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メルクセローノ、頭頸部がん治療における「アービタックス」の効果に関する調査結果を発表
頭頸部がん治療におけるアービタックス(R)
延命効果と治癒の可能性を高める唯一の標準治療薬としての地位を確立
−アービタックスは、過去30年間において、再発又は転移性の頭頸部扁平上皮がん(SCCHN)患者の全生存期間を延長する唯一の一次治療薬であることが欧州での調査で明らかにされた−再発又は転移性の頭頸部扁平上皮がんの一次治療として、アービタックスと白金製剤をベースとした化学療法の併用が1年間で約3倍に増加−局所進行頭頸部扁平上皮がんにおけるアービタックスの使用は3年間で4倍に増加
Merck KGaA(ドイツ ダルムシュタット市、会長カール−ルドウィッグ・ クライ)の医薬品部門であるメルクセローノは、頭頸部がん治療におけるアービタックス(R)(セツキシマブ)の革新的な役割をさらに裏付ける、2件の調査結果を第35回欧州臨床腫瘍学会(ESMO)で発表しました。調査を通じて明確になったことは、局所進行SCCHN(LA SCCHN)(1)と再発・転移性の頭頸部扁平上皮がん(R/M SCCHN)(2)両方の一次治療において、アービタックスが標準的治療となっており、併用薬としても積極的に選択されていることです。
欧州頭頸部がん協会(EHNS)会長で調査の共同研究者であるジャン−ルイ・ルフェーブル教授(ProfessorJean−Louis Lefebvre)は次のように述べています。「アービタックスは頭頸部がんの治療の進歩に貢献してきた薬剤だといえます。症状を緩和するのみならず、進行がんで延命効果をあげることから、極めて高い価値が示されてきました。さらに局所進行がんにおいて、治癒の可能性をももたらします」
■再発・転移性SCCHNにおける一次治療の調査結果
2009年、フランス、ドイツ、イタリア、スペインの専門家256名による患者記録に基づき、再発・転移性SCCHNを対象とした調査が実施されました。この調査により、約60%の症例において、アービタックスをベースとした併用化学療法がR/M SCCHNに対する一次治療として使用されていたことが明らかになりました。(2)またこの結果から、第III相EXTREME試験の成績に対する理解が深まり、それに基づく治療が臨床の現場でも実施されていることが明らかになりました。EXTREME試験の成績は2008年に発表されましたが、過去30年間においてSCCHN患者の全生存率の改善を示す初のものとなりました。(3)アービタックスは現在においても、R/M SCCHNの一次治療で全生存率を改善する唯一の分子標的薬です。
■局所進行SCCHNを対象とした調査
同様の調査がLA SCCHNについても行われました。(1)
−アービタックスの使用は2006 年から2009 年の3 年間で9.1%から35.7%に拡大。
−アービタックスは標準治療の地位を獲得。
−LA SCCHN の標準治療として、化学放射線療法からアービタックスと放射線治療の併用療法への切り換えが引き続き進行。
メルクセローノの国際事業部門癌領域担当エグゼクティブ・ヴァイスプレジデントであるヴォルフガング・ヴァイン(Dr.Wolfgang Wein)は、次のように述べています。「今回の調査結果により、多くの医師がSCCHN の治療においてアービタックスのデータを信頼し、アービタックスを選択していることが明確になりました。これまでの30年間を通じて最も革新的な薬剤であるアービタックスの地位は、この疾患領域においても今やゆるぎないものとなっています」
以 上
この他のESMO 2010におけるアービタックスに関するニュースは次のサイトからご覧ください
http://www.globalcancernews.com.
■参考文献:
(*1)Budach V,et al.ESMO Congress 2010.Abstract No: 1031P.
(*2)Wilke H,et al.ESMO Congress 2010.Abstract No: 1033P.
(*3)Vermorken JB,et al.N Engl J Med 2008;359:1116−27.
