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タカラバイオ、自治医科大学に寄附講座「免疫遺伝子細胞治療学(タカラバイオ)講座」を設置
自治医科大学に寄附講座を設置し、
遺伝子医療の新たなプロジェクトを推進
タカラバイオ株式会社は、キメラ抗原受容体(CAR)遺伝子治療の研究開発ならびに臨床開発を推進することを目的として、自治医科大学に2011年4月1日付で寄附講座「免疫遺伝子細胞治療学(タカラバイオ)講座」を設置します。本寄附講座の教授は、自治医科大学医学部の小澤敬也教授(内科学講座血液学部門主任教授 分子病態治療研究センター・センター長 同 遺伝子治療研究部教授)が兼任されます。
現在、がん患者から採取したリンパ球に、がん細胞を特異的に認識する受容体の遺伝子を導入し、患者自身に戻す遺伝子治療法の臨床試験が世界各地で進められています。当社が三重大学医学部と共同で臨床開発を実施しているTCR(T細胞受容体)遺伝子治療もその1つです。
CAR遺伝子治療は、キメラ抗原受容体(CAR;Chimeric Antigen Receptor)の遺伝子を患者由来のT細胞に体外において導入し、患者に戻すという治療法です。近年、TCR遺伝子治療と並び、CAR遺伝子治療の臨床試験の事例も増えてきており、有効性を示す研究データの報告もなされています。CAR遺伝子治療には、ヒト白血球抗原(HLA)の型に依存せず、より多くの患者に適用することができるといった特徴があります。
当社は、高効率遺伝子導入法であるレトロネクチン(R)法を基盤技術とした遺伝子治療の商業化に取り組んでいますが、CAR遺伝子治療は、レトロネクチン(R)法を含めた当社の遺伝子治療関連技術・ノウハウを応用できる有望な治療法であると考えています。
本寄附講座では、遺伝子治療の臨床研究に取り組んできた経験を持つ自治医科大学と協力し、悪性リンパ腫などの造血器腫瘍を対象としたCAR遺伝子治療の臨床開発や、新規のCAR関連技術の研究開発を進める予定です。
【寄附講座の概要】
(1)名称:免疫遺伝子細胞治療学(タカラバイオ)講座
(2)設置期間:平成23年4月1日から平成26年3月31日まで
(3)寄附金総額:9,000万円(3,000万円×3年)
(4)体制:小澤敬也 教授(兼任)、大嶺謙 講師(兼任)
塚原智典 助教(兼任)、内堀亮介 助教(専任)
当社研究員を1名派遣予定
<当資料取り扱い上の注意点>
資料中の当社の現在の計画、見通し、戦略、確信などのうち、歴史的事実でないものは、将来の業績に関する見通しであり、これらは現時点において入手可能な情報から得られた当社経営陣の判断に基づくものですが、重大なリスクや不確実性を含んでいる情報から得られた多くの仮定および考えに基づきなされたものであります。実際の業績は、さまざまな要素によりこれら予測とは大きく異なる結果となり得ることをご承知おきください。実際の業績に影響を与える要素には、経済情勢、特に消費動向、為替レートの変動、法律・行政制度の変化、競合会社の価格・製品戦略による圧力、当社の既存製品および新製品の販売力の低下、生産中断、当社の知的所有権に対する侵害、急速な技術革新、重大な訴訟における不利な判決等がありますが、業績に影響を与える要素はこれらに限定されるものではありません。
<参考資料>
【語句説明】
・キメラ抗原受容体
キメラ抗原受容体(CAR;Chimeric Antigen Receptor)は、あるがん抗原を特異的に認識するモノクローナル抗体由来の単鎖抗体(scFV)と、T細胞受容体の細胞質シグナル伝達ドメインであるCD3ζ鎖を遺伝子工学的に結合させて作製された、がん抗原を特異的に認識できる受容体です。T細胞受容体と異なり、CARはヒト白血球抗原(HLA)の型に制限されることなくがん抗原を認識することができます。したがって、CARを表面に発現したT細胞を患者に戻すCAR遺伝子治療は、HLAの型に関係なく、対象となるがん抗原を持つ全ての患者に用いることができます。
・TCR遺伝子治療
TCR遺伝子治療とは、患者のがん細胞に発現しているがん抗原を特異的に認識するTCR(T細胞受容体)の遺伝子を自己リンパ球に導入し、患者に輸注する治療法です。当社は、三重大学医学部と共同で、食道がんを対象としたTCR遺伝子治療の臨床研究を実施しています。
・TCR(T細胞受容体)
T細胞に発現する糖タンパク質で、T細胞が抗原を認識する際の受容体です。
・T細胞
標的細胞の傷害と抗体産生の調節の役割を担う重要な細胞で、Tリンパ球とも呼ばれます。免疫系の司令塔的な役割を担っており、末梢リンパ組織の胸腺依存領域に主に分布します。
・ヒト白血球抗原(HLA)
ヒト白血球抗原(HLA;Human Leukocyte Antigen)は、免疫系が自己と非自己を区別して認識する際に最も重要な役割を担う分子です。T細胞によるがん細胞の認識は、T細胞表面にあるTCRがHLAとがん抗原ペプチドの複合体に結合することで行われ、それぞれのTCRには結合できるHLAの型が決まっています。
・レトロネクチン(R)法
ヒトフィブロネクチンと呼ばれる分子を改良した組換えタンパク質であるレトロネクチン(R)を用いた高効率遺伝子導入法です。レトロネクチン(R)法は、レトロウイルスベクターによる遺伝子治療の臨床研究のスタンダードとなっています。