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東北大、避難指示区域家屋内の放射性セシウム汚染レベルは原発からの距離と相関関係と解明
避難指示区域家屋内における放射性セシウム汚染
汚染レベルは原発からの距離と相関
【概要】
一般に住民は自宅屋内で過ごす時間がもっとも長いため、身近な屋内汚染は毎日の日常的な被ばくに繋がる可能性があります。また、屋内は除染対象となっていないことから、今後の住民の帰還にあたって屋内汚染の状況を知ることは重要です。しかし、福島原発事故後にこの観点からの調査及び報告はまだありません。
東北大学大学院薬学研究科ラジオアイソトープ研究教育センターの吉田浩子講師は、福島県飯舘村、南相馬市小高区、双葉町、大熊町、富岡町の避難指示区域の家屋について部屋、屋根裏及び柱の表面汚染を乾式スミア(拭き取り)法によってサンプリングし、屋内汚染の評価を行った結果、汚染レベルは原発からの距離と相関関係があることを明らかにしました。
図1は、地域ごとに放射性セシウムによる表面汚染密度の頻度分布を相対的に示したものです。福島第一原発からの距離を括弧内に示しています。飯舘村では表面汚染密度の低い数値に分布していますが、大熊町、双葉町や富岡町の原発により近い地域では高い数値にまで分布が広がっており、汚染レベルは原発からの距離と関係のあることを示しています。
図2は、大熊町、双葉町、富岡町の原発に近い各住家における放射性セシウムによる表面汚染密度(■)と福島第一原発からの距離の関係を示したものです。汚染レベルは原発からの距離の二乗に反比例していることが示されています。一方、屋外・屋内の空間線量率(それぞれ■・■)には距離との相関関係は認められませんでした。
※図1・2は添付の関連資料を参照
【詳細な説明】
本成果は、福島第一原子力発電所事故後の避難指示区域家屋内における放射性汚染についての初めての報告です。2013年7月から2015年1月にかけて95軒の住家で2,653の試料を採取した調査結果をまとめています。
放射性プルームが通過する際に、降雨がないと乾性沈着が生じます。気密性の悪い(風通しの良い)日本の木造住家では換気率が高く、プルーム通過時の住家への空気(エアロゾル)の入り込みにより屋内に乾性沈着が生じたと考えられます。調査はすべての部屋および屋根裏の平面並びに柱の垂直面を対象とし、人の掃除などの生活活動による影響を避けるため、人の手が加わっていない箇所についてサンプリングを行っています。
放射性セシウムによる表面汚染密度の頻度分布には明らかな地域差があり、原発からの距離と関係のあることが示されました(図1)。
大熊町、双葉町、富岡町の原発に近い住家では、表面汚染密度(■)は距離の二乗に反比例していることが示されました。(図2)一方、屋外・屋内の空間線量率(それぞれ■・■)には距離との相関関係は認められませんでした。屋外の空間線量率は主に放射性セシウムの湿性沈着によるもので、降雨とともに湿性沈着はまだらに生じたため原発から離れた地域でも高い沈着が観察されましたが、これとは異なり乾性沈着は原発からの距離に伴い減少していることを意味しています。なお、屋内の空間線量率は屋外の湿性沈着の影響が強く、屋外の空間線量率のほぼ0.4の値となっています。また、図2では、原発に近い地域の住家では湿性沈着(屋外の空間線量率)が低くても、屋内の汚染レベルが高い例があることも示されました。
本研究の成果は、英国の科学雑誌 Scientific Reportsに、平成28年5月23日付けで掲載されました。
[論文情報]
Hiroko Yoshida−Ohuchi,Takashi Kanagami,Yasushi Satoh,Masahiro Hosoda,Yutaka Naitoh,Mizuki Kameyama
“Indoor radiocaesium contamination in residential houses within evacuation areas after the Fukushima nuclear accident“
Scientific Reports,6,26412(2016)(doi:10.1038/srep26412).