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理研、大型放射光施設「SPring−8」を使い結晶の歪みでX線を制御する「X線導波管」の開発に成功

2016-10-18

横滑りX線導波管
−理論物理の検証が拓いたX線制御の新技術−


■要旨
 理化学研究所(理研)放射光科学総合研究センター放射光イメージング利用システム開発ユニットの武井大客員研究員(立教大学先端科学計測研究センター研究員)、香村芳樹ユニットリーダーらの研究チーム(※)は、大型放射光施設「SPring−8[1]」を使い、結晶の歪みでX線を制御する「X線導波管[2]」の開発に成功しました。

 X線は物質を透過しやすい性質から、医療や科学研究の根幹を支える重要な光です。しかし、その高い透過性のため、私たちが日常的に使用する可視光用の鏡やレンズではX線をうまく操ることができません。X線をきれいに効率よく操るためには、高い精度で加工された専用の光学素子が必要です。また、それらの使い方にもさまざまな工夫が不可欠です。これらの事情から構築できるX線光学系の自由度は可視光のそれと比べるとかなり低いため、結果として多くのX線実験はさまざまな制約を受けています。そこで、X線を制御する新しい手法を開拓すれば、より多くの選択肢から幅広い実験が可能となります。

 今回、研究チームは歪んだシリコン単結晶に、「ブラッグの条件[3]」付近で照射したX線の軌跡と向きの変化を調べました。その結果、光が持つ波としての性質が結晶の歪みで強調され、X線の向きは変わらず位置だけが大きくずれる現象(横滑り現象)を発見しました。これは、先行する理論研究の実証へとつながりました。さらに、この現象を応用することで、結晶の歪みを最適化してX線ビームの軸を任意に平行移動(横滑り)できるX線導波管を開発しました。

 この技術により、光ファイバーのように結晶を通じてX線を伝送することが可能となり、将来的にさまざまな放射線・X線実験における手法および戦略の拡充へとつながる可能性が期待されます。

 本研究は、科学研究費補助金の挑戦的萌芽研究「ダイヤモンド単結晶による次世代型X線干渉望遠鏡の開発」、基盤研究(B)「X線波束の異常シフト現象を利用した光学素子開発とベリー位相項の可視化研究」、「磁気カイラルメタ物質を用いた光に対する人工的ゲージ場の創成研究課題」、および「非相反メタマテリアルによる電磁波ビーム制御」の支援を受けて行われました。

 成果は、米国の科学雑誌『Optics Express』のオンライン版(10月12日付:日本時間10月13日)に掲載されます。

 ※研究チーム
  理化学研究所
  放射光科学総合研究センター
  利用システム開発研究部門
  ビームライン基盤研究部 放射光イメージング利用システム開発ユニット
  客員研究員 武井 大(たけい だい)(立教大学先端科学計測研究センター研究員)
  ユニットリーダー 香村 芳樹(こうむら よしき)

  XFEL研究開発部門
  ビームライン研究開発グループ 理論支援チーム
  特別研究員 澤田 桂(さわだ けい)

  放射光科学総合研究センター
  センター長 石川 哲也(いしかわ てつや)

 *背景などリリース詳細は添付の関連資料を参照




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