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東北大、免疫細胞である樹状細胞の分化メカニズムを解明

2016-06-21

免疫細胞である樹状細胞の分化メカニズムの解明
‐転写因子GATA2は樹状細胞の分化を制御する‐


【研究概要】
 東北大学大学院医学系研究科血液免疫病学分野の張替 秀郎(はりがえ ひでお)教授らのグループは、免疫細胞の1つである樹状細胞(dendritic cell:DC)について、細胞分化する際に転写因子GATA2が重要な役割を担っている可能性を明らかにしました。樹状細胞はTリンパ球を活性化する役割を持ち、薬剤によってGATA2の欠損を誘導したマウスでは、脾臓における樹状細胞の数が顕著に減少していました。本研究によって、GATA2異常に伴う難治性の免疫不全症の病態解明に貢献することが期待されます。
 本研究成果は、2016年6月3日Blood誌(電子版)掲載されました。本研究は、文部科学省科学研究費補助金及び血液分子治療学寄附講座寄附金(中外製薬株式会社)の支援を受けて行われました。


【研究のポイント】
 ・樹状細胞はTリンパ球に抗原を提示することで活性化する役割を果たしているが、樹状細胞分化の分子メカニズムに関しては十分解明されていない。
 ・薬剤によってGata2の欠損を誘導した遺伝子欠損マウスでは樹状細胞数の著減が認められた。
 ・樹状細胞の前駆細胞におけるGata2ノックアウトにより、骨髄球系遺伝子群の発現低下とT細胞系遺伝子群の発現上昇を認められた
 ・本研究によってGATA2異常に伴う難治性の免疫不全症の病態解明に貢献することが期待される


【研究内容】
 転写因子GATA2は造血幹細胞の機能維持及び分化に重要な役割を果たしております。近年、GATA2遺伝子の生まれつきの異常により、骨髄異形成症候群や急性白血病の発症に至る難治性の免疫不全症が起こることが報告されました。この免疫不全症の病態の中心は、樹状細胞(dendritic cell:DC)の減少・欠損であります。DCは、病原体に対する自然免疫(注1)を司るとともに、強力な抗原提示細胞(注2)として獲得免疫(注1)を誘導します。一方で自己抗原(注3)に対して免疫寛容(注3)を誘導する存在として、生体内の免疫系のバランス調節において中心的な役割を果たしています。しかし、DCの分化や機能を調節する分子学的なメカニズムに関してはまだ十分解明されていません。
 張替教授の研究チームは、転写因子GATA2のDC分化への影響を調べるため、薬剤で誘導したGata2ノックアウトマウス(条件付きGata2ノックアウト)及びGata2へテロ不全マウスを用いて、DC分化におけるGATA2の意義について検討する実験を行いました。条件付きGata2ノックアウトにおいては、骨髄前駆細胞はほぼ消失し、脾臓におけるDC割合は著明に低下しました。さらに、DCの分化に関与する各骨髄前駆細胞を分取し、GATA2をノックアウトしながらDCへの分化誘導を行う培養系を確立して遺伝子発現について検討した結果、骨髄球系前駆細胞で転写が促進される遺伝子群の低下とリンパ球、特にTリンパ球系の前駆細胞で転写が促進される遺伝子群の上昇が確認されました。以上の結果より、GATA2がDCの分化において重要な役割を果たしている可能性が示唆されました。これらの知見は,GATA2の血球分化や成熟血球における役割に関して新たな洞察を与えるものであると考えられ、GATA2異常に伴う難治性の免疫不全症の病態解明につながることが期待されます。
 本研究は、文部省科学研究費補助金及び血液分子治療学寄附講座への寄附金(中外製薬株式会社)によってサポートされました。


【用語説明】

 注1.自然免疫・獲得免疫:自然免疫とは免疫応答の初期に働く免疫系で、マクロファージや顆粒球、補体系などからなる。獲得免疫はTリンパ球やBリンパ球からなり、最近やウイルスの感染によって抗原に晒されることで後天的に獲得される免疫系。

 注2.抗原掲示細胞:体内に侵入した細菌やウイルス感染細胞などの抗原を取り込んだ後に、近くのリンパ節へ移動し、Tリンパ球に抗原の情報を伝達する役目を果たす免疫細胞。

 注3.自己抗原・免疫寛容:自己抗原とは、自分の細胞に存在するタンパク質などの抗原のこと。免疫寛容とはTリンパ球や抗体が自己抗原を誤って攻撃しないよう防止するためのメカニズムのこと。


 ※参考画像は添付の関連資料を参照


【論文題目】
 English Title:GATA2 regulates dendritic cell differentiationAuthors:Koichi Onodera,Tohru Fujiwara,Yasushi Onishi,Ari Itoh−Nakadai,Yoko Okitsu,Noriko Fukuhara,Kenichi Ishizawa, Ritsuko Shimizu,Masayuki Yamamoto,Hideo Harigae
 「転写因子GATA2は樹状細胞の分化を制御する」
 著者名:小野寺晃一、藤原亨、大西康、伊藤亜里、沖津庸子、福原規子、石澤賢一、清水律子、山本雅之、張替秀郎
 掲載誌名 Blood




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