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福岡工業大、落差がない水路にも設置できる、環境に配慮した小水力発電機を開発

2016-04-15

落差がない水路にも設置できる、環境に配慮した小水力発電機を開発


 福岡工業大学福岡市東区工学部知能機械工学科の阿比留久徳教授が、落差がない流れの緩やかな水路に低コストで設置できる「フラッター水力発電装置」に関する技術発明の特許権を取得しました。


■概要
 地方の農業用水路における小水力発電の設置ニーズは高いものの、設置には落差が必要で、工事にかかる費用および発電機本体の高額化や工事に伴う周辺生態系への影響、設置後の維持管理の煩雑さが課題となり、普及の妨げとなっています。フラッター水力発電は、従来の水車を利用した発電装置とは異なり、水中翼が流れに対し左右に往復運動して発電する形式で、落差が不要で低流速から発電できます。また、高速回転部を持たず構造がシンプルで、ごみの付着や詰まりに強く、水中生物に安全といった特徴があります。


■農業用水路向け小水力発電機としてのフラッター発電の優れた点
 1.落差形成及び取水のための大掛かりな工事を伴わず、初期投資を大幅に抑制できる。
 2.専用導水路は基本的に不要で、利水に影響を与えないため、地元の合意形成を得られやすい。
 3.水中翼の大型化や水路の幅や長さに応じた複数台の設置により、発電量の増加が計画できる。
 4.全体構造がシンプルであり、堅牢かつ低コストである。
 5.稼働状況や異常の発生を目視で容易に確認でき、カメラによる遠隔監視に適している。
 6.万一ごみが翼に巻き付いた場合は、地域住民が自力で取り除きやすい。
 7.水中翼が低速で動くため、発電機の稼働に関する細かい調整が不要である。
 8.魚やカエル等の水中生物が巻き込まれる恐れがなく、環境調和性が高い。
  また、万一、人が水路に流された場合も、強く挟み込まれるような事故とはならない。
 9.水中翼の流れに対する角度を制御することにより、比較的低流速(≒1m/s)から発電できる一方、大雨時の速い流れに対しては破損を防ぐよう調整可能。
  水路を狭めて流速を高めるためのガイドベーンも不要である。


フラッター水力発電とは
 フラッター水力発電装置は図1のように水中翼が流れの方向に対して左右に往復運動をすることで発電します。水中翼を水路の上方から見ると、丁度、飛行機が上昇する際の主翼の働きに似ており、流れに対して傾きを持つことで、水中翼を動かす力が発生します。水中翼は端まで動くと機械的に自動で向きを変え反対側に動いていきます。水中翼につながった機械構造は蒸気機関車のピストンとよく似た動きで発電機を一方向に切れ目なく回転させることができます。これにより効率的に発電を行うことができます。

 これまでに普及している水力発電装置では水車やプロペラを速い水流を利用して高速で回す形式が多く、これには水路に滝のような落差を作る工事が必要で、環境への悪影響や費用の増大が懸念されました。フラッター水力発電装置は普通の水流でも十分な発電ができるため、水路への設置が容易となります。また、高速回転部を持たないため水中生物に優しく、また、枝や木の葉などごみの詰まりにも強いのが特徴です。


■発電量について
 現在は実用化に向けた試験機の段階であり、小型のため発電量は大きく取れません(水の流れの速さが毎秒1mの時に約50Wです)。
 原理的には大型化もしくは図2のように一つの水路に複数台を設置することが可能であり、水路の水深や幅、水量に応じて発電量を増やすことが可能です。


■期待される活用場面
 フラッター水力発電装置には、水路の形を変えるような大きな工事を伴わなくても、台座を据え付けて固定するだけで設置が可能という利点があります。全国にはたくさんの農業用水路が張り巡らされていますが、田や畑に必要な水を供給することが最も重要であるため、水力発電機設置のための工事は許可されないことが多い現状があります。フラッター水力発電装置はそのような場所にでも設置でき、また、ゆっくりとした流れでも発電できるため、送電線を引くことが難しい地域での小規模な自然エネルギー利用のニーズに応えられるものと考えています。例えば、LED外灯の点灯や災害時の非常用電源、電動農機具の夜間充電等への活用が期待され、現在、バッテリーへの充電と放電の組み合わせを最適に制御して、電力を更に有効利用するための研究も行っています。現在、地方の農業用水路に設置し、効果を検証しています。地域の方々からは「小学校の通学路上の暗い道へLED街灯を水力発電で点灯させたい」というニーズがあり、多くの面でご協力を頂いています。


■特許取得による活用見込み
 今回、特許を取得した技術は、水中翼の往復運動を発電機の一方向の回転に変換するための機械構造に関するもので、蒸気機関車のピストンよりは更に立体的な動きを行って、発電機の回転が滑らかになるようにしている部分です。このような技術を特許で保護し、製品化に活かすことにより、他社と差別化した製品を販売することができます。


■関連リンク(動画)
 http://www.fit.ac.jp/digital_lib/archives/53


■添付資料
 ・フラッター水力発電装置
 ・特許証
 ・【図1】フラッター発電の上から見た図
 ・【図2】複数台設置のイメージ

 ※添付の関連資料を参照





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