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サントリー健康科学研究所、加齢によるアラキドン酸(ARA)生成能力の低下を世界で初めて確認

2016-09-08

加齢によるアラキドン酸(ARA)生成能力の低下を世界で初めて確認
―2016年国際脂肪酸・脂質研究学会(ISSFAL)で発表―


 サントリー健康科学研究所(所長:柴田浩志、京都府相楽郡精華町)は、女子栄養大学(学長:香川明夫、埼玉県坂戸市)との共同研究において、加齢によるアラキドン酸(以下、ARA)生成能力の低下を世界で初めて確認し、2016年国際脂肪酸・脂質研究学会(通称ISSFAL、2016年9月5日〜9日、南アフリカ)にて発表します。

 今回の発表演題と発表者は以下の通りです。

▼発表演題
 「ヒトの長鎖高度不飽和脂肪酸生合成能力は加齢やFADS1遺伝子多型によって低下する〜安定同位体を用いた直接評価〜」

▼発表者
 サントリー健康科学研究所
  佐々木秀幸、金田喜久 他
 女子栄養大学 基礎栄養学研究室
  川端輝江、堀口さやか

【研究の背景】
 ARAは、脳・肝臓・皮膚などの身体のあらゆる組織を構成する主要な「長鎖高度不飽和脂肪酸」のひとつです。肉、卵、魚など食品中に多く含まれており、食事からも摂取すべき「必須脂肪酸」としても知られています。
 ARAは母乳にも含まれており、乳幼児の発育には欠かせない栄養素であることが明らかにされていますが、近年、ARAが高齢者の脳の働き(認知機能)にも重要な役割を果たすことが明らかにされ、高齢者にとっての“脳の栄養素”として注目されています。
 サントリー健康科学研究所では長年、ARAと加齢との関わりを研究してきました。これまでに、血中のARAが加齢によって減少することを確認(※1)しましたが、その原因は明確ではありませんでした。一方で、血中のARAは、FADS1遺伝子多型(rs174547)(※2)(以下、遺伝子多型)別に影響を受けることも確認(※3)しています。
 今回我々は、加齢による血中のARA減少の原因として、体内での生成能力の低下が関係していると考え、遺伝子多型の影響を考慮した以下の試験を行いました。

 ※1 第63回 日本栄養・食糧学会(2009年5月21日、長崎県)にて発表
  Prostaglandins Leukot Essent Fatty Acids.84(2011) 131−7に論文掲載
 ※2 FADS1遺伝子多型(rs174547)は、特定のチミン(T)塩基がシトシン(C)塩基に変異することによって、TT型、TC型、CC型の3種に分類されます。
 ※3 第12回 アジア栄養学会議(2015年5月15日、兵庫県)にて発表
  Prostaglandins Leukot Essent Fatty Acids.105(2016) 9−14に論文掲載

【試験方法】
 被験者56名を対象に、遺伝子多型別および年齢別のARA生成量を比較しました。年齢は若齢(28.7±0.5歳)・高齢(67.4±0.6歳)に区分しました。
 ARAを体内で生成するための原料となるリノール酸安定同位体の13Cで標識したもの)を摂取してから14日間、経時的に13C標識のARA生成濃度を分析することにより、ARA生成量を濃度曲線下面積として算出しました。正確に生成量を評価するために、被験者の食習慣の確認、試験開始前日から6日目までの食事同一化などの管理を行いました。

 *表資料は添付の関連資料を参照

【結果】
 遺伝子多型別では、TT型より、TC型・CC型のほうが、ARA生成量が少ないことが認められました(図1)。
 年齢別では、“C”を保有する遺伝子多型(TC型とCC型)において、若齢者より高齢者のほうが、ARA生成量が少ないことが認められました(図2)。
 いずれも、世界で初めて(※4)確認されました。

 ※4 2016年8月現在/サントリーウエルネス株式会社調べ

 *図1・2は添付の関連資料を参照

【考察】
 今回の試験により、日本人の約6割を占める“C”を保有する遺伝子多型において、加齢による血中のARAの減少には、加齢によるARA生成能力の低下が寄与していることが明らかになりました。
 ARAを生成する酵素はドコサヘキサエン酸(以下、DHA)やエイコサペンタエン酸(以下、EPA)とも共通しているため、潜在的にはDHAやEPAを体内で生成する能力も、加齢により低下すると考えられます。
 高齢者は、脳の働き(認知機能)を維持するために、食事からARA・DHA・EPAを摂取することをよりいっそう意識する必要があります。

▼国際脂肪酸・脂質研究学会(ISSFAL)について
 1991年設立。世界40カ国以上500名以上の会員を有する、脂質の栄養や機能(健康効果)に関する世界で最も権威のある学会。

以上



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