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東北大、日本人集団の血漿のメタボローム&プロテオーム解析が完了
日本人多層オミックス参照パネル公開
−日本人集団の血漿のメタボローム&プロテオーム解析が完了−
<成果のポイント>
○東北メディカル・メガバンク計画のコホート調査に参加した日本人500人分の血漿オミックス解析を完了(世界初)
○本成果は、今後の疾患関連マーカー探索の基盤となる
○日本人集団の血漿中の代謝物の濃度分布やタンパク質の頻度分布を広く内外の研究者に公開
東北大学東北メディカル・メガバンク機構(機構長:山本雅之、以下ToMMo)は、東北メディカル・メガバンク計画のコホート調査(*1)に参加した日本人500人分の血漿オミックス解析(*2)を完了しました。500人以上の血漿の、網羅的メタボローム(*3)及びプロテオーム(*4)統合解析を行った世界初の成果です。本解析は、質量分析(MS)法(*5)と核磁気共鳴(NMR)法(*6)を複合的に駆使することにより、日本人集団の血漿中の代謝物の濃度分布やタンパク質の頻度分布を明らかにすることに成功し、今回、日本人多層オミックス参照パネル(*7)として公開します。
今後、ToMMoは、解析例の数や同定物質の種類を増やしてパネルの精度を上げるとともにゲノム情報等との関連解析を行い、幅広い医科学研究の基盤として活用されるよう、データベース(日本人多層オミックス参照パネル)を随時更新していきます。
【背景】
がんや生活習慣病など現在わが国で罹患率の高い疾患の多くは、複数の環境要因や遺伝要因が複雑に相互作用して発症します。血液中の代謝物やタンパク質の種類や濃度は、遺伝子や生活習慣の影響を受けて各個人で異なり、また同一人でも加齢や疾患の有無で変化します。このため疾患バイオマーカーとして注目されています。現在世界中の健康調査において、様々な生体分子を網羅的・包括的に解析する方法としてオミックス解析が導入され始めており、生活習慣や人種による代謝物などの違いと疾患との関連が注目されています。しかし、血漿中の代謝物を調べるメタボローム解析とタンパク質を調べるプロテオーム解析の両方を同じ対象者で大規模に行った例はこれまでありませんでした。また、遺伝要因との関連解析に必要なゲノム情報に関しても、遺伝子多型のみをスクリーニングするSNPアレイ解析がほとんどで、全ゲノム情報が解読(*8)された日本人集団を対象に大規模オミックス解析が行われた例はありませんでした。
【今回の成果】
■500人分の血漿オミックス(メタボローム&プロテオーム)解析が完了
ToMMoは東北メディカル・メガバンク計画のコホート調査に参加した500人分のオミックス情報を明らかにしました。500人分の血漿メタボローム及びプロテオーム解析の達成は世界初です。東北メディカル・メガバンク計画では、宮城県と岩手県在住の日本人を対象とした大規模なコホート調査とそれにもとづくバイオバンク構築を進めるとともに、ご提供いただいた一部の試料から血漿オミックス解析を進めてきました。本事業におけるオミックス解析は、質量分析(MS)法と核磁気共鳴(NMR)法という2つの解析技術を用いて、網羅的かつ高精度なデータを得ていることが特徴です。
■日本人集団の血液中の各代謝物やタンパク質の分布情報を公開
日本人集団における血液中の代謝物やタンパク質の種類とその分布を高精度に決定しました。それらの組成や分布情報は、様々な疾患の原因を探索する際の比較対照(参照パネル)として非常に重要です。このため、当機構で得られたオミックス情報を日本人多層オミックス参照パネルとしてこのたび公開いたします。
サイト名:Japanese Multi Omics Reference Panel(jMorp)
言語:英語
URL:https://jmorp.megabank.tohoku.ac.jp/
※以下の資料は添付の関連資料「参考資料」を参照
【参考1】検索サイト
【参考2】日本人多層オミックス参照パネルにおける公開内容
【今後の展開】
■個別化医療・予防を目指したゲノム情報等との統合解析
今回オミックス解析を行った500名は全ゲノム情報解析が既に終了しています。今後はゲノム情報等との統合解析により、各代謝物やタンパク質の個人差(体質)に影響を与えている環境・遺伝要因の解析を行います。そして様々な疾患関連(予防)マーカーの確立を目指し、個別化医療・予防の実現に貢献します。
■幅広い研究機関との共同研究の推進(詳細情報の開示を含む)
健常者の多層オミックス参照パネルは、疾患関連マーカー候補の探索・評価において、正常対照として非常に有用です。このため幅広い研究機関と共同研究を行うことで国内の疾患研究を連携して進めます。その際は今回公開対象になっていない詳細情報も限定的に共同研究先に提供する予定です。
また、プロテオーム解析に対するゲノム多型情報の活用など新たな解析方法を共同研究先と行うことで、オミックス参照パネルの高精度化を目指します。
■時系列観察を伴うオミックス解析
血液中の代謝物・タンパク質の分布や組成は、加齢(成長)や生活習慣に応じて時々刻々と変化します。このため、変化する代謝物・タンパク質を同定し、データベース化することでオミックス参照パネルを高精度化し、より幅広い研究対象において利用出来るように拡張していきます。
また、オミックス解析により血液中の薬物も解析可能ですので、血液中の薬物を検出することにより、どのような病気にかかっているかといった、罹患率の推定が可能です。また、長期の服薬による人体への影響や効果の調査を行うことも可能ですので、今後のコホート研究においてオミックス解析を時系列で行うことにより、服薬状況とその影響や効果を調べることも可能になります。
※用語解説などは添付の関連資料を参照