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鹿島、生育環境に配慮の土壌改質材「泥CURE」を開発し岩手県の閉伊川災害復旧水門工事に適用
環境負荷が小さい土壌改質材「泥CURE」を開発
〜閉伊川災害復旧水門工事において軟弱な河床堆積物の改質に適用〜
鹿島(社長:押味至一)は、生息する魚類の生育環境に配慮した土壌改質材「泥CURE(デイキュア)」(商標登録出願中)を開発し、岩手県で施工中の閉伊川災害復旧水門工事に適用しました。
泥CUREは中性〜弱アルカリ性の土壌改質材です。水域や土壌への環境影響を抑えながら、軟弱土を建設機械が走行可能な強度まで改質することができます。同工事では水門基礎工事にあたり、河床堆積物(川底に堆積した土)下部の地質調査のため、土壌の改質が必要でした。泥CUREによる改質を行った結果、24時間後には調査のための重機走行が可能となり、スムーズに作業を進めることができました。
※参考画像は添付の関連資料を参照
■開発の背景
軟弱地盤の改質には、これまで石灰やセメント、ペーパースラッジ、石膏などが用いられてきました。石灰やセメントは固化性能が高く、再泥化しないといった長所がある一方で、高アルカリ性を示したり、改質材自体に重金属等を含んでいたりするという課題がありました。高アルカリ性となれば、化学反応などにより軟弱地盤中の有機物から硫化水素ガスやアンモニアガスが発生する恐れがあり、また土壌中に重金属等が含まれていれば、その重金属等が溶出しやすくなる可能性があります。
さらに、改質後の土壌が水域に接する場合は、pHの変化による魚類などの生態系への影響も懸念されるため、pHの変化が小さく、重金属等を含まず、かつ、固化性能を有するといった、自然環境への負荷が小さい土壌改質材が求められていました。
■泥CUREの概要
そこで鹿島は、従来品より環境負荷が小さい土壌改質材「泥CURE」を開発しました。軟弱地盤にこの泥CUREを添加・混合することで、建設機械が走行可能な強度まで改質することが可能です。
泥CUREの特長は以下の通りです。
【材料として】
・複数の無機材料を組み合わせた環境に優しい、中性〜弱アルカリ性の材料
・材料の中に重金属等の有害物質を含まない
【効果として】
・改質後の土壌のpHが中性から弱アルカリ性であり、魚類などの生息に問題がないことをヤマメやマダイを用いた生物影響試験により確認済
・対象土壌を改質後、24時間で建設機械が走行可能な強度に固化
・改質後の土壌は必要以上に固化せず「土」の状態を維持するため、再掘削や形質変更が容易に可能
・土壌中に存在する重金属等を不溶化
・改質後の土壌から硫化水素ガスやアンモニウムガスが発生せず、作業環境を悪化させない
■閉伊川災害復旧水門工事での適用
閉伊川災害復旧水門工事では、河川を仮締切し、河床に水門の基礎と柱を建設します。そのため、仮締切した堤内でボーリング調査を数多く行い、河床堆積物の下方にある基盤面(岩盤面)の高さを正確に把握することが重要でした。しかし、河床堆積物はコーン指数200kN/m2以下(泥土に区分される強度)と非常に軟弱であり、そのままでは調査にあたる建設機械が走行不可能でした。また建設機械が走行できる強度にまで土壌を改質するにあたっても、改質した場所は水門完成後には河床に戻ることから、閉伊川に棲むサケ、サクラマスなどの生育に影響のない材料が望まれていました。
そこで、従来品より環境負荷が小さい改質材である泥CUREを用い、河床の表層部(深さ約50cm)の土と撹拌して、土壌改質を行いました。その結果、改質後24時間でコーン指数は600kN/m2以上となり、15t級の普通ブルドーザが走行できる強度を得ることができ、ボーリング調査をスムーズに進めることができました。
※参考資料は添付の関連資料を参照
■今後の展開
鹿島は今後、水門や橋脚の基礎工事などにおける、環境への配慮が必要な水域の掘削・埋戻し作業に、この泥CUREを適用していきます。また、施工箇所のニーズに応じて泥CUREの配合を最適化することも可能であり、様々な環境課題の解決策を積極的に提案してまいります。
■工事概要
工事名:二級河川閉伊川筋藤原地区河川災害復旧(23災662号)水門土木工事
発注者:岩手県
工事場所:岩手県宮古市 藤原地内
工期:2014年3月6日〜2021年3月15日
施工者:鹿島建設(株)・大坂建設(株)・三陸土建(株) 特定共同企業体
工事諸元:水門 全幅154m、津波防御高さ10.4m