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NICT、もずく養殖へのWi−SUN無線センサネットワークの適用実証に成功

2015-12-22

もずく養殖へのWi−SUN無線センサネットワークの適用実証に成功
〜Wi−SUNによる省電力マルチホップ通信を漁業分野に適用した世界初の事例〜


【ポイント】
 ■海上ブイにWi−SUN無線機を搭載、もずく養殖場の水温・塩分濃度をモニタ・収集、クラウドで管理
 ■Wi−SUNの省電力マルチホップ通信で電池駆動ブイを海上配置、中継通信でモニタエリア拡大
 ■漁業協同組合と連携し、需要に応じたモニタ項目・周期等の最適化を予定


 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長:坂内 正夫)は、ワイヤレスネットワーク研究所において、Wi−SUN(*1)無線技術を用いるセンサネットワークをもずく養殖場のモニタリングに活用することで、世界で初めてWi−SUNの漁業分野への適用実証に成功しました。本実証で用いたのは、電池駆動の省電力Wi−SUN無線機を搭載した3基の海上ブイ(うち2基に水温・塩分濃度センサを搭載)であり、沖縄県南城市のもずく養殖場内の、陸から1〜2km離れた区画に配置されました。モニタされた水温・塩分濃度データは、定期的にブイ間の省電力マルチホップ通信(*2)で収集され、NICTのクラウド内に管理されます。
 本実証にあたり、NICTは、当該もずく養殖場を管理する知念漁業協同組合と連携し、モニタ地点やモニタ項目・周期の決定を行いました。今回の成果は、漁業を含む様々な利用用途に応じた、将来のWi−SUNの柔軟な社会展開の可能性を示唆するものです。


【背景】
 スマートメータや各種センサに関するデータ収集・制御のための無線通信の需要増加に伴い、NICTは、研究開発だけでなく、IEEE802.15.4g/4e(*3)標準化や、Wi−SUNアライアンスによる認証の一連の取組を通じて、省電力動作・マルチホップ通信を特徴とする国際無線標準規格Wi−SUNに準拠する無線通信システムの社会展開を推進しています。これまでに農業分野では、農業用センサを搭載した電池駆動Wi−SUN無線機を露地やビニールハウスに配置し、温湿度や土壌成分等のデータを継続的にモニタし収集する様々な適用事例が見られるようになりました。一方で、同様の継続的なモニタリングは漁業における養殖場等においても、その必要性と有効性が考えられていましたが、海上電波伝搬等を想定する通信環境や、モニタ対象のエリア規模、電池交換のコストに起因する所要動作期間等の条件が農業等の事例とは大きく異なることが想定され、今まで、漁業分野における実証例はありませんでした。

 ※参考画像は添付の関連資料「参考画像(1)」を参照


【今回の成果】
 今回NICTは、電池駆動の省電力Wi−SUN無線機を搭載した3基の海上ブイを沖縄県南城市のもずく養殖場内に配置し、そのうち2基に水温・塩分濃度センサを搭載しました。さらに地上に設置された収集局を含む2台のWi−SUN無線機と併せて、4段のマルチホップ通信により、当該センサが感知する水温・塩分濃度データを定期的に収集局まで集めることに成功しました。また、収集局に集められたデータは、有線インターネット回線を介してNICTのクラウドに格納されるため、遠隔地からも確認することができます。
 また、海上ブイに搭載されたWi−SUN無線機は電池による動作が大前提であるため、NICTが提案したIEEE802.15.4e標準規格にも規定された間欠的通信機能により、大部分をスリープ期間に適用することで、平均消費電力の低減を実現しています。


【今後の展望】
 Wi−SUN無線機の設定(通信頻度や、省電力性能等)だけでなく、モニタ項目や場所等については、今後、連携する知念漁業協同組合の要望に応じて柔軟に変更・最適化していくことを想定しています。本事例に続いて、今後ともWi−SUNの様々な社会展開の推進に貢献してまいります。


<用語解説>
 *1 Wi−SUN
 平成24年1月24日に設立されたIEEE802.15.4g規格準拠無線機の世界初の規格認証団体(Wi−SUNアライアンス)及びその認証規格。認証は、想定アプリケーションに応じて、それぞれ物理層、MAC層、必要ならばインタフェースに関する機能仕様を規定し、認証の基準とすることで行われる。このようなアプリケーションに応じて規定される機能仕様を、当アプリケーションに対するWi−SUNプロファイルと称している。

 ●Wi−SUNアライアンスホームページ https://www.wi-sun.org/

 ※参考画像は添付の関連資料「参考画像(2)」を参照


 *2 マルチホップ通信
 無線機間の一対一の直接通信に対して、第三の無線機によって通信が1回以上、中継される通信形態。中継数に応じて、通信の伝達距離は比例的に増大するほか、逆に直接通信の場合と同等の通信距離を、より低い送信電力で実現することも可能となる。また、無線電波に対する障害物を回り込むような中継経路の設定によって、電波の不感地帯を解消することもできる。

 *3 IEEE802委員会
 米国の電気・電子技術の学会であるIEEE(Institute of Electrical and Electronic Engineers)内で、LAN等の規格策定を行っている委員会。このうち、無線パーソナルエリアネットワーク(Wireless Personal Area Networks;WPAN)の標準化は、IEEE802.15というワーキンググループ(WG)によって推進されている。本WGには、標準化対象に応じて以下のとおり複数のタスクグループ(TG)が組織されている。

 ・IEEE802.15.4:
  低消費電力・低伝送速度のサービスを提供するための物理層及びMAC層の標準化を行ったTG。策定されたIEEE802.15.4標準規格は、868MHz、902MHz及び2.4GHz帯を用いて、それぞれ20kbps、40kbps及び250kbpsまでの伝送速度を実現する物理層仕様と、PANと呼ばれる無線機群を形成し、TDMAあるいはCSMAによるアクセス制御を行うMAC層仕様を規定する。

 ・IEEE802.15.4g:
  スマートメータ用無線システムであるスマートユーティリティネットワーク(SUN)の実現のために、既存のIEEE802.15.4の物理層仕様の変更を策定したTG。IEEE802.15.4g標準規格では、このような変更点として、変調方式の追加、周波数帯の拡張、データサイズの拡張等が規定されている。

 ・IEEE802.15.4e:
  上記IEEE802.15.4g標準規格のような、IEEE802.15.4の物理層仕様の変更に伴い、必要となるMAC層仕様の変更を策定したTG。IEEE802.15.4gに関連するMAC層変更点として、省電力のための間欠型通信動作の規定等が規定されている。

 ●IEEE802委員会ホームページ http://www.ieee802.org/
 ●IEEE802.15WGホームページ http://www.ieee802.org/15/(関連TGへのリンクあり)

 ※補足資料は添付の関連資料を参照




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