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東北大、一酸化窒素(NO)のマーカーである硝酸センサー「スヌーピー」法を開発

2015-12-12

根粒菌タンパク質を創薬に応用
―農学と生命科学が融合して生まれた硝酸センサー「スヌーピー」―


【概要】
 東北大学大学院農学系研究科分子酵素学分野の内田隆史教授、日高將文助教、後藤愛那院生らは、これまで不可能であった動物細胞内の一酸化窒素(NO)のマーカーである硝酸・亜硝酸イオンをイメージングできる「スヌーピー(sNOOOpy)(*1)」法を開発しました。豆と共生している根粒菌のシステムを利用した方法なので、漫画「ピーナッツ(豆)」から生まれたビーグル犬キャラクターにちなんでスヌーピー法と命名されました。

 血管を拡張させる働きのあるNOは、心臓発作などの循環器疾患、ED、糖尿病、脳疾患など多くの疾患に関係します。したがって、細胞内の硝酸濃度をリアルタイムで測定できるスヌーピー法は多くの生物現象の解明に役立つと期待されます。特に、これら疾患の薬剤開発や、植物や菌にスヌーピー法を応用することで農作物栽培に貢献すると思われます。

 本論文は、Journal of Biological Chemistryにオンライン公開(2015年12月3日)され、同紙から“今週の論文“に選出されました。これは、Journal of Biological Chemistry誌に掲載される論文のなかでもトップ2%に入る質の論文(年間6,600掲載される論文のなかでも特に優れた上位数十位以上にランクされる論文)だと認められたことになります。

 本研究は、本学生命科学研究科の南沢究教授および京都大学白眉センターの今村博臣准教授との共同で行われました。

 ※図は添付の関連資料を参照


【詳細な説明】
 大豆と共生する根粒菌は硝酸を感知し同化します。根粒菌内には硝酸センサーのNasSがあります。通常、NasSはNasTというタンパク質と結合して複合体を形成していますが、硝酸がNasSに結合すると、この相互作用が弱まり両者は解離することを発表者らは発見しました。この現象を応用し、細胞内の硝酸量の変化をリアルタイムで計測する方法を考案したのが今回の研究成果です。スヌーピー法は、異なる蛍光色素で標識したNasSとNasTを細胞内で発現させ、両者の相互作用の強さをFRET(蛍光共鳴エネルギー移動)という蛍光の変化を測定する方法です。スヌーピーを用い、ヒト細胞内で発光する蛍光の波長の変化を計測し、細胞内の硝酸量の変化をリアルタイムで測定できました。

 硝酸は、血管拡張作用や細胞間情報伝達などに関わる一酸化窒素(NO)のプールとして多様な生物現象に関係します。NOは1998年のノーベル賞が「循環器系における信号伝達分子としての一酸化窒素(NO)の発見」に与えられたことが示しているように、生体内で非常に重要な機能を果たしています。したがって、スヌーピー法はNOが関係する多くの疾患の薬剤開発研究への応用が期待されます。

 また、硝酸は植物の生育に必須な栄養素でもあります。スヌーピー法を発展させ植物内の硝酸の細胞内動態をリアルタイムで計測できるようにすれば、将来、農作物生産にも新たなツールとして応用されると期待できます。一方で、野菜や食肉製品に含まれている過剰な硝酸は疾患の原因にもなると危惧されており、食品中濃度の測定法としてもスヌーピー法は有用になると思われます。

 *1 バイオセンサースヌーピー(sNOOOpy;sensor for NOOO in physiology)

 参考動画URL:http://www.tohoku.ac.jp/japanese/2015/12/press20151208-02.html





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