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富士通研究所、機械学習による画像認識を活用した交通映像解析技術を開発
機械学習による画像認識を活用した交通映像解析技術を開発
既設カメラを使ったシステムに低コストで高精度な認識機能を付加
株式会社富士通研究所(注1)(以下、富士通研究所)と富士通研究開発中心有限公司(注2)(以下、FRDC)は、画像処理と機械学習の技術を活用して、道路交通の監視映像を解析し、渋滞や事故、交通違反などの状況を高精度かつリアルタイムで認識する技術を開発しました。
今回、一般道路や高速道路などに設置されている監視カメラの映像を解析することで、誤認識の原因となる照明変化や夜間・霧など様々な環境状態による特徴や、カメラの設置状態が類似する映像を自動的にグループ化して効率的に機械学習することにより認識精度を向上させる技術と、車両や人などの移動体の動きを解析し事故など複雑な事象を、演算量を抑えながら効率的に推定する技術の組み合わせにより、高精度な交通映像解析を実現しました。
本技術の実証実験を、中国国内の都市において、清華大学蘇州自動車研究院(注3)(以下、TSARI)と共同で実施した結果、交通事故や違反など把握したい11事象について90%から95%の認識精度を達成しました。
本技術により、高い映像補正機能を持たない既設カメラを利用した際にも、自動的な交通状況把握ができ、渋滞低減へ向けた交通流制御や分析、事故や違反への迅速な対処など低コストで高精度な映像監視システムの提供が可能となります。
■開発の背景
都市への人口集中による自動車交通の過密な状況は、慢性的な渋滞、騒音、大気汚染などの社会問題を引き起こしています。特に中国では、自動車保有台数の急増にともない、交通違反や、それともなった死亡事故など安全・安心面での問題も深刻化しています。このため、近年、監視カメラを大規模に都市に配置して遠地から集中管理することで、交通の安全、環境対策、渋滞緩和などへ活用する取り組みが期待されています。
■課題
広い地域を監視する業務においては、大量の映像から迅速かつ正確に必要な情報を抽出し関係者に伝えることが重要ですが、従来の映像認識による交通監視技術は、自動車のヘッドライトや太陽光などの光源、影など、様々な環境要因による影響を受けやすいことが課題となっています。そのため、すでに各所に設置されているカメラを画像認識による解析のために利用する場合は、このような刻々と変化する環境の変動に合わせてカメラの調整や設置場所、向きなどを調整することが難しいため認識精度を上げることに限界がありました。また、多様で複雑な事故や違反などの事象を効率良く高精度で認識することも課題となっています。
※以下の資料は添付の関連資料「参考資料」を参照
・開発した技術
・効果
■今後
富士通研究所とFRDCは、本技術で認識できる事象の追加と精度向上を進め、TSARIと共同で実証実験を進めていく予定です。また両者は、2016年度以降に、本技術と、富士通株式会社が提供する位置情報を活用したクラウドサービス「FUJITSU Intelligent Society Solution SPATIOWL」を連携させることにより、広域で発生した事象をリアルタイムで認識し、瞬時に地図上に表示するサービスの中国での実用化を進め、その後日本も含めほかの地域へ展開を目指します。
以上
■注釈
注1 株式会社富士通研究所:
本社 神奈川県川崎市、代表取締役社長 佐々木繁
注2 富士通研究開発中心有限公司:
本社 北京市、董事長 佐々木繁
注3 清華大学蘇州自動車研究院:
所在地 中華人民共和国江蘇省蘇州市、院長 成波
注4 大気汚染などにおける映像を鮮明化するFRDCの独自技術:
「霧」や「もや」などをクリアにする高速画像処理技術
http://www.fujitsu.com/downloads/JP/archive/imgjp/jmag/vol64-5/paper10.pdf