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東大とANA、「おもてなし」の科学的理解に向けた共同研究を開始
東京大学とANAは、『おもてなし』の科学的理解に向けた共同研究を開始します。
〜『おもてなし』を工学する新たな試みに挑戦します〜
東京大学人工物工学研究センタ−(※)(太田順教授、原辰徳准教授/サ−ビス工学)と、ANAホ−ルディングス傘下の株式会社ANA総合研究所(※)(本社:東京都港区、代表取締役社長 長瀬眞)は、『おもてなし』の科学的理解に向けた共同研究を開始します。
『おもてなし』に代表される日本の「顧客の接遇」は、2015年・世界経済フォ−ラムの『旅行・観光競争力指数』において世界一となり、あらためて日本の『おもなてし』の力が評価されました。また、2020年の東京オリンピック・パラリンピックや観光立国の実現に向け、日本ならではの『おもてなし』に注目が集まる一方で、『おもてなし』の概念は数値や指数などで表現する事が困難であり、非常に抽象的な理解に留まっています。
このような中、本共同研究では、『おもてなし』の源泉を相手に対する“気づき”と仮定し、3年連続で英国SKYTRAX(スカイトラックス)社(※)が運営するエアライン・スター・ランキングで最高評価を獲得しているANAの客室乗務員の機内における行動やチームワーク、客室乗務員間の会話などを、サービス工学(※)の研究手法を用い、『気づき』の能力習得プロセスや様々な場面での予測行動などを科学的に分析し、モデル化することを目指します。研究期間は2015年5月からの1年間とし、東京大学 太田順教授、原辰徳准教授が研究を主導し、ANA総合研究所は社員1名を研究活動に参画させるとともに、ANAグループにおける本研究の推進機能を担います。
この研究を通して得られる学術成果は、『おもてなし』の強化に取り組む国内の接客業や他の様々な分野において活用されることが期待されるとともに、ANAホールディングスにおいても、すべてのカスタマーフロントにおける人材育成に活用していく予定です。また、本研究成果を通じて、『おもてなし』がジャパンブランドとして世界により一層強く発信されることも期待されます。
※参考
東京大学 人工物工学研究センター(RACE):
1992年設立。藤田豊久センター長。学問領域の細分化による弊害を無くし、人間・人工物・社会の新たな関係の可能性を求め、従来の方法論にとらわれない取組みを行っている。2002年にはサービス工学に関する研究部門を国内において先駆けて設置。現在も、観光や看護などの新たな分野を対象に工学的アプローチと人文社会科学的アプローチとを融合させながら、サービス学、サービス工学研究を推進している。
株式会社ANA総合研究所:
激動の航空業界において、従来の常識に捉われることなく、航空事業に関連する幅広く横断的な戦略を調査研究するとともに、ANAグループで蓄積した知識を大学教育、地域活性化や観光振興等で活用し、航空会社の事業範囲に捉われず、産官学での連携を推進している。
サービス学会/サービス工学:
2012年に設立したサービス学会は、これまで個別的に取り組まれてきたサービスに関する広範な知識を体系化することで、様々な産業課題の解決に寄与し、サービスに関わる「社会のための学術」を構築することを目指している。サービス工学は、サービス学に関わる個別領域のひとつである。従来は勘や経験に頼りがちであったサービスに対して工学的な計測・分析・設計手法を導入することで、多様化する顧客ニーズへの適応や新しい価値の発見による満足度の高いサービスの創出、および従業員の負担軽減や能力の向上などを支援することを目的とする。
SKYTRAX社:
1989年創立、英国ロンドンに拠点を置く航空業界の格付け会社です。航空会社を格付けする「エアライン・スター・ランキング」のほか、SKYTRAX社独自のWEBアンケートなど各種顧客調査に基づき200社を超える航空会社を対象に評価・表彰を行う「ワールド・エアライン・アワード」も毎年行われている。