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帝国データバンク、「熊本地震の現状と今後の復興に向けて」調査結果を発表

2016-04-28

特別企画:熊本地震の現状と今後の復興に向けて
被災地所在企業への課題、取引継続がカギ
〜取引先は全国で延べ約3万1千社〜


■はじめに
 平成28年熊本地震の影響は、被災地に所在する企業にとどまらず、取引を行う多くの企業にも広がりを見せている。同時に、被災地には多方面から支援の輪も拡大しつつある。今後、被災地域の復旧・復興とともに、データによる現状把握は被災地に所在する企業の一日も早い企業活動の再開や、今後の効果的な復興支援策の策定のために不可欠といえる。
 そこで、帝国データバンクでは、2016年3月末時点の企業概要ファイル「COSMOS2」(約146万社収録)を基に、本社が被災地に所在する企業1万7208社の取引先(仕入先・販売先)や各地域の産業の集積状況を明らかにした。

 ※対象とした被災地は、4月14日以降の地震で震度6弱以上が記録された地域


■調査結果
 1.被災地に所在する企業(以下、被災地所在企業)の仕入先は全国で1万5911社判明。このうち、被災地所在企業への販売を主力としている企業は4829社
 2.販売先は1万5754社で、このうち被災地所在企業からの仕入れを主力としている企業は5103社。特に、被災地を含む「九州」は4105社で8割以上を占める。さらに「関東」も517社で1割超となっており、熊本地震による影響は全国に波及する可能性も
 3.熊本県の産業の集積状況みると、「飲食料品卸売業」の8割超が被災地に集積。県の強みとなる農産品をユーザに届ける流通プロセスにダメージを受けていることが懸念される
 4.大分県内の被災地(別府市、由布市)では、特に「旅館・ホテル」が集積している地域に被害が集中。県内企業における同業種の4割超が被災地に所在しており、インバウンドの拡大を背景に観光客数の増加がみられていたなかでの震災は、県経済にとっても痛手となりかねない
 5.被災地所在企業の復活には、早期の復旧・復興が欠かせないが、その政策の立案・実施には企業や地域の置かれた実情に沿ったきめ細かな支援がカギ。震災被害への影響を可能な限り抑えるためには、被災していない企業や個人の日常の行動が、被災地への大きな支援に


1.被災地に所在する企業の販売先は今後の復興に向けたカギとなる存在
 被災地に所在する企業(以下、被災地所在企業)と取引がある企業をみると、被災地所在企業の仕入先は全国で1万5911社判明した。このうち、被災地所在企業を主力先としている企業は4829社あり、被災地所在企業の再建が遅れるとこれら仕入先企業の業績に悪影響が及ぶことが懸念される。
 他方、販売先は1万5754社であった。被災地所在企業からの仕入れを主力にしている企業は5103社ある。特に、被災地を含む「九州」は4105社で8割以上を占める。さらに「関東」も517社で1割超となっており、熊本地震による影響は全国に波及する可能性がある。とりわけ、製造業に強みを持つ熊本の販売先には中部地域の企業が多い。また、別府市や由布市にある企業の取引先は九州エリアの企業が多くなっている。加えて、観光を主要産業とする地域では個人顧客も含めた全国からの支援が重要となる。
 また、東日本大震災の時には、被災地所在企業の販売先は新たな仕入先を確保しようと行動したこともあり、もし熊本地震の復興が遅れることになれば、同様に被災地所在企業は販売先を失うことになる可能性がある。一方で、熊本地震から短期間で復興することができれば、被災地所在企業にとって販売先が維持できることになる。そのため、震災からの復興を早期に進めることが、被災地所在企業の業績回復につながるとともに、販売先にとっても継続的な仕入先を確保できることになる。
 被災地所在企業の取引先は主力となる産業によっても異なるため、復興・支援策の策定には地域の実態に合わせたきめ細かい取り組みが重要となろう。

 *表資料は添付の関連資料「表資料(1)」を参照


2.熊本県、大分県の産業集積〜全国と比較して〜
 熊本県と大分県の産業構造について、特化係数(I)を用いて両県における産業の集積状況を概観する。

 【熊本県
 熊本県の企業数を全国と比較した特化係数でみると、県全体では「農・林・水産」が2.00となり最も高い。次いで、「旅館・ホテル」1.72、「医療・福祉・保健衛生業」1.60、「飲食料品小売業」1.57、「飲食料品・飼料製造業」1.36と続く。熊本県は、農業の強みを生かし、食品関連の製造や小売が集積するなか、料理が重要なコンテンツとなる「旅館・ホテル」など観光関連に優位性を有している様子がうかがえる。
 特化係数を震度6弱以上の地震に見舞われた被災地でみると、特化係数の高い業種は県全体と同様の傾向がみられる。「飲食料品卸売業」は県内企業の8割超が被災しており、県の強みとなる農産品をユーザに届ける流通プロセスにダメージを受けていることが懸念される。

 【大分県】
 大分県の企業数を全国と比較した特化係数でみると、県全体では再生可能エネルギーの固定価格買取制度が拡張された2012年以後に多くの発電所が設立されてきた「電気・ガス・水道・熱供給業」が3.09となり最も高い。次いで、「旅館・ホテル」2.34、「農・林・水産」2.33、「放送業」2.19、「飲食料品小売業」2.00と続く。
 特化係数を大分県内の被災地(別府市、由布市)でみると、「旅館・ホテル」が7.92となっており、同業種が非常に集積している地域が被災したことが分かる。また、「電気・ガス・水道・熱供給業」4.01なども企業が集中しており、地域内で重要な産業が被災している。特に、「旅館・ホテル」は県内企業の4割超が被災地に所在しており、2016年に入り国外客を中心に観光客数の増加がみられていたなかでの震災は、県経済にとっても痛手となりかねない。

 *表資料は添付の関連資料「表資料(2)」を参照


 I)特化係数とは、地域のある産業がどれだけ特化しているかをみる係数。特化係数は次式のように定義される。
  特化係数=Z県のA産業の比率÷全国のA産業の比率
  特化係数が1であれば全国と同様、1より大きければ、Z県のA産業は特化している(優位にある)とみることができる。


 *リリース詳細は添付の関連資料を参照





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