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日立化成、米国MDアンダーソンがんセンターと血中循環がん細胞に関する戦略的提携で合意
米国MDアンダーソンがんセンターと血中循環がん細胞に関する戦略的提携で
合意
−採血による転移性がんの早期発見や抗がん剤選定など、臨床応用へ期待−
日立化成(本社:東京、執行役社長:丸山 寿、以下、日立化成)とテキサス州立大学MD アンダーソンがんセンター(所在地:米国ヒューストン、学長:John Mendelsohn、以下、MD アンダーソン)は、このたび血中循環がん細胞(Circulating Tumor Cells、以下CTC)を捕捉する高精細フィルター、血液自動処理装置および試薬からなるシステム(以下、本システム)の開発および評価について4年間の戦略的提携(以下、本提携)で合意しました。本提携では、日立化成が資金および本システムを提供し、MDアンダーソンは2016年5月に開始した大規模臨床試験(以下、本臨床試験)(*1)において、本システムを検討、向上、活用するための専門知識を提供するとともに、がん関連遺伝子の発現・解析を含むCTCの遺伝子解析を実施します。これにより本システムで捕捉したCTCが、がんの遺伝子解析において臨床的有効性があるかどうかを確認します。
これまでにCTCは生検(*2)等の侵襲性(*3)の高いがんの診断法に対する代替手段として利用され、すでに転移性乳がん、前立腺がん、大腸がんにおいて、予後予測のバイオマーカー(*4)として価値が認められています。
本臨床試験においては、転移性乳がん、非小細胞性肺がんについて実施する予定です。本臨床試験は、MDアンダーソンの3部門3学科による共同プロジェクトとして実施されます。研究責任者は、James Reuben博士(血液学科教授)、上野 直人博士(乳腺腫瘍内科教授)とSteven Lin博士(放射性腫瘍学科准教授)の3名です。
MDアンダーソンのReuben博士は、「本提携は、従来の侵襲性の高い生検に代わる非侵襲性のプラットフォーム(本システム)を使用してCTC中のがん関連遺伝子の特性を評価し、さらにそこから治療効果の反応を示すバイオマーカーを特定することを実現させる。」「我々の希望は、このような提携によって、がん患者のための精密・的確な医療(プレシジョン・メディスン)を可能とし、がん治療を大幅に向上させることにある。肺がんおよび乳がん患者への効果的な治療を実現するには、分子標的療法(*5)が有効に作用する患者を選定し、個々の患者の治療におけるリスクを分類することが必要である。」と述べています。
本臨床試験の実施により、CTCの基礎研究のみならず、転移性がんの早期発見や患者に合わせた抗がん剤の選定、抗がん剤の開発など、広範囲におよぶCTCの臨床応用が進むことが期待されます。
日立化成の吉田誠人執行役は「本提携は当社にとってがん診断市場に参入する好機であると考える。」また「MDアンダーソンのがん治療における卓越した実績と当社の電子材料分野で培ってきた微細加工技術の組み合わせは、リキッドバイオプシー(*6)における当社の優位を築くものとなるでしょう。この優位性を生かしCTC由来のバイオマーカーを診断に適用することで、病状のモニタリング、予後予測、治療薬の効果予測等の臨床応用として、2021年までにがん診断市場に参入したいと考える。」と述べています。
日立化成は、微細加工技術を適用した高精細フィルターを用いて患者の血液から迅速にCTCを捕捉する技術を開発してきました。日立化成が開発した高精細フィルター、血液自動処理装置および試薬からなるシステムを使用し、健常人の血液にがん細胞を添加した摸擬実験において、血液中に存在するCTCを90%以上捕捉できることを確認しています。
今回の日立化成とMDアンダーソンの関係を提携にまで発展させたのは、同がんセンターの最先端のCTC研究を活用するために2014年から始めた共同研究の成果です。日立化成の独自技術を用いてCTCを捕捉できること、さらにバイオマーカー候補となるがん関連遺伝子の検出が可能であることがMDアンダーソンの研究者によって明らかとされたため、400症例規模の大規模臨床試験として発展させることになったものです。
*1.今回の大規模臨床試験は、病気の状態を客観的に評価できるバイオマーカー(遺伝子、たんぱく質等の分子)を特定するための試験。
*2.生検とは、特殊な針や内視鏡を用いて臓器組織の一部を採取し,切片を顕微鏡で病理組織学的に検査すること。
*3.侵襲性とは、医療行為をする際に、患者に対して危険性や負担がかかること。
*4.バイオマーカーとは、病気の状態を客観的に評価できる遺伝子、たんぱく質等の分子。
*5.分子標的療法とは、ある特定の分子を標的として、その機能を制御することにより治療する療法。
*6.リキッドバイオプシーとは、血液などの体液サンプルを使って診断や治療効果予測を行う技術。
以上