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日立、倉庫内移動など物流向け自律移動型双腕ロボットの制御技術を開発

2015-08-28

物流倉庫での集品作業の自動化に向けた自律移動型双腕ロボットの制御技術を開発
走行台車・昇降台・2本のアームを連携させ、さまざまな商品の素早い取り出し動作を可能に


 株式会社日立製作所(執行役社長兼COO:東原 敏昭/以下、日立)は、このたび、株式会社日立物流(執行役社長:中谷 康夫/以下、日立物流)の協力のもと、物流倉庫での集品作業の自動化に向けて、目的の商品が保管されている棚まで移動して商品を取り出し、箱詰めまで行う自律移動型双腕ロボットの制御技術を開発しました。本制御技術により、移動しながら目的の商品を見つけてアームを伸ばす動作や、1本のアームでは取り出せない商品を2本のアームで取り出す動作など、人と同様の集品作業が可能となります。本制御技術を搭載したロボットにより、人手を前提とした多品種少量の商品を扱う倉庫において、集品作業を効率的かつ安定的に実施することが期待されます。

 近年、通販市場の拡大や顧客ニーズの多様化に伴い、多品種少量の商品を扱う倉庫が増えています。このような倉庫では、広大な保管エリアから注文に応じて棚に密に並んでいる商品を取り出す集品作業が主な業務となっており、さまざまな形状や重さの商品に対応するため、作業は主に人の手によって行われています。
 集品作業を効率的に安定して実施するために、仕分けソータ(*1)などの固定設備や無人搬送車を導入して一部自動化が進められていますが、それぞれ扱う商品や作業の種類に制限があり、導入できる倉庫は限定的でした。また、産業用アームを搭載した移動ロボットの研究も行われていますが、走行台車と2本のアームなどの複数の機構をそれぞれ個別に動作させていたことから、動作に時間が掛かり、人手を前提とした倉庫で活用することはこれまで困難でした。

 そこで日立は、走行台車の上に、高さを調節する昇降台を載せ、さらに2本の市販の産業用アーム(*2)とグリッパ(手作業の手に相当する部分)(*3)を搭載した自律移動型双腕ロボットを製作し、人の作業を前提とした環境で効率的な集品作業を実現するためのロボット制御技術を開発しました。
 製作したロボットには、走行台車・昇降台・2本のアームなど複数の機構が備わっており、人と同様の柔軟で素早い動作を実現するためには各機構を連携させる必要があります。連携させるために各機構間で頻繁に通信を行うと通信量や演算量が膨大となることや、全ての機構の動きを一元的に管理しようとするとプログラムが煩雑となることから、どちらも動作の不具合に繋がりやすくなるという課題がありました。今回開発した技術は、集品作業の要となる走行台車・昇降台・2本のアームの各機構を、少ない通信量で効率的に連携できるよう制御するものです。ロボットが動作するにあたって各機構が必要とする最低限の情報や、各機構が動作する際の適切なタイミングを事前に定義することで、通信量を抑えたまま各機構を連携させることを可能にし、人と同様の柔軟で素早い動作を実現しました。開発した制御技術の詳細は以下の通りです。


(1)走行台車・昇降台・アームの連携動作を制御
 商品の取り出し動作を開始する際、走行台車は商品保管棚に到着する1mほど手前で、カメラを搭載するアームに商品を認識するように通知します。アームはその位置から分かる商品のおおよその位置を認識し、走行台車の停止予定位置でグリッパが商品の直前に来るようアーム自らが動作しつつ、昇降台に動作開始を指示します。走行台車は停止直後に停止予定位置とのずれをアームへ通知し、アームはその情報に基づいてグリッパの位置を補正します。これにより、停止直後に素早く正確に商品を取り出すことができます。


(2)商品に応じて2本のアームの連携動作を制御
 2本のアームを用いて商品を取り出す際、取り出す商品の材質やグリッパの性能に基づいて、アーム同士に多少の位置ずれが生じても動作を継続できる許容範囲を事前に登録しておきます。そうすることで、アーム同士が相手の姿勢に厳密に合わせることなく連携することが可能になり、片方のアームで商品を支えながらもう片方のアームで商品を取り出すなどの連携動作を一度の通信で行うことができます。

 今回開発した制御技術により、商品を取り出す作業において、各機構が連携していないロボットが7秒掛かっていたものを、移動中に商品を認識して取り出し動作を開始することで3秒へと短縮することに成功しました。また、1本のアームでは取り出せない箱(奥行き約30cm、重さ約1kg)をもう1本のアームで支えて取り出す動作や、保管箱の中に入っている500mlペットボトル飲料を引き出して取り出す動作、片手に持っている箱に商品を詰める動作など、人手を前提とした倉庫の集品作業に必要となるさまざまな動作を素早く確実に実行できることを確認しました。

 今回の開発は、日立物流と共同で取り組む未来型倉庫の研究開発の一部として行われました。日立は、本技術を搭載したロボットの実用化を含め、物流事業の革新に貢献していきます。
 本成果の一部は、2015年8月26日〜28日までアイルランドで開催される国際会議「Irish Machine Vision&Image Processing」で発表する予定です。

 *1商品に貼られたバーコードなどを読み取り、品種別や発送方面別など、所定の場所に自動で仕分けを行う機械。
 *2エプソン製6軸ロボット(C4−A901S)を使用。
 *3吸着グリッパ(左):シュマルツ製(エンドエフェクタVEEシリーズ)、吸着グリッパ(右):ピスコ製(VPMC20BN4J)、2指グリッパ:ROBOTIQ製(2−Finger 85)を使用。

 ※参考画像は添付の関連資料を参照


以上



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アイルランド 日立製作所 エプソン 日立物流 日立 COO Coo

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