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帝人、中国社と太陽電池セル製造のレーザードーピング技術確立で戦略的提携
素材と装置で太陽電池の高い変換効率を実現!
DR Laser社と帝人株式会社が戦略的提携
武漢帝■激光科技股■有限公司(◇)(http://www.drlaser.com.cn/eng/)(本社:中国・武漢市、社長:李 志剛、英社名:Wuhan DR Laser Technology corp Ltd、以下「DR Laser」)と帝人株式会社(本社:大阪市中央区、社長:鈴木 純、以下「帝人」)は、高い技術力を駆使したDR Laserのレーザー設備と、帝人が世界に先駆けて開発したシリコンナノペーストを組み合わせることにより、変換効率の高い太陽電池セルの製造に向けたレーザードーピング技術確立のための戦略的提携に合意しました。これに基づき、中国・武漢市にあるDR Laserの本社内に専用のレーザー加工機と印刷機を備えたレーザードーピング試作センターを新設し、本日より本格的に稼働を開始します。
◇社名の正式表記は添付の関連資料を参照
Teijin and DR Laser_NanoGram PERC Cell
https://www.youtube.com/watch?v=6rBk54awx6I
1.背景
(1)太陽電池モジュール市場は、2025年に約8兆円規模に成長すると予想されています。こうした中で市場からは、より効率的な発電を実現する変換効率の高い太陽電池の開発が求められています。
(2)近年は、従来の汎用的なシリコン結晶系太陽電池の裏面の電極構造を改良することで高い変換効率を得るPERC型太陽電池、中でもPERL型(*1)太陽電池の開発が活発になっています。PERL型太陽電池は、裏面に絶縁層(パッシベーション膜)を持ち、より多くの不純物拡散層(*2)が裏面の電極の真下に部分的に配置されることにより、シリコンウエハ(太陽電池基板)内で発生する電気を効率良く集めることができる構造になっています。しかしながら、このPERL型は、複雑な製造工程などにより工業的に生産することが難しいとされてきました。
*1 PERL型:Passivated−Emitter,Rear−Localizedの略で局所背面電界の意。結晶系太陽電池の代表的な構造であるPERC(Passivated Emitter and Rear Contact)型の進化系。高い変換効率から次世代の太陽電池セル構造の本命と言われている。
*2 不純物拡散層:シリコンウエハ中に、ホウ素やリン、アルミニウムなどの不純物を熱やレーザーなどで意図的に送り込み(拡散)、電気伝導率を高めた部分のこと。
(3)DR Laserは、2008年に中国・武漢市で設立され、その高機能・高精細なレーザー加工技術が太陽電池の変換効率向上に寄与することから、グローパルトップの太陽電池メーカーに次々と採用されています。特にPERC型太陽電池のレーザー加工機器においては、50%以上のグローバルシェアを有する世界有数のメーカーです。
(4)一方、帝人は、自社が展開する「NanoGram シリコンナノ粒子」が、PERC型太陽電池のさらなる高効率化に重要な不純物拡散層の形成に極めて有効な材料であることを突き止め、不純物拡散層の形成に必要なホウ素やリンなどの不純物を内包する直径20ナノメートル程度のシリコンナノ粒子をペースト加工して、高効率太陽電池用の「NanoGram シリコンペースト」を開発しました。
(5)さらに帝人は、不純物拡散層を形成したいところに印刷するためのスクリーン印刷技術と、印刷したペーストを高温でシリコンウエハ内に拡散させるためのレーザードーピング技術を2014年に開発し、世界で初めてPERL型太陽電池の工業化を可能にする「NanoGram PERC型」太陽電池製造技術の開発に成功しました。そして、これらの開発により、従来のPERC型太陽電池の変換効率が0.5%向上することを確認し、著名な研究機関であるドイツのフラウンホーファー ISE 新規ウィンドウで開きますと共同開発した6−inchサイズの太陽電池においても、変換効率の向上に寄与できることを実証しています。
※参考画像は添付の関連資料「参考画像1」を参照
2.今次提携について
(1)両社はこのたびの提携により、シリコン結晶のための「NanoGram シリコンペースト」の最適なレーザードーピング条件の開発、および量産に向けたレーザードーピング装置の開発を行い、変換効率を飛躍的に向上させる「NanoGram PERC型」太陽電池の量産を実現する技術を確立します。
(2)また、この「NanoGram PERC型」太陽電池製造技術の有用性に対する認知を促進するため、DR Laserの本社敷地内にレーザードーピング試作センターを新設します。これにより、DR Laserのレーザードーピング技術と帝人の「NanoGram シリコンペースト」というグローバルオンリーワン技術を組み合わせることで、劇的に変換効率を向上させる「NanoGram PERC型」太陽電池セルの製造に向けた画期的なソリューションを太陽電池メーカーに提供します。
※参考画像は添付の関連資料「参考画像2」を参照
3.今後の展開
(1)今後、両社は共同で、「NanoGram PERC型」太陽電池の量産化に向けた技術開発と、それに伴うマーケティング活動を強力に推進します。
(2)これにより、高変換効率を実現する「NanoGram シリコンペースト」を使用したレーザードーピング技術が、太陽電池セル製造においてデファクトスタンダードとなることを目指し、今後急拡大が見込まれるPERC型太陽電池セルのレーザードーピングにおいて、3年以内に50%以上のシェア獲得を目指します。