イマコト

最新の記事から注目のキーワードをピックアップ!

Article Detail

鹿島、「組立式蛇カゴ魚道」を開発し鹿児島県高尾野川でアユの遡上効果を確認

2015-09-10

“皆ですぐできる”日本初の『組立式蛇カゴ魚道』を開発
高尾野川でアユの遡上効果を確認、実用化しました


 鹿島(社長:押味至一)は、このたび「蛇カゴ(※)」を用いた、人力によって組立て可能な簡易型の魚道を開発しました(特許出願済)。この魚道を鹿児島県高尾野川のコンクリート製の堰(せき)に設置したところ、アユの遡上が観測され、魚道として機能することが確認されました。今後、この『組立式蛇カゴ魚道』をアユ以外の生物にも適用させていくことで、水域生物の生育を図るほか、自然の恵みを利用した地域振興や自然と共生した国土づくりに貢献していきます。

 *参考画像は添付の関連資料「参考画像1」を参照


 ※「蛇カゴ」とは
  カゴ状の構造物で、内部に自然石、砕石などを詰めたもの。河川工事における伝統工法として、護岸などの目的で用いられてきた。カゴの材料は、かつては竹であったが、現在では金網や合成樹脂のネットが多い。


■開発の背景
 水産資源の保全と再生には、水と生き物の循環が行われることが不可欠です。そのため、落差工、堰、ダムなどの河川横断構造物には魚道が設置されていますが、河道としての安定性や耐久性の観点から、通常はコンクリート構造となっています。これらの一部には、設置当初は機能していても、経年変化に伴う流況の変化や土砂堆積あるいは破損などにより、魚道としての機能を喪失していくものがあります。また、そもそも魚道が設置されていない河川横断構造物もあり、水域生物の生育のためには、確実に機能する魚道の設置により生息空間を拡大することが求められています。
 そこで鹿島では、河川工事の護岸などに使用されてきた伝統工法である「蛇カゴ」を活用し、新しい『組立式蛇カゴ魚道』を開発しました。


■開発の経緯
 これまで鹿島は、身近な生き物の生物生態学的知見をもとに、トビハゼの人工干潟造成や、カニ・ウナギの棲み家としての機能を付与したコンクリート護岸を実用化してきました。また、ウナギに係る調査・研究実績から、「蛇カゴ」とウナギなどを漁獲するために石を積んで行う「石倉漁法」を合体させてウナギの棲み家とした『石倉カゴ』を開発しました。この『石倉カゴ』は、水産庁の推進する事業(※)に適用され、ウナギに加えてエビ・カニ・ハゼなどの魚介にも対応できるように改良するなど、水域生物の棲み家作りに実績を重ねてきました。今回の『組立式蛇カゴ魚道』は、この『石倉カゴ』を応用したものです。
 なお、開発にあたっては、九州大学大学院の望岡典隆准教授、小樽商科大学の八木宏樹教授、粕谷製網株式会社(社長:粕谷正昭 所在地:長崎県諫早市)、株式会社フタバコーケン(社長:中村鋭雄 所在地:静岡県静岡市)と共同で行いました。
 (※「水産多面的機能発揮対策事業」平成25年度より開始)


■概要
 『組立式蛇カゴ魚道』の特徴は以下のとおりです。

 ○構造・部材について
  ・主な部材には、ポリエステルモノフィラメント線亀甲網(STKネット、NETIS登録済)を使用しています。本材は、劣化しにくく耐久性があり、また弾力があって軽いため、施工性にも優れています。
  ・小段を形成するための蛇カゴ部分と、遡上する魚が入って上段に飛び上がるためのプール部分が一体となった構造となっています。

 *参考画像は添付の関連資料「参考画像2」を参照


 ○施工性について
  ・設置、調整、撤去は数人の手で、しかも短時間で行うことができます
  ・河床・堰などに完全に固定しないため、対象生物の遡上時期や生態に合わせた設置、移動、撤去が可能です。
  ・従来のコンクリート製魚道に対し、コストは10分の1以下です。

 ○“皆ですぐできる”ということ
  ・設置、調整、撤去が人力で可能であることから、地域等の住民の力で“皆ですぐできる”ことが特長です。このため、住民参加型の活動で利用しやすく、生態系サービスの活用による地域振興等に貢献できます。


■アユの遡上効果モニタリング調査
 鹿児島県出水市の高尾野川にて、「高尾野内水面漁業協同組合」、「高尾野川をきれいにする会」と共同で『蛇カゴ組立式魚道』を設置し、遡上効果のモニタリング調査を行いました。

 アユの稚魚は5月に入って水温17℃に近づくと遡上活動を活発に始める性質があります。そこで、2015年4月、上流部の土砂防止堰傾斜部分と下流部分の落差工垂直部分に対し、本魚道を1基ずつ設置したのち、魚道下流部に稚アユを放流し、同5月上旬に遡上状況を観察して効果の検証を行いました。その結果、いずれの設置箇所でも稚アユの遡上を確認できたことから、本魚道が有効であることがわかりました。
 なお、2基の魚道設置作業は、調整を含め6名で3時間以内、撤去作業は2時間程度で終了しました。今回使用し、撤去した各部材は廃棄せず保管しており、来年の稚アユ遡上時期に再利用する予定です。

 *参考画像は添付の関連資料「参考画像3」を参照


■今後の展開
 今回開発した『組立式蛇カゴ魚道』は、遡上効果のモニタリング調査により魚道としての実用性が確認できました。また、設置・撤去が容易であることも実証でき、本魚道を「皆ですぐできる」魚道と位置づけ、さらなる改善によりアユ以外の生物にも適用させ、水域生物の生育から、森・里・川・海の水・物質循環の確保につなげていきます。
 今後も、自然の恵みを積極的に利用して地域振興を図ることで地方創生に寄与するとともに、自然と共生した国土づくりに貢献していきます。



Related Contents

関連書籍

  • 死ぬまでに行きたい! 世界の絶景

    死ぬまでに行きたい! 世界の絶景

    詩歩2013-07-31

    Amazon Kindle版
  • 星空風景 (SKYSCAPE PHOTOBOOK)

    星空風景 (SKYSCAPE PHOTOBOOK)

    前田 徳彦2014-09-02

    Amazon Kindle版
  • ロンドン写真集 (撮影数100):ヨーロッパシリーズ1

    ロンドン写真集 (撮影数100):ヨーロッパシリーズ1

    大久保 明2014-08-12

    Amazon Kindle版
  • BLUE MOMENT

    BLUE MOMENT

    吉村 和敏2007-12-13

    Amazon Kindle版