定量化
−客観的な意識レベルの指標に向けてー


■要旨
 理化学研究所(理研)脳科学総合研究センター脳数理研究チームの大泉匡史基礎科学特別研究員、甘利俊一チームリーダー、モナシュ大学の土谷尚嗣准教授らの国際共同研究チームは、ネットワーク内の「情報の統合」を定量化するための数理的な枠組みを提案しました。

 私たちの脳が「意識」を生み出すためには、神経細胞同士が密に情報をやりとりすること、つまり情報の統合が必要であると考えられています。例えば、単純なデジタルカメラと脳の情報処理の違いを考えたとき、デジタルカメラの中の多くのフォトダイオードでは、独立に情報処理を行っているだけで情報のやりとりはなく、情報は統合されていません。すなわち、デジタルカメラ自体は見ているものを意識することはできないと考えられます。一方、脳の中ではそれぞれの神経細胞が処理した情報を、神経細胞同士がシナプス[1]を介してやりとりすることによって情報が統合されるため、私たちは豊かな意識体験を持つことができると考えられます。

 このことから、「統合情報量(情報の統合の度合い)」を、脳活動をもとに定量化することによって、植物状態や麻酔下の患者など意識状態の判別が困難な状況でも、客観的に意識レベル[2]を測ることができる可能性があります。しかし、これまでに提案された統合情報量の指標には数学的な問題点がありました。

 今回、国際共同研究チームは、情報の統合の定量化という目的に向けて「情報幾何学[3]」という手法を用いて、ネットワーク内の統合情報量の新しい指標を見出しました。ネットワークの要素間(脳であれば神経細胞)の因果関係を階層的に定量化する数理的な枠組みを提案し、この枠組みの中で統合情報量を一意的に導き出しました。さらに、同じ枠組みからネットワークの因果性の解析で使われる移動エントロピー[4]などの既存の指標も導出できることを示しました。これによって、従来の数学的問題を解消し、統合情報量、相互情報量、移動エントロピーなどのさまざまな指標の統一的な理解が可能になりました。

 本手法は、神経ネットワークの解析に用いることにより意識レベルの定量化につながる可能性があるほか、素子間の因果性を解析する新たな方法論として、ソーシャルネットワークなどのより一般的なネットワークの解析にも適用することができます。今後、複雑なネットワークの新たな解析手法として幅広く利用されると期待できます。

 本研究は、米国の科学雑誌『Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America』オンライン版(12月6日付け:日本時間12月7日)に掲載されます。

 ※背景などリリース詳細は添付の関連資料を参照



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