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コーセー、細胞内の「ミトコンドリア」の質が加齢とともに低下すると確認
細胞内の「ミトコンドリア」(※1)の質が加齢とともに低下する
株式会社コーセー(本社:東京都中央区、代表取締役社長:小林 一俊)は、細胞内の“エネルギー生産工場”と言われる「ミトコンドリア」の質が、加齢とともに低下することを、同一人物由来の加齢モデル細胞系列(※2)で初めて確認しました。
■同一人物由来の加齢モデル細胞系列を用いた研究
これまで、コーセーは紫外線や活性酸素により引き起こされる皮膚老化の研究に取り組んできました。中でも、同一人物から長期にわたり採取した線維芽細胞(※3)を用いた老化研究は他に例がなく、加齢による老化メカニズムの解明に貢献する様々な知見を見出してきました。
■細胞内のエネルギー産生を司るミトコンドリアに着目
今回、コーセーはこの同一人物の各年代から採取した細胞(図1)を用いて、細胞供与年齢とミトコンドリアの質との関係を新たに検討しました。ミトコンドリアの質は、ミトコンドリアの中に存在する活性酸素消去酵素であるスーパーオキシドディスムターゼ2(SOD2)(※4)の量を測ることで評価しました。
*図1は添付の関連資料を参照
■加齢とともにミトコンドリアの質が低下する
その結果、細胞内のSOD2の量は細胞供与者の加齢に伴い減少していることが明らかになりました(図2)。さらに、別の解析から、各年代の細胞に含まれるミトコンドリアの数に有意な差がなかったことから、ミトコンドリアに含まれるSOD2の量は加齢に伴って減少し、ミトコンドリアの質が低下することがわかりました。これは、加齢によって細胞が活性酸素によるダメージを受けやすい状態になっていることを意味しており、このことがさらに組織の老化を促進させる原因になると考えられます。
*図2は添付の関連資料を参照
■活性酸素によるダメージを防ぐ成分の探索
コーセーは、本研究成果を応用し、加齢に伴い低下するミトコンドリアの質を制御できる成分の探索を今後も続けていきます。また、iPS細胞技術や同一人物由来の加齢モデル細胞系列を用いた老化研究を行うことで、そのメカニズム解明に貢献する様々な知見を見出していきます。
※1 ミトコンドリア
細胞内小器官で、栄養として吸収した糖や、呼吸で取り入れた酸素を材料にして、細胞が生命活動に必要なエネルギー(ATP)を作り出す重要な“エネルギー生産工場”です。
一方、エネルギーを作り出す過程で酸素を使うため、スーパーオキシドアニオンなどの毒性の強い活性酸素も発生させてしまいます。
しかし、ミトコンドリア内で発生した活性酸素は、ミトコンドリア内に存在する活性酸素消去酵素であるスーパーオキシドディスムターゼ2(SOD2)により素早く消去され、ミトコンドリア自身や細胞へダメージが及ばないような仕組みが働いています。
*参考画像は添付の関連資料を参照
※2 同一人物由来の加齢モデル細胞系列とは
30年以上もの歳月をかけ、同一人物の皮膚から36歳、47歳、56歳、62歳、67歳の時点で採取した細胞。同一人物ゆえ、個人差の影響がなく“加齢”という因子のみを反映した細胞であるため、加齢に伴い進行する様々な変化や老化メカニズムを正確に調べることができます。
※3 線維芽細胞
表皮下層に位置する結合組織の「真皮」を構成する細胞の一種。肌のハリや柔軟性を保つコラーゲンや、エラスチンの前駆体を産生します。
※4 スーパーオキシドディスムターゼ2(SOD2)
活性酸素消去能をもつ酵素の一つで、細胞内のミトコンドリア内に存在します。これまでの研究において、組織の老化や個体寿命への関与が知られています。