Article Detail
富士フイルム、角層への浸透性を向上させた「ヒト型ナノアシルセラミド」を開発
「ヒト型アシルセラミド」を世界最小(※1)20nmサイズで安定分散することに成功
角層への浸透性を従来比約6倍に向上させた「ヒト型ナノアシルセラミド」を開発
肌のバリア機能を担う角層細胞間脂質の層状構造を修復
富士フイルム株式会社(社長:中嶋 成博)は、肌のバリア機能(※2)を担う角層細胞間脂質の長周期ラメラ構造(Long Periodicity Phase。以下、LPP。後述「長周期ラメラ構造(LPP)とは」参照。)の形成に必須とされる成分「ヒト型アシルセラミド」を世界最小20nmサイズで安定分散した「ヒト型ナノアシルセラミド」を開発しました。この「ヒト型ナノアシルセラミド」は、「ヒト型アシルセラミド」分散液に比べて、約6倍の角層浸透性を示すことを確認しました。さらに、「ヒト型ナノアシルセラミド」が、角層細胞間脂質のLPPを修復することも確認しました。
当社は今後、この成分をスキンケア化粧品の開発に応用していきます。
なお、当社は、9月8日から学校法人名城大学にて開催される「日本油化学会 第54回年会」で本研究成果を発表いたします。
*イメージ画像は添付の関連資料を参照
■実験方法
培養表皮モデル上に界面活性剤(ドデシル硫酸ナトリウム)を塗布し、洗顔などで受ける程度のダメージを角層に与えた(「ダメージ肌モデル」)後、「ヒト型ナノアシルセラミド」を塗布し、2日間培養した。その後、透過型電子顕微鏡で角層細胞間脂質の構造を観察した。
■実験結果
バリア機能が正常な肌では角層細胞間脂質が規則正しく層状に並んでいるので一定間隔(周期)の縞模様となって観察された(左)。ダメージ肌モデルでは角層細胞間脂質の配列が崩れ、縞模様がなくなっていることを確認した(中央)。ダメージ肌モデルに「ヒト型ナノアシルセラミド」を添加すると、規則的な角層細胞間脂質の構造が修復され、縞模様が観察された(右)。なお、「ヒト型ナノアシルセラミド」を塗布しなかったダメージ肌モデルの角層細胞間脂質の構造は、2日が経過しても、一定間隔の縞模様が確認できる程度まで修復されなかった。
<研究の背景>
人の肌は表皮と真皮からなり、表皮の最上層には角層細胞と脂質(角層細胞間脂質)で構成される角層が存在します。角層細胞間脂質はセラミドやアシルセラミドなどで構成され、これらが層状に積み重なったラメラ構造(※3)を形成して、角層細胞の間を埋めることで肌のバリア機能を発揮しています(【図1】参照)。
当社はこれまで、肌の細胞間脂質のラメラ構造形成に有用とされるセラミドと同一の構成原子で、同一の立体構造を持つ「ヒト型セラミド」を独自のナノテクノロジーによりナノサイズに高濃度分散した「ヒト型ナノセラミド」を開発し、角層への浸透を高め、肌のバリア機能を改善してきました。角層細胞間脂質のラメラ構造には、間隔が異なる短周期ラメラ構造(Short Periodicity Phase。以下、SPP。)とLPPの2種類があり、特にアシルセラミドを必須成分として形成されるLPPがバリア機能に大きく寄与することが知られていました。しかし、加齢や季節変動によるアシルセラミドの減少により、LPPが乱れ、肌のバリア機能は低下します。従来から「ヒト型アシルセラミド」を肌に塗布して補う試みが行われてきましたが、同成分は溶解性が低く、結晶化しやすいため、角層に浸透してLPPを形成することは確認されていませんでした。そこで、当社は「ヒト型セラミド」同様に、「ヒト型アシルセラミド」をナノサイズで、安定分散することを試み、LPPの修復や肌のバリア機能を向上させるための研究を行いました。
*研究の成果などリリース詳細は添付の関連資料を参照