東京商工リサーチ、１月の「チャイナリスク」関連倒産の調査結果を発表

［特別記事］
「チャイナリスク」関連倒産
〜１月は３件発生、負債総額は４５億６，６００万円〜


　１月の「チャイナリスク」関連倒産は３件だった。２０１４年１月の集計開始以降、１月としては２０１５年に並んで最多タイだった。
　負債総額は４５億６，６００万円で、１月としては最大となった。歴代ランキングでも２０１４年１１月、２０１５年１０月の６０億９，８００万円に次いで過去の６番目の負債額である。小惑星探査機「はやぶさ２」に搭載された物質採取装置の部品加工に携わった（株）テラマチ（TSR企業コード：８１０００６７３１、法人番号：６５００００１００９３２３、愛媛県、中国景気減速）が、２９億６００万円の負債を抱えて民事再生法の適用を申請したため、全体の負債額を押し上げた。
　倒産には集計されないが、事業停止や破産準備中などの「実質破綻」は３件（前年同月は１件）発生。両者を合算したチャイナリスク関連破綻は６件となり、１月としては集計開始以来、過去最多となった。


■「チャイナリスク」関連の集計基準
　「チャイナリスク」関連の経営破綻は、破綻の原因が次の６項目のどれかに該当するものを集計している。
　１．コスト高（人件費、製造コストの上昇、為替変動など）
　２．品質問題（不良品、歩留まりが悪い、模倣品、中国生産に対する不信など）
　３．労使問題（ストライキ、工場閉鎖、設備毀損・破棄など）
　４．売掛金等回収難（サイト延長含む）
　５．中国景気減速（株価低迷、中国国内の消費鈍化、インバウンドの落ち込みなど）
　６．反日問題（不買、取引の縮小、暴動など）
　※「チャイナリスク］関連の経営破綻は、下記の「倒産の定義」のいずれかに該当するケースを「倒産」とし
て集計。「事業停止」や「破産申請の準備中」などは、倒産とは区別し「実質破綻」としている。
倒産の定義（対象：負債額１，０００万円以上の法人および個人企業）
　A）会社更生法、民事再生法、破産、特別清算を裁判所に申請した企業（法的倒産）
　B）手形決済などで６カ月間に２回の不渡りを出し、銀行取引停止処分を受けた企業（私的倒産）
　C）企業が経営破綻により事業継続を断念したが、法的手続きを採らず弁護士などに事後を一任して私的整理
（内整理）を明らかにした企業（私的倒産）
　※「チャイナリスク」関連倒産の集計開始は２０１４年１月。


　＊グラフ資料は添付の関連資料を参照


　１月のチャイナリスク関連倒産は３件だった。２０１５年９月、１０月の１１件と比較すると落ち着いた印象を受けるが、２０１５年８月以降、前年同月と比較して件数が減少した月はなく、倒産ペースが沈静化したとは言えない。負債総額は４５億６，６００万円だった。最大の負債額は、（株）テラマチの２６億６００万円。主力取引先が中国向け建設機械の減速機の生産拡大を打ち出したことや、中国の建設機械需要の拡大を見越して、２０１２年より最新鋭の機械設備などに対して約１６億円の投資を実施した。しかし、その後の中国の景気減速による建機需要の減少で、見込んでいた受注の大半が消失。愛媛県再生支援協議会の再生案件として経営改善に取り組んでいたものの、資金繰りを抜本的に改善することは出来ず、１月１９日に松山地裁西条支部へ民事再生法の適用を申請した。同社は、高い技術力から「はやぶさ２」の部品加工の一部を担い、地元メディアなどで度々取り上げられていた。中国市場への過剰な期待による身の丈以上の投資は、地方企業の雄の経営体力を奪い去った。
　昨年、中国政府は国内総生産（GDP）の目標値を「７％前後」へ引き下げた。３月に開催される全国人民代表会議で、目標値をさらに引き下げるのではないかとの観測が広がっている。日本企業は、中国の高い経済成長率に魅力を感じ、投資計画を立ててきた。多額に及ぶ投資の回収は長期間に及ぶため、中国の急激な景気減速で投資リターンが想定よりも大幅に下回った場合は、耐え切れず倒産する企業が続発しかねない。このため、今後もチャイナリスク関連倒産は、前年を上回る水準で発生する可能性がある。