イマコト

最新の記事から注目のキーワードをピックアップ!

Article Detail

東北大など、高精細小型球状マイクロホンアレイシステム開発に成功

2016-09-16

高精細小型球状マイクロホンアレイシステム開発に成功


【概要】
 ・リオンが開発したMEMSエレクトレットマイクロホンを用い実用化水準システムを開発
 ・人の頭に相当する直径17cmの球形きょう体に64個のマイクロホンを均等配置
  →受音点の3次元音空間情報の高精度でリアルな集音が可能に
 ・さらに複数のアレイを用いて,特定の音をきれいに抜き出す集音技術を開発中
  →選手同士の会話もダイレクトに聞こえる臨場感あふれるスポーツ放送等も可能に

 東北大学電気通信研究所先端音情報システム研究室(以下東北大学)の坂本修一(さかもとしゅういち)准教授,トレビーニョホルヘ(とれびーにょほるへ)助教,鈴木陽一(すずきよういち)教授らの研究グループは,リオン株式会社(以下リオン)との共同研究により,リオンが開発した次世代の高性能超小型マイクロホン「MEMSエレクトレットマイクロホン(※1)」を用いて,人頭大で小型の64チャネル球状マイクロホンアレイシステムの製作に成功した。これにより,設置場所における音空間の情報を極めてリアルに集音することが可能となった。
 このMEMSエレクトレットマイクロホンは,先にリオンが開発に成功したもので,放送等のプロ用集音,精密音響測定等にも用いうる高い性能を有する。
 さらに,この球状マイクロホンアレイ(※2)を複数台用いた集音システムは,例えばスポーツ競技の場で,周囲の雑音や歓声などの影響を大幅に低減した集音が可能になる。これにより,選手の会話やプレー音を鮮明にダイレクトに捉えるなど,国際的なスポーツ大会のテレビ放送などにおいてこれまでにない臨場感あふれる実況放送の可能性が期待できる。
 なお,本研究は,一般社団法人日本音響学会の2016年秋季研究発表会(9月14日から16日,富山大学にて開催)にて発表される。また,本研究は東北大学電気通信研究所の産学共同マッチングファンドの助成を受けて実施されたものである。

【詳細な説明】
1.研究の背景
 ある場所の音を,音の立体感(音空間情報)とともにリアルに集音することは,5.1chステレオや22.2ch立体音響技術など音再生技術と両輪を為す極めて重要な技術である。このような集音技術には,多数のマイクロホンを空間内に配置したマイクロホンアレイが有用である。この分野で東北大学では,多数のマイクロホンを人間の頭の大きさ程度の球状に配置した超高性能マイクロホンアレイの新技術提案とシステム構築を行い,その優位性を示すなど,世界最先端の研究を進めている。

2.開発した64チャネル球状マイクロホンアレイ
 今回開発に成功した64チャネル球状マイクロホンアレイは,人間の頭に相当する直径17cmの球状であり,外形寸法が3.6mm×2.8mm×1.3mmと非常に小形で高性能なMEMSエレクトレットマイクロホンを64個搭載している。球状マイクロホンアレイは音空間をリアルに集音するために近年注目され始めており,様々な用途が期待されている。特に人頭大の多チャネルマイクロホンアレイは,集音点(マイクロホンアレイ設置位置)における3次元音空間情報を人間の感ずるとおりのリアルさで集音できることが東北大学坂本准教授らの研究により明らかになっている。ただし,人頭大の大きさに多数配置しうるほどの小型で高性能なマイクロホンがなかったことが大きな課題であった。今回,リオンが開発したMEMSエレクトレットマイクロホンを用いることにより,多数のマイクロホンを配置した実用レベルのマイクロホンアレイが実現した。これにより,マイクロホンアレイを設置した場所における音空間の情報を極めてリアルに集音することが可能となった。

3.アレイオブアレイズ技術(※3)の適用
 東北大学とリオンは,マイクロホンアレイを複数台用いた集音手法であるアレイオブアレイズ(array of arrays)技術の高度化研究に共同で取り組んでいる。この研究では,開発した球状マイクロホンアレイを複数用い,音源と集音点の間に妨害音がある状況でも妨害音のエネルギーを1/10程度以下に減少させて,確実に目的音を抽出する技術を開発した。この,今回製作した球状マイクロホンアレイを用いたアレイオブアレイズ技術により,従来のように,目的音を抽出する際に指向性の高いマイクロホンをターゲット(音源)に向け続ける必要が無く,固定した複数台の球状マイクロホンアレイにより,妨害音がある状況でも求める音源のみをダイレクトに鮮明に抽出することが可能となる。
 今後,国内で開催予定のスポーツ大会のテレビ放送の際には,競技場に複数台の球状マイクロホンアレイを固定して設置することで,注目する選手たちの会話,プレー音,ボールを蹴る・打つなどの音を周りの騒音や歓声などの影響を大幅に削減し,場面に応じて自由に捉えるなどの,これまでにない臨場感の高い実況放送への可能性が期待できる。
 さらに,スポーツ大会,コンサート,記念式典などの記録映像において,本システムを採用することにより,全方位で録音した全ての音の中から,必要な音を自由に抽出することが可能となる。そのため,本システムを採用したスポーツ大会の記録映像では,タブレットなどで視聴者が注目したい場面へズームインすると,その場面の音声を鮮明に聞くことができる。映像の中から自分の見たいシーンを自由にズームアップして切り出し,好きなときに何度も個別に見ることができる次世代のオンデマンド提供への発展も期待できる。

 *用語説明・図1〜3は添付の関連資料を参照



Related Contents

関連書籍

  • 死ぬまでに行きたい! 世界の絶景

    死ぬまでに行きたい! 世界の絶景

    詩歩2013-07-31

    Amazon Kindle版
  • 星空風景 (SKYSCAPE PHOTOBOOK)

    星空風景 (SKYSCAPE PHOTOBOOK)

    前田 徳彦2014-09-02

    Amazon Kindle版
  • ロンドン写真集 (撮影数100):ヨーロッパシリーズ1

    ロンドン写真集 (撮影数100):ヨーロッパシリーズ1

    大久保 明2014-08-12

    Amazon Kindle版
  • BLUE MOMENT

    BLUE MOMENT

    吉村 和敏2007-12-13

    Amazon Kindle版