Article Detail
九大、高活性と高化学選択性を兼ね備えたエステル合成用鉄触媒を開発
世界初!高活性かつ高化学選択性を兼ね備えたエステル合成用鉄触媒の開発に成功
九州大学大学院薬学研究院の大嶋孝志教授らの研究グループは、従来の触媒では達成困難であったエステル合成を可能とする高活性鉄触媒の開発に成功しました。
エステルは医薬品などの様々な機能成分子が含まれるためその合成法の研究が盛んに行われてきました。近年ではグリーンケミストリーの観点から「触媒」を用いたエステル合成法が多く研究されています。しかし用いることのできる原料に制限があり、特に立体障害の大きなエステルの触媒的合成法の開発が強く望まれていました。今回本研究グループでは、これまで困難であった原料を用いたエステル合成を可能とする高活性鉄触媒の開発に成功しました。例えば、安価なメチルエステルから合成化学上有用なtert−ブチルエステルを合成することが可能であり、これは世界で初めての成功例です。tert−ブチルエステルはペプチド合成やポリエステルなどの高分子材料の合成で非常に重要です。また私たち独自の化学選択的な反応においても、より精密な制御が要求される活性エステルを原料として用いることが可能で、様々な医薬品を原料として用いることもでき、芳香族アミノアルコールの水酸基選択的アシル化も世界初となります。本触媒は、本学薬学研究院が推し進めているグリーンファルマ研究の核となるもので、現在、人と地球に優しい医薬品合成に取り組んでいます。
本研究成果は、2016年6月16日(木)に国科学誌「Chemistry −A European Journal (IF 5.7)」で公開されました。
■研究者からひとこと:
今回開発した鉄触媒は、従来の触媒と比べて高活性であり、医薬品をはじめ様々な原料からエステルを合成できます。今後は本触媒を用いた不斉反応へ応用していきたいと考えています。
※参考図は添付の関連資料を参照