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清水建設、放射線医療施設の高エネルギー化に対応した遮蔽計算手法を開発

2015-10-31

放射線医療施設の高エネルギー化に対応した遮蔽計算手法を開発
〜光核反応データベースに基づき、施設の遮蔽性能を高精度解析〜


 清水建設(株)<社長 宮本洋一>はこのほど、リニアック(直線加速器)室や粒子線治療室等、高エネルギー放射線医療施設の遮蔽設計の最適化を目的に、施設の放射線遮蔽性能を高精度解析するために不可欠な「光核反応データベース」を開発しました。光核反応とは、高エネルギーの放射線(光子)を照射した際に起こる核反応により、原子核から中性子等の粒子が放出される現象を意味します。本データベースは、全ての安定同位体を含む約2,650の原子核(核種)について、光核反応による中性子等の粒子生成を評価したものです。このデータベースを活用して、遮蔽壁内で生成される中性子等の挙動を事前に解析することで、安全性と経済性を両立した遮蔽設計が可能になります。

 高齢化の進展や食生活の変化に伴い、がんや脳疾患の罹患者数が増大する中、リニアック、ガンマナイフ(定位的放射線外科治療装置)、陽子線治療装置、重粒子線治療装置など、高エネルギーの放射線治療装置が急速に普及しています。これらの装置を使用する治療室は、管理区域外への放射線漏洩を基準値以下に抑えるため、コンクリートと鉄板を併用した厚さ1mを超える遮蔽壁で覆われます。一方、リニアック室の遮蔽壁の遮蔽性能は従来、公益財団法人原子力安全技術センターが発行する『放射線医療施設のしゃへい計算実務マニュアル』の計算式を基に評価されていましたが、このマニュアル計算式では、治療装置の高エネルギー化に伴い顕在化した遮蔽壁内での光核反応による中性子生成を評価することができません。このため、過剰な安全裕度を見込んで遮蔽壁の壁厚や鉄板量を設定する必要が生じ、建設コストが膨らむ要因となっていました。

 そこで当社は、光核反応を考慮した遮蔽計算手法の確立を目的に、実案件で手掛けた多数の遮蔽計算結果に基づき、光核反応により原子核から放出される中性子等の粒子の量や角度、エネルギー分布を核種別に評価し、実測データに基づく精度検証を重ねた上で、約2,650に及ぶ核種を網羅した光核反応データベースを構築しました。併せて、シミュレーション用の線源モデルを独自開発し、遮蔽壁を透過する放射線の挙動の3次元解析を基に室外線量を評価する遮蔽計算手法を確立しました。

 本手法を遮蔽設計に活用することで、安全性を確保した上で、遮蔽壁の鉄板量や壁厚のスリム化を図ることが可能となり、従来手法と比べて、建設コストを10〜20%程度低減できる見込みです。また、本手法により、従来手法では困難だった、複雑な形状の施設設計やレイアウト変更時における治療装置の配置検討等にも柔軟に対応することが可能となります。

 米国では、がん患者の半数以上が放射線治療を受療しています。一方、日本ではまだ30%を超えた程度です。当社は、光核反応データベースに基づく遮蔽設計技術を武器に、さらなる需要の増大が見込まれる放射線医療施設の建設受注拡大を目指します。


以上



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