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ノークリサーチ、主成分分析による中堅・中小企業のIT活用の地域別状況に関する考察結果を発表
主成分分析を用いた中堅・中小企業におけるIT活用の地域別状況に関する考察
ノークリサーチ(本社〒120−0034 東京都足立区千住1−4−1東京芸術センター1705:代表:伊嶋謙ニ TEL:03−5244−6691URL: http//www.norkresearch.co.jp)は主成分分析の手法を用いることによって、中堅・中小企業におけるIT活用の地域別状況を把握・予測する分析事例を発表した。本リリースは「2015年版中堅・中小企業におけるIT投資の実態と展望レポート」内のデータを活用した具体例の一つである。
<IT活用の地域差を解消するには、ITがもたらす二面性/多面性を踏まえることが大切>
■同一のITソリューションがIT活用の地域差を縮小することもあれば、拡大することもある
■地域のIT活用に影響を与える様々な要因を整理する際には「新たな軸」の探索が有効
■「IT活用の活性度」と「情報やノウハウの流通量」の2つから地域毎の優先事項が見える
【同一のITソリューションがIT活用の地域差を縮小することもあれば、拡大することもある】
以下のグラフは「2015年版 中堅・中小企業におけるIT投資の実態と展望レポート」の中で、「地域によってIT活用に差が生じている要因として考えられる事柄(複数回答可)」を尋ねた結果である。昨今では人口減少などに起因する地域格差に関する議論が盛んになっている。しかし、以下のグラフにおいて「A1.業種による格差があり、地域によって業種に偏りがあるため」が最も高い割合を示していることからもわかるように、IT活用の地域差は人口減少の他にも様々な要因が考えられる。また、IT活用は地域格差を縮小する効果が期待できる一方、拡大させる可能性もゼロではない。例えば、サテライトオフィスやテレワークは地理的な制約を受けずに業務をこなす環境を提供する一方、地域のIT販社/SIerが案件単価の高い大都市圏の顧客を優先する状況を生むことも考えられる。このようにIT活用の地域差を考える上では「ITソリューション導入がもたらす二面性/多面性」を踏まえる視点が重要となる。以下のグラフに選択肢として挙げたA1〜A12はそうした様々な可能性を踏まえたものだが「個々の地域に即したIT活用訴求において留意すべき点は何か?」を端的に俯瞰するにはパラメータが多すぎる。そこで次頁以降では「主成分分析」の手法を用いて、IT活用の地域別状況を把握・予測する分析例を紹介していく。
※「2015年版 中堅・中小企業におけるIT投資の実態と展望レポート」の概要については本リリース末尾の「付記」を参照
*グラフ資料は添付の関連資料「グラフ資料(1)」を参照
【地域のIT活用に影響を与える様々な要因を整理する際には「新たな軸」の探索が有効】
以下の図は「地域によってIT活用に差が生じている要因として考えられる事柄」を地域別(北海道、東北、関東甲信首都圏、北陸、東海、近畿、中国、四国、九州・沖縄)に尋ねたデータに対して、主成分分析を行った結果を示したものだ。
※各都道府県がどの地域区分に属するかについては本リリース末尾の「付記」を参照
上記10区分の地域について、前頁に記載したA1〜A12の選択肢を詳細に比較することは可能だが、「実際にどのような点に留意すべきなのか?」を端的に把握することは難しい。こういった場合に役に立つのが「主成分分析」であり、統計学において良く用いられる手法の一つである。「主成分分析」自体の詳細な説明はここでは割愛するが、A1〜A12の選択肢に共通する幾つかの「新たな軸(=観点)」を見つけ出し、その軸に沿って全体の傾向を把握するといったアプローチとなる。
