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奥村組、油圧削岩機の「ガイドセル先端固定装置」を開発
油圧削岩機の「ガイドセル先端固定装置」を開発
−削孔精度が大幅に向上−
株式会社奥村組(本社:大阪市阿倍野区、社長:奥村太加典)は、発破工法を用いた山岳トンネルの掘削工事において、爆薬装填に必要な装薬孔の削孔精度向上を目的とした油圧削岩機の「ガイドセル先端固定装置」を開発し、この度、施工中の山岳トンネル工事に適用のうえ、その高い削孔精度を実証しました。
【背景】
発破工法を用いた山岳トンネルの掘削工事では、爆薬装填に必要な装薬孔を油圧削岩機で削孔します。具体的には、切羽を削孔するビット付ロッド(以下、「削孔ビット」)を搭載したガイドセルの先端を固定用パッドで切羽の削孔位置および方向に合わせて固定のうえ、削孔ビットを押し付けながら打撃・回転させて削孔しますが、その押し付けによる反力でガイドセルが後方移動し、ガイドセル先端が固定位置から離れて不安定になると(図−1)、削孔の方向制御が低下することで計画通りの削孔が行えず、発破後の掘削断面が計画より増大あるいは減少する原因となります。特に、削孔長が長くなるほど計画位置とのずれが大きく、計画断面との相違が顕著となるため、削孔精度の向上は大きな課題でした。
【概要】
今回開発した「ガイドセル先端固定装置」は、切羽にガイドセルの先端を固定する目的で従来装備されている固定用パッドに替えて装着するもので、削孔中に生じるガイドセルのずれを抑制することで削孔精度向上に寄与します。これにより、発破による掘削断面の大幅な過不足を抑制し、合理的な施工を可能とします。
【特長】
本装置は3点支持・ツメ型形状の固定用治具、同治具を切羽に押し付ける油圧ジャッキおよび同治具を切羽に正対させるバネ機構からなります。油圧ジャッキは常に一定の圧力を維持しており、削孔ビットを切羽に押し付けた反力でガイドセルが後方移動した場合でも、油圧ジャッキが自動的に伸長し、同治具の押し付け荷重を保持してガイドセルのずれを抑制します(図−2)。
【実工事への適用結果】
本装置を当社施工の山岳トンネル工事に適用したところ(図−3)、従来方法と比べて、計画位置からのずれを1/4程度に低減できることを確認しました。具体的には、口元から1.5mの削孔位置では、従来方法で最大80mmであったのに対し、本装置を用いることで最大20mm以内に収まりました。また、2.5mの削孔位置では、従来方法で最大130mmあったのに対し、本装置を用いることで最大30mm以内に収まりました(図−4)。
【今後の展開】
近年、山岳トンネル工事の急速施工を目的とした「長孔発破(※1)」が注目されており、削孔長が長いほど高い削孔精度が必要となることから、今後は本装置を山岳トンネル工事における施工の合理化や急速化に寄与する技術として積極的に提案していきます。
※1 長孔発破:一回の発破による掘進長を通常より伸長して施工する方法。発破の総サイクル数を減らすことにより、合理的な掘進が可能となる。
以上
*図1〜4は添付の関連資料を参照