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東北大など、日本人のゲノム研究の参照情報となるリファレンスパネルを公開
integrative Japanese Genome Variation Database
〜全ゲノムリファレンスパネルの公開データベース〜
東北メディカル・メガバンク計画では、日本人の標準となる大規模な人数の全ゲノム解読を行った結果を総合し、DNA配列の多型などの頻度情報をまとめることで、今後のゲノム研究の参照情報となるリファレンスパネルの構築を目指しています。
構築中のリファレンスパネル(1KJPN)のうち、公開の準備が整ったものについては、ポータルサイト、integrative Japanese Genome Variation Database(iJGVD)から公開をしています。
現在のバージョンでは、1,070人の日本人の高精度な全ゲノム解読結果(注*)に基づき、常染色体上の一塩基変異(SNV)のうち精度等の検証が完了したアレル頻度の高い(頻度が5%を超える)SNVの頻度情報を、公開しています(2014年8月29日)。この4,300,000件を超えるSNVのデータセットは、NBDCヒトデータベースからもオープンデータ(hum0015)として公開しています。
iJGVDから公開しているSNVについてアレル頻度を分析したところ、次のことが分かりました。
1)かつてからの公開データであるハプマッププロジェクトの東京の日本人(HapMap JPT)のジェノタイプデータのアレル頻度との比較したところ、全体的に非常に良く似ていました。
2)HapMap JPTについては、国際1000人ゲノムプロジェクトによる全ゲノム解読に基づく頻度情報も得られるのですが、ジェノタイプデータと頻度を比較したところ、小さい割合で不一致のケースが存在しました。iJGVDのSNV情報は高精度な全ゲノム解読に基づく1KJPNからのものであり、HapMap JPTとはサンプルが異なるにも関わらず、HapMap JPTのジェノタイプデータからのアレル頻度と比較したときの不一致率は、前述の割合(JPT同志での比較)を超えることはありませんでした。
このようなことから、iJGVDから公開しているSNVのアレル頻度は、日本人集団のデータとして、精度が高いものであることが分かりました。
iJGVDのアレル頻度情報には、観察されたアレルのカウントも添えられていますので、比較研究にご活用頂けます。またゲノムブラウザもありますので、ゲノム上のSNVの位置について、遺伝子情報と共に閲覧可能です。iJGVDは、これまでに7300回を超える実質的な利用がありました。今後ToMMoでは、iJGVDから公開する内容を増やしていき、使いやすさの向上を図ります。高精度な全ゲノム解読に基づく健常人のアレル頻度として、研究に活用して頂けますと幸いです。本研究成果の詳細は、2015年11月26日(日本時間)Human Genetic Variationのオンライン版で公開されました。
注* 全ゲノム解読結果:Nagasaki et al.(2015)Nature Communications
【公開URL】
integrative Japanese Genome Variation Database(iJGVD):
http://ijgvd.megabank.tohoku.ac.jp/
NBDCヒトデータベース(hum0015):
http://humandbs.biosciencedbc.jp/hum0015-v1
【研究について】
日本人1,070人の全ゲノム配列解読は、国の東日本大震災からの復興事業として、「東北メディカル・メガバンク計画」の一環として行われました。平成27年度より、国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)が本計画の研究支援担当機関の役割を果たしています。
【論文名】
iJGVD:an integrative Japanese genome variation database based on whole−genome sequencing
Yumi Yamaguchi−Kabata,Naoki Nariai,Yosuke Kawai,Yukuto Sato,Kaname Kojima,Minoru Tateno,Fumiki Katsuoka,Jun Yasuda,Masayuki Yamamoto,and Masao Nagasaki
邦訳「iJGVD:全ゲノム解析に基づく日本人ゲノム多様性情報の統合されたデータベース」
掲載誌:Human Genetic Variation 電子版