■アービタックス(Erbitux)について
Erbituxは画期的新薬(ファーストインクラス)であり、EGFRを標的とする高活性IgG1モノクローナル抗体です。Erbituxの作用機序は、EGFRに対して特異的に結合するという点で従来の標準的な化学療法とは明確に異なります。この結合によって受容体の活性とそれ以降のシグナル伝達が抑制され、正常組織への腫瘍細胞の増殖、浸潤と新しい部位への転移が抑えられます。
また、化学療法や放射線療法によって引き起こされた損傷を修復する腫瘍細胞の活性を抑制し、腫瘍内での血管新生を抑制するとも考えられており、それによって腫瘍の成長を全体的に抑制するとされています。
Erbituxの最も多い副作用はざ瘡様皮疹であり、皮疹の程度(グレード)と治療効果は相関があると報告されています。また、Erbituxの治療を受ける患者にInfusion Reactionが発現する可能性があり、まれですが、重度な症状を示すことがあります。
Erbituxは、80カ国で販売承認を取得しており、直腸・結腸がんの治療薬としても80カ国で承認されています。また、頭頸部扁平上皮がんの治療薬と
して、77カ国で承認を受けています(2010年6月時点)。
−スイス(2003年12月)、米国(2004年2月)、EU(2004年6月)を始め各国で、Erbituxは、イリノテカン塩酸塩水和物をベースとした化学療法が不応となったEGFRが発現した転移性結腸・直腸がんに対する治療薬として、イリノテカン塩酸塩水和物をベースとした化学療法との併用が承認されました。単独療法が承認されている国もあります。
−EU(2006年4月)他各国で、Erbituxは、局所進行の頭頸部扁平上皮がんの治療薬として放射線療法との併用が承認されました。また、化学療法が不応となった再発・進行性の頭頸部扁平上皮がん患者の治療薬として、単独療法も承認されています。
−EUでは2008年7月に、EGFRが発現したKRAS野生型の転移性結腸・直腸がん患者に対する化学療法との併用療法がすべての治療ラインで承認されました。
また、オキサリプラチンまたはイリノテカン塩酸塩水和物をベースとした化学療法に不応となった患者およびイリノテカン塩酸塩水和物に忍容性を示さない患者に対しては、単独療法での使用も承認されています。
−日本では、2008年7月に、EGFR陽性の治癒切除不能な進行・再発の直腸・結腸がんに対する治療薬として承認を取得しました。
−EUでは、2008年11月に、再発・進行の頭頸部扁平上皮がん患者のファーストライン治療として、白金製剤をベースとした化学療法との併用での適応が承認されました。
−日本では、2010年3月に、添付文書が改訂され、EGFR 陽性でKRAS野生型の転移性結腸・直腸がん患者における一次治療薬として使用が可能になりました。
メルクは1988年、イーライリリーの100%子会社であるイムクローンから米国、カナダ以外でのErbituxの販売権をライセンス供与されました。日本では、イムクローンとブリストル・マイヤーズスクイブ株式会社、メルクセローノ株式会社が共同でErbituxの開発と実用化を進めています。メルクはがん治療の進展に引き続き尽力しており、現在は大腸がんや頭頸部扁平上皮がん、非小細胞肺がんにおけるErbituxの使用など、対象領域における新規治療法の研究に取り組んでいます。また転移性大腸がんの一次治療薬として、フォリン酸と併用投与される経口抗がん薬UFT(R)(テガフール・ウラシル配合)の権利も獲得しました。
がん治療候補薬では、Stimuvax(R)(BLP25リポソームワクチン)の非小細胞肺がんへの適応を研究しています。同剤は2004年9月に米FDAから迅速承認許可を得ていいます。Oncothyreon Inc.(米国ワシントン州シアトル)から、同剤の世界各国での専売権を供与されました。
さらに、新規抗がん剤Cilengitide(インテグリン阻害剤)の第III相試験も行っています。同剤は膠芽腫、扁平上皮がん、非小細胞肺がんの適応を対象としています。またインテグリン阻害剤は腫瘍とその血管系を対象として作用すると考えられています。
■Merckについて
メルクはドイツのダルムシュタットに本社を置く、世界的な総合医化学メーカーで、2009年総売上高は約77億ユーロです。会社としての起源は1668年まで遡り、現在世界64ヶ国で事業を展開しており、グループ従業員総数は約40,000人(メルクミリポア事業部を含む)。グループの事業活動は Merck KGaAのもとで行われています。全株式の 30%が市場で取り引きされており、残りの70%はメルクファミリーが合資会社を通じて保有しています。1917年、当時の米国子会社Merck & Co.の資産が接収された後、同社はメルクからは完全に独立しています。
■メルクセローノ株式会社について
メルクの医療用医薬品部門とスイスSerono (セローノ)が2007年1月に統合され、メルクの医療用医薬品部門として新しく設立されたMerck Serono(メルクセローノ)事業部(本社:スイス、ジュネーブ)の日本法人です。日本市場においては、同年10月1日より事業を開始しました。
メルクセローノについての詳細は http://www.merckserono.co.jp をご覧ください。