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東大、電池の充電を速くする“中間状態”を解明

2015-06-19

電池の充電を速くする“中間状態”を解明


1.発表者:
 山田淳夫(東京大学 大学院工学系研究科化学システム工学専攻 教授)
 西村真一(東京大学 大学院工学系研究科化学システム工学専攻 特任研究員)


2.発表のポイント:
 ◆これまで本当に存在するかどうか不確かであった、電池の充電を速くする“中間状態”を人工的に作り出すことに成功し、その存在を証明した。
 ◆この“中間状態”では、電子が縞状に模様を描き、これを邪魔しないようにイオンが自発的に位置を柔軟に変えることで、双方が素早く移動できる。
 ◆“中間状態”の現れやすい材料の開発や充電条件を明らかにすることで、電池の充電時間を格段に短縮できる。


3.発表概要:
 スマートフォンや電気自動車が急速に社会に浸透していく中、電池の充電を速やかに行いたいという要望は強まるばかりである。ここ数年学会では、電気を貯める物質において、充電状態でも放電状態でもない“中間状態”が存在し、これが反応中に現れることによって充電を早く行うことができる、という学説がいくつか発表されてきた。しかし、そもそもこのような“中間状態”が本当に存在するのか、存在したとしてもどのような場合に現れるのか、という漠然とした議論にとどまっていた。当然ながら、“中間状態”の具体的な性質については、完全にベールに覆われていた。
 東京大学工学系研究科の山田淳夫教授、西村真一特任研究員らの研究グループは、このような“中間状態”を完全に単離する合成手法を開発してその存在を如実に示した上で、様々な性質について詳細に調査した。その結果、電子の並びが縞状に規則正しく模様を描き、これを邪魔しないようにイオンが自発的にその位置を柔軟に変えていることを発見した。このような状況下では、通常観測される充電状態や放電状態よりも電子やイオンがはるかに高速に移動することができるため、充電時間を短くすることにつながっていると考えられる。
 今後、このような“中間状態”の現れやすい材料の開発や充電条件を明らかにすることで、電池の充電時間を格段に短縮できる可能性がある。
 本成果は、ドイツの化学雑誌Angewandte Chemie International Editionのオンライン版に2015年6月12日に掲載された。


4.発表内容:
 (1)研究の背景・先行研究における問題点
  低炭素化社会への移行にむけた意識が浸透し、様々な省エネルギー技術への関心が高まっている。その中で、電気を蓄え必要に応じて取り出すことのできる2次電池は国家的重点技術の一つになっている。現在、室温付近で動作する最も優れた2次電池はリチウムイオン電池(注1)であり、携帯電子機器用の電源として広く普及しているのみならず、電気自動車用電源や家庭用電源としても本格的に適用が始まっている。
  用途によらず、電池を素早く充電することに対する要望は非常に大きい。しかし、充電中の状態の変化の様子が十分に理解されてこなかったため、これまでは経験的な施策が講じられてきた。ここ数年学会では、電気を貯める物質において、充電状態でも放電状態でもない“中間状態”が存在し、これが反応中に現れることによって充電を早く行うことができる、という学説がいくつか発表されてきた。しかし、そもそもこのような中間状態が本当に存在するのか、存在したとしてもどのような場合に現れるのか、という漠然とした議論にとどまっていた。また、この中間状態は寿命が短く、分離もできないとされてきた。
  当然ながら、“中間状態”の具体的な性質については、全く解明されていなかった。

 (2)研究内容
  東京大学大学院工学系研究科化学システム工学専攻の山田淳夫教授らの研究グループは、電池の充電中に現れる“中間状態”を人工的に合成する技術を開発し、その存在を如実に示すことに成功するとともに、様々な性質を明らかにした。今回山田教授らの研究グループは、電気を蓄える物質の元素の構成比や熱処理の条件を最適化することで、室温で長時間安定に存在する“中間状態”が人工的に得られることを発見した。これにより初めて、“中間状態”の性質を注意深く調べることが可能になり、詳細な分析が行われた。その結果、電子の並びが縞状に規則正しく模様を描き、これを邪魔しないようにイオンが自発的にその位置を柔軟に変えていることがわかった(図1参照)。このような状況下では、通常観測される充電状態や放電状態よりも電子やイオンがはるかに高速に移動できることも判明した(図2参照)。従って、このような“中間状態”を発現させることが、充電速度を早くする上で重要な方向性となることを解明した。

 (3)社会的意義・今後の予定
  本研究成果により、電池の充電速度を速くするための一般的な指標が得られ、これをもとに材料の開発を行い、充電条件を最適化することで、充電時間の短縮が効率的に行われる。電池の充電時間が短縮されることで、生活の様々な局面での利便性が向上することが期待される。
  本研究成果の一部は、科学研究費補助金基盤研究A「局在電子系における異常電極活性」(課題番号19205027)および「核生成成長機構に基づく新奇な高速電極反応」(課題番号23245042)による支援を受けて行われた。


 ※以下の資料は添付の関連資料「参考資料」を参照
  ・発表雑誌
  ・用語説明
  ・添付資料



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