ここではA1〜A12の回答割合を地域別に集計した結果から得られる相関係数行列の固有値・固有ベクトルを求める方法によって算出している。以下の図はこのようにして得られた「新たな軸」のうちの最初の2つ(「PC1」と「PC2」)を横軸、縦軸とした場合の結果をまとめたものだ。A1〜A12の選択肢が「PC1」「PC2」とどのように関連しているか?新たな軸で見た時10区分の地域がどのような位置付けになっているか?を表している。
*グラフ資料は添付の関連資料「グラフ資料(2)」を参照
次頁では上図が何を示しているか?について詳しく考察していく。
【「IT活用の活性度」と「情報やノウハウの流通量」の2つから地域毎の優先事項が見える】
主成分分析においては得られた「新しい軸」(ここでは「PC1」「PC2」)の意味付けが重要となる。ここではA1〜A12の選択肢との相関がどれだけあるか?を元に「PC1」と「PC2」が何を表しているか?を考えていくことにする。
A1〜A12の赤い矢印は各選択肢とPC1/PC2との相対的な相関を表している。つまり、PC1との関係性を見る場合、赤い矢印の横座標がプラスまたはマイナスに大きいものほどPC1との相関が強く、0に近いものほど相関が弱い。すると、比較的高い相関を示している選択肢としては以下が挙げられる。
・A4.IT活用が進んだことで、ビジネスが大都市圏に集中したため(プラス)
・A7.主要なITベンダが大都市圏のみに営業所を設けているため(マイナス)
・A10.地方自治体がITインフラの整備に費やす予算が少ないため(マイナス)
上記を踏まえると、PC1のマイナス方向は「地域におけるベンダや自治体のIT活用支援が進まない」ことから生じるIT活用の地域差」、プラス方向は冒頭でも述べたような「IT活用が進むことによって、逆にビジネスが大都市圏に集中する」という観点からのIT活用の地域差を表していると考えられる。つまり、「PC1」の軸は『地域におけるIT活用の活性度』という新たな観点で全体を俯瞰したものと捉えることができる。
同様にPC2との関係性を見る場合には赤い矢印の縦座標がプラスまたはマイナスに大きいものほどPC2との相関が強くなる。それに該当する選択肢としては以下が挙げられる。
・A2.交通網の発達で地方と大都市圏の移動が容易になったため(マイナス)
・A6.地方ではセミナーや展示会が少なく、IT活用を学ぶ機会がないため(プラス)
・A11.官主導の事業は失敗が多く、地域の財政負担が増すため(プラス)
PC2のマイナス方向は「地方と大都市圏の間の地理的障壁が低い」ことで生じるIT活用の地域差、プラス方向は「IT活用を成功させるための情報やノウハウが少ない」ことによって生じるIT活用の地域差を表している。つまり、PC2の軸は『IT活用に必要な情報やノウハウの流通量』という新たな観点で全体を俯瞰したものと捉えることができる。(ただし、流通量の多少とPC2軸のプラス/マイナスは逆の関係になっている点に注意)
PC1とPC2の意味付けを踏まえた上で、IT投資額が大きい首都圏、東海、近畿を除いた地域を整理すると以下のようになる。
*参考資料は添付の関連資料を参照
【カテゴリ1】北海道、九州・沖縄
IT活用に必要な情報やノウハウの充実がまず大切、その上で、それらを地域のユーザ企業のIT活用支援に活かす取り組みが重要となる。
【カテゴリ2】関東甲信、中国
関東甲信についてはIT活用に必要な情報やノウハウの提供促進が大都市圏への集中要因にもなりうるが、中国についてはその影響は低い。情報の提供よりも、地域のユーザ企業に対するIT活用支援に直結する取り組みが重要になる。
【カテゴリ3】北陸、四国
北陸についてはIT活用に必要な情報やノウハウの提供促進が大都市圏への集中要因にもなりうるが、四国についてはその影響は低い。ベンダや自治体が地域のIT活用を主導していくことが求められる。
【カテゴリ4】東北
IT活用に必要な情報やノウハウの充実と共に、ベンダや自治体による地域のIT活用を活性化させる取り組みが求められる。
*付記などリリース詳細は添付の関連資料を参照