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NICT、低軌道衛星と地上との間で1.5ミクロン光による光衛星通信に成功

2015-06-09

低軌道衛星と地上との間で1.5ミクロン光による光衛星通信に成功
〜世界初!新しい誤り訂正符号の実装〜

【ポイント】
 ■1.5ミクロンレーザ光による低軌道地上間通信、50kg級超小型衛星に搭載し軌道上実証に成功
 ■大気ゆらぎ影響下で光衛星通信の誤り訂正等通信方式を実現、正常に機能することを実証
 ■周波数資源の制約を受けず、かつ、低コストで将来の光衛星通信の超大容量化を実現可能に


 国立研究開発法人 情報通信研究機構NICT、理事長:坂内 正夫)は、1.5ミクロンレーザ光を用いた低軌道衛星(*1)と地上間の通信のための超小型光通信機器(小型光トランスポンダ、SOTA(*2))の開発と宇宙空間における機能実証、さらに、独自に実装した誤り訂正機能を用いた伝送実験に世界で初めて成功しました。これらの実験は、2014年5月末に打ち上げられた50kg級の超小型衛星 SOCRATES(*3)に搭載して実施してきました。超小型衛星に搭載可能な光通信端末の成功は、装置開発としても画期的な成果です。


【背景】
 伝送するコンテンツの大容量化や観測衛星の高性能化により、衛星通信の超高速化、大容量化への要求が高まり、周波数資源の逼迫の制約を受けない宇宙光通信技術が将来の技術として期待されています。これまでの宇宙光通信ミッションでは、波長0.8ミクロンや1ミクロンのレーザ光が用いられてきました。地上光ファイバー網の通信において既に実用化されている1.5ミクロン帯のレーザ通信技術を宇宙光通信に適用できれば、宇宙通信の超高速化・大容量化が低コストで実現する可能性が期待されます。
 NICTでは、世界に先駆けて1.5ミクロン帯の低軌道衛星と地上間の通信技術の基礎研究と装置技術の宇宙環境における実証を目指して、超小型光通信機器である小型光トランスポンダ(Small Optical TrAnsponder:SOTA)を開発してきました。
 SOTAは、SOCRATES衛星に搭載されて2014年5月に打ち上げられ、衛星バスのチェックアウトに続き、8月以降、軌道上試験と実験を実施してきました。

 ※参考画像は添付の関連資料「参考画像1」を参照


【今回の成果】
 NICTは、1.5ミクロンの波長で通信をする光通信機器を、50センチ角の超小型衛星搭載用の通信装置として開発・実装してきました。このたび、光通信を用いて、衛星で撮影した地球の画像を地上に直接伝送することに成功しました。1.5ミクロン帯のレーザを用いた低軌道衛星と地上間通信の軌道上環境での実証としては世界で初めての成功です。また、50センチ角の超小型衛星に搭載可能な小型で低消費電力(質量 5.9kg、消費電力 15W)の装置開発を実現したことは、画期的な成果です。
 大気ゆらぎによるデータ消失やデータ伝送エラーは光通信特有の問題で、これを解決しなければ、実用的な衛星と地上間通信システムの実現は困難です。
 NICTでは、この問題を解決すべく、送信(衛星)側の演算負荷が小さく衛星搭載に適した誤り訂正符号(LDGM)をSOTAに実装しました。今回、衛星に搭載したカメラによる地球画像の伝送実験を行い、その結果、伝送路で発生した誤りを訂正し、正しい画像データに復号して受信できることを確認しました。
 電波以外の手段による衛星通信の実現により、周波数資源の逼迫による制約を受けずに大容量化が可能になることが期待されます。

 ※参考画像は添付の関連資料「参考画像2」を参照


【今後の展望】
 さらに、今後は、様々な応用実験の実施や実用システムの開発に取り組み、長期間にわたって軌道上で動作することを検証してまいります。
 また、SOTAは海外の関連研究機関からも多大な関心と実験参加の要望が寄せられており、順次、実験参加機会を提供することにより、世界の研究開発をリードするとともに成果の拡大を図ります。
 これらは、各機関との協力の下、研究成果として取りまとめられ、宇宙機関間のデータ通信方式に関する標準化組織である宇宙データシステム諮問委員会の勧告文書や技術標準に反映される予定です。


<用語解説>
 *1 低軌道衛星
  通常は、地表から350〜1400キロメートル程度の比較的低い高度の軌道で地球を周回する衛星、いわゆる地球観測や天文観測を目的とした衛星。静止衛星に比べ、地上から見た場合の移動速度が速く、捕捉追尾等光通信という視点からは静止衛星よりも技術的難度は高い。

 *2 小型光トランスポンダ SOTA(Small Optical TrAnsponder)
  SOTAは、超小型光通信機器で、望遠鏡直径は約5cm、質量は約6kgである。
  地上の光ファイバー網と同じ1.5ミクロンの波長の光を用いた光通信実験を低軌道衛星と地上間で行い、将来の宇宙光通信技術開発に必要な基礎的な知見を得るとともに、要素技術について軌道上実証を行うために開発された。

 ※参考画像は添付の関連資料「参考画像3」を参照

 *3 SOCRATES衛星(Space Optical Communications Research Advanced Technology Satellite)
  株式会社エイ・イー・エス(代表取締役社長:吉田 忠彦)が、小型衛星標準バス技術の実証と先進的なミッション/要素技術の軌道上実証機会の提供を目的として開発した50kg級超小型衛星。3軸姿勢制御やGPS受信機による軌道位置決定機能を有する。様々な目的のミッションに適用できる標準的な超小型衛星バス技術の確立を目指し、2014年5月24日にH−IIA ロケット 24号機の相乗り副衛星として打ち上げられた。打ち上げ後、衛星バスのチェックアウトにより正常に機能していることが確認され、同年8月以降、軌道上試験と実験を実施している


■補足資料

 ※添付の関連資料を参照



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