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NTTデータ、安全で円滑な航空交通流を実現するパッケージソフトを提供開始
航空管制製品ブランド「airpalette(R)」第3弾、airpalette ATFMを提供開始
〜航空交通における混雑等の予測データを提供し、空の混雑緩和に貢献〜
株式会社NTTデータ(以下:NTTデータ)は、2016年2月5日、airpalette(R)ブランド(注1)の製品第3弾として「airpalette ATFM(Air Traffic Flow Management system)」の提供を開始します。
airpalette ATFMは、航空管制機関がATFMシステムを構築するための国内企業初のパッケージソフトウエアです。ATFMシステムとは、航空会社の提出する飛行計画(注2)や気象データを用いて航空交通量を予測し、混雑が予想される場合には出発時刻の調整等を提案することで交通量を平準化し、安全で円滑な交通流を実現するシステムです。
本製品を導入することで、各国の航空管制機関の管制官は、最新の交通量予測データを基に、各管制所を通じて出発時刻の制御を行うことが可能となります。これにより、航空機が空中待機に消費する燃料の節減や温室効果ガスの排出削減に加え、航空機の集中による繁忙を解消することでの航空管制官の作業負荷の平準化が期待できます。
NTTデータは今後、航空交通量の大幅な増加が見込まれるアジア諸国を中心に本製品の販売を予定しています。
【背景】
ICAO(International Civil Aviation Organization、国際民間航空機関)によると、現在、世界各地域における航空交通輸送量は2025年まで継続的に増加していくと予想されています。とりわけ、経済成長が著しいアジア・太平洋地域では、年平均5.8%といった大幅な増加が見込まれており、各空港や周辺の空域では離着陸する航空機の混雑が懸念されます。こうした背景から、アジアを中心に、空域全体の交通量を制御し、空港や空域の処理容量を拡大するためのATFMを含めた高度な航空管制システムの需要が高まると予想されます。
一方、NTTデータはこれまで、国土交通省航空局におけるさまざまな航空管制システムの開発プロジェクトに携わり、国内の航空交通量の増大に伴う処理容量拡大に貢献してきました。国内のATFMシステムに関しては、1994年に設置されたATFMC(Air Traffic Flow Management Center、航空交通流管理センター)および、2005年に設置されたATMC(Air Traffic Management Center、航空交通管理センター)の構築にも携わっています。さらに近年では、航空管制分野における海外ビジネスの取り組みも進めています。2010年からは飛行方式設計システム「PANADES(R)」(注3)の提供を開始し、2015年1月にはNTTデータの航空管制分野の製品ラインナップを統括するブランド「airpalette」を立ち上げました。
このたびNTTデータは、国内のATFMシステムの提供に携わる中で得られた知見を海外の空の混雑緩和に生かすため、airpaletteブランドの製品第3弾として「airpalette ATFM」の提供を開始します。
【概要】
airpalette ATFMは、各エリアにおける時間ごとの交通量を高い精度で予測し、混雑を緩和するための理想的な出発時刻を提案する航空管制機関向けのパッケージソフトウエアです。本製品により、航空管制機関は混雑や悪天候を反映した交通量の最新予測データを端末で確認し、空港などの各管制所を通じて航空機の出発時刻の変更を要請するうえでの判断に活用し、空域全体の最適な交通流を形成することが容易となります。
※図1は添付の関連資料を参照
【機能および特長】
■交通量の把握
航空会社から提供される飛行計画や、気象情報を扱う機関から提供される気象データを基に、各エリアの時間帯ごとの交通量を予測します。また、それぞれの航空機の離着陸時刻や、飛行経路上に設定された各ポイントの通過予想時間等、計算された飛行経路の詳細データも表示できます。航空会社から飛行計画を入手できない場合は、世界中の定期航空便の時刻表であるOAG(Official Airline Guide)を活用することで、飛行計画の不足分をカバーすることができます。
■理想的な出発時刻の提案
航空交通量の混雑が予想される場合には、混雑を解消させるための航空機の理想的な出発時刻を提案します。今後は、航空経路上の各ポイントの理想的な通過時間の提案等、機能の充実も計画しています。
■さまざまな制御パターンを検証可能
飛行機の出発時刻の交通流制御を行うために、豊富なバリエーションの制御方式が用意されています。航空管制官は複数の制御パターンの実行結果を検討した上で、制御を実行することができます。
■各国のさまざまな状況に対応可能
本製品は最先端のアルゴリズムを搭載しており、特定の大規模な空港周辺で航空機が混雑するケース、当該国内各地で航空機が混雑するケース、国の上空を横断(オーバーフライト)するケースなど、各国のさまざまな航空交通流の状況へも柔軟に対応することが可能です。
■国際対応も見据えた製品仕様
隣接国間の交通流制御を行う国際ATFMの実現にも対応しています。国際ATFMとは、空域が隣り合う国同士がさまざまな情報交換を行い、出発時刻の調整や管轄空域への入出域時間などを調整することで、両国間にまたがる最適な交通流を実現するしくみです。本製品は国際ATFMの実現も見据えて設計されており、必要なデータの共有によって国際ATFMの迅速な立ち上げが可能となります。さらに隣国も本製品を使用している場合、相互に連携し隣国の空域も含めて画面に表示するなどが可能であり、両国間にまたがる最適な交通流を実現することができます。
※図2は添付の関連資料を参照
【airpalette ATFM導入によるメリット】
各国の航空管制機関は、airpalette ATFMを導入することによって以下の効果が期待できます。
■航空機の効率的な運航および航空交通の安全性の向上
■航空機が上空待機中に消費する燃料および温室効果ガスの削減
■交通量の混雑緩和による、航空管制官の作業負荷の平準化
※図3は添付の関連資料を参照
【今後について】
今後NTTデータは、アジアを中心に本製品を提供する予定です。
(注1)airpaletteとは、NTTデータの航空管制分野の製品ラインナップを統括するブランドです。2015年1月には第1弾製品として世界最高解像度を用いた唯一の地形・障害物データ提供サービスeTOD(electric Terrain&Obstacle Data)ソリューションを、2015年4月には第2弾製品として航空路レーダー処理情報システムRDP(Radar Data Processing system)の提供を開始しています。
(注2)飛行計画とは、航空会社が航空管制機関に提出することが義務付けられている、航空機の飛行予定に関する計画のことです。飛行計画には、飛行機識別番号、出発予定時刻、出発地、飛行経路、目的地、飛行予定時間等が含まれます。
(注3)PANADESは、2015年2月5日現在、タイ、インドネシア、ベトナム、ラオス、ミャンマー、カンボジアに導入済み。
(注4)OAGとは、世界中の航空会社や空港のデータを基に旅行・運輸業界向けの時刻表等を扱うOAG社が提供する、世界中の定期航空便の時刻表のことです。
*「airpalette」は、日本とCTM(欧州)における株式会社NTTデータの登録商標です。米国と中国へも商標出願中です。
*「PANADES」は、日本、CTM(欧州)、タイ、ベトナム、およびミャンマーにおける株式会社NTTデータの登録商標です。インドネシアとラオスにも商標出願中です。