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NICTとATRなど、無意識のうちに恐怖記憶を消去できるニューロフィードバック技術を開発
つらい経験を思いだすことなく、無意識のうちに恐怖記憶を消去できるニューロフィードバック技術を開発
11月21日 16:00(英国時間)・Nature Human Behaviour誌に掲載予定
■本研究成果のポイント
・恐怖記憶を和らげるには、恐怖の対象(例えば、自動車事故に関連する赤い車)を繰り返し見せたり、あるいはイメージさせる手法が最も効果的です。しかし、そうした手法自体がストレスになる場合があります。
・本研究では、恐怖対象への暴露によるストレスを回避すべく、最先端のニューロフィードバック技術(Decoded Neurofeedback, DecNef)を応用し、被験者が無自覚のうちに恐怖記憶を消去することに成功しました。
・具体的には、スパース機械学習アルゴリズムを用い、視覚野に恐怖記憶の対象を表す空間的脳活動パターンを検出する毎に、被験者に報酬を与える訓練により、恐怖記憶の対象への恐怖反応を緩和することができました。
・恐怖対象へ暴露する従来法では、恐怖記憶を抑制するメカニズムが働くのに対し、DecNefを用いた場合は、恐怖記憶を単に抑制するのではなく、変容できる可能性がわかりました。
・本成果は、恐怖記憶研究分野の権威であるDaniela Schiller教授による解説記事と共に、Nature Human Behaviour誌創刊号に注目トピックとして掲載されます。
・本研究は、総合科学技術・イノベーション会議が主導する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の一環として実施したものです。
※参考画像は添付の関連資料を参照
■概要
株式会社国際電気通信基礎技術研究所(略称ATR)・脳情報通信総合研究所(所長・川人光男)、NICT脳情報通信融合研究センター(略称CiNet)(センター長・柳田敏雄)、カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校(Hakwan Lau准教授)、ケンブリッジ大学などのグループは、被験者につらい経験を思いださせることなく、記憶によって引き起こされる恐怖反応を弱める技術を開発しました。
具体的には、小泉愛研究員等は、機能的磁気共鳴画像(functional Magnetic Resonance Imaging, fMRI)から脳情報を解読する人工知能技術と、実時間ニューロフィードバック法とを組み合わせました。それにより、被験者の視覚野に恐怖記憶の対象を表す脳活動パターンを検出したときに、被験者に報酬を与えて、恐怖記憶を消去することに世界に先駆けて成功しました。
※リリース詳細は添付の関連資料を参照