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東京商工リサーチ、2015年3月期の単独決算ベース「銀行114行 預貸率」調査結果を発表

2015-09-25

[特別企画]
2015年3月期 単独決算ベース「銀行114行 預貸率」調査
〜預貸率は6年連続低下、預貸ギャップは236兆円に拡大〜


 2015年3月期決算の国内銀行114行の預貸率は6年連続で低下した。預金と貸出金の差額である預貸ギャップは236兆円に拡大し、景気が上向きになったとはいえ、先行きの不透明さを懸念して手元資金を確保する慎重な企業がまだ多く、前向きな資金需要が乏しいことを反映した。
 また、一時より貸出しを増やす銀行は多くなったが、中小企業向けに比べて、地方公共団体向け貸出の増加率が大きいなど、リスクを回避した貸出姿勢は変わっていない。今後は前向きな資金需要に応じることで預貸率の低下に歯止めがかかることが期待される。

 ※本調査は、銀行114行を対象に2015年3月期単独決算ベースの預貸率を調べた。預貸率は預金残高に対する貸出残高の比率のことで、銀行の預金の運用状況を示す経営指標の1つ。一般的に預貸率が100%を下回る状態は、貸出残高を上回って資金に余裕のあることを示す。
 ※預貸率(%)は、貸出金÷(預金+譲渡性預金)×100で算出し、「貸出金」は貸借対照表の資産の部から、また「預金」と「譲渡性預金」は、貸借対照表の負債の部から抽出した。
 ※2012年4月1日に住友信託銀行中央三井信託銀行中央三井アセット信託銀行の合併で発足した三井住友信託銀行は、過去データとの比較ができないため、調査対象に含まれていない。


<全体の預貸率は67.74%、6年連続のダウン>
 銀行114行の2015年3月期単独決算ベースの預貸率は、67.74%(前年同期67.90%)と前年同期を下回った。3月期決算推移では、2009年3月期(75.75%)以降、6年連続で低下した。
 銀行114行の総貸出金残高が、496兆7,320億3,100万円(前年同期比4.6%増)だったのに対し、総預金残高(譲渡性預金を含む)は733兆3,091億5,700万円(同4.8%増)で、預金総額が貸出金の伸びを上回った。
 これは、上場企業を中心とした好調な業績を背景に手元資金を厚くする企業が多いことに加えて、株価上昇による株式売却益や、賃上げなどの影響による個人預金の増加も要因にある。


<預貸ギャップは236兆円に拡大>
 この結果、2015年3月期の「預貸ギャップ」(預金+譲渡性預金−貸出金)は、236兆5,771億2,600万円にのぼり、預金の貸出金に対する大幅超過は拡大を続けている。
 「預貸ギャップ」の推移は、2011年3月期が194兆6,804億4,100万円だったが、12年3月期に201兆7,380億5,400万円と200兆円を上回った。以降も年々拡大を続け、銀行資金が必ずしも貸出増加に回っていない実態を映し出した。

 *グラフ資料は添付の関連資料「グラフ資料1」を参照


<6割の銀行で預貸率上昇>
 114行全体の預貸率は低下を続けているが、個別では前年同期より比率が上昇したのが70行(構成比61.4%、前年同期60行)と6割を占めた。比率が上昇したのは、西京銀行の8.06ポイント上昇(71.08→79.14%)を筆頭にして、新生銀行7.03ポイント上昇(68.38→75.41%)、岩手銀行6.71ポイント上昇(49.90→56.61%)など。個別では預貸率が前年同期よりアップした銀行が増えていることから、今後は預貸率の低下に歯止めがかかることが期待される。
 一方、前年同期より預貸率が低下したのは43行(構成比37.7%)、同率が1行だった。預貸率の低下が目立ったのは、みずほ信託銀行の前年同期比4.19ポイント低下(99.58→95.39%)を筆頭に、清水銀行3.65ポイント低下(74.98→71.33%)、東邦銀行3.54ポイント低下(51.49→47.95%)、静岡銀行3.35ポイント低下(83.42→80.07%)など。


<地銀の預貸率が上昇>
 業態別の預貸率をみると、地銀64行が70.72%(前年同期70.31%、前年同期比0.41ポイント上昇)。第二地銀41行は73.26%(同73.34%、同0.08ポイント低下)。大手銀行9行が65.05%(同65.51%、同0.46ポイント低下)だった。
 地銀64行は、預貸率が前年同期より上昇したのが40行(構成比62.5%)、低下が23行(同35.9%)、同率が1行だった。第二地銀41行は、上昇が25行(同60.9%)、低下が16行(同39.0%)で、地銀、第二地銀はともに預貸率の上昇行が6割を占めた。一方、大手銀行9行は上昇が5行、低下が4行と拮抗している。


<地区別、10地区のうち6地区で預貸率が上昇>
 本店所在地の地区別の預貸率は、最高が九州21行の75.40%。次いで近畿11行が73.52%、北陸6行が72.72%、中部14行が72.28%、北海道2行が71.91%、関東(東京を除く)19行が71.91%、中国9行が68.34%、四国8行が68.12%、東京11行が64.79%、東北13行が59.36%の順。
 預貸率の前年同期比では、全国10地区のうち6地区で預貸率が上昇した。内訳では九州1.24ポイント上昇、四国1.06ポイント上昇、東北0.99ポイント上昇、中国0.63ポイント上昇、北陸0.41ポイント上昇、関東0.40ポイント上昇だった。一方、低下は北海道が3.27ポイント低下、中部0.66ポイント低下、東京0.50ポイント低下の3地区で、近畿が同率だった。


 銀行114行の預貸率は6年連続で低下したが、企業景況感の改善や政府が中小企業向け貸出を促していることなどを背景に、銀行貸出しは伸びている。
 しかし、まだ力強さに欠け、現状では全体の預貸率を上昇させるまでには至っていない。企業の設備投資は改善しつつあるが、「手元資金が潤沢で貸出し増につながるには、まだ時間がかかる」との声も聞かれる。預貸率の上昇には、貸出増加と合わせて、企業・個人ともに手元流動性を確保する動きを緩和させることも必要だ。
 このためには、景気拡大を持続して、大企業に比べて内需依存度の高い中小企業が先行きに明るい展望を持てる経営環境づくりが求められる。

 *グラフ資料は添付の関連資料「グラフ資料2」を参照





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