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アドバンテスト、テラヘルツ波による半導体回路解析技術を開発
テラヘルツ波による半導体回路解析技術を開発
サブテラヘルツ通信デバイス、3D実装半導体の開発に大きく貢献
株式会社アドバンテスト(本社:東京都千代田区 社長:黒江真一郎)は、短パルスのテラヘルツ波(*1)を活用した、サブテラヘルツ波帯(周波数100GHz〜1THz)デバイスの伝送特性(Sパラメータ(*2))解析技術、およびチップ内部の配線品質解析(TDT/TDR(*3))技術を開発ました。当技術は、既存の解析装置では技術的・コスト的に極めて困難だった、サブテラヘルツ通信デバイスの特性評価や、3D実装半導体の配線故障解析を可能とし、これら先端デバイスの開発と普及に貢献します。
(1)サブテラヘルツ波帯伝送特性解析技術
スマートフォンの普及などを背景に、無線通信のトラフィック量が近年急激に増大し、既存の無線通信用の周波数帯域では容量がひっ迫しつつあります。そこで、これまで利用が進んでいなかった、より高い周波数帯域であるサブテラヘルツ波帯を通信分野に活用するため、各国で研究開発が進められています。
※参考画像は添付の関連資料「参考画像1」を参照
超高周波帯のデバイス開発においては、アクティブデバイスの利得や入出力インピーダンス、さらに基板やコネクタを含むシステム全体での周波数特性の評価が必須であり、振幅と位相の伝達特性および反射特性をSパラメータとして測定します。しかし、既存のネットワークアナライザでは一度に測定できる帯域が100GHz程度に限定されるため、広帯域な評価を行う場合には装置構成を変え複数回の測定が必要となり、頻繁な校正作業、測定の長時間化、測定データの不連続性などが課題となっています。また測定コストも高価です。
当社が開発した新技術では、フェムト秒光パルスを信号源とし超広帯域光・電気変換プローブにより1.5THzまでのSパラメータを1回で測定可能です。このため校正作業も大幅に削減できます。
(2)高空間分解能チップ配線品質解析技術
電子機器の小型化・高速化を実現するため、半導体回路の微細化が進められてきましたが、近年は技術的な壁に直面しつつあります。そこで回路をパッケージングレベルで3次元に積層、接続する3D実装半導体が普及し始めています。
3D実装半導体では、配線の故障解析が課題となっています。多くの基板が積層されていることから、内部の配線不良(オープン、ショート、インピーダンス不整合)箇所をX線透視などで特定するのが困難なためです。一般的にはオシロスコープのTDR機能を用いて位置を計測しますが、微細な回路中で不良位置を正確に特定するためには極めて高い空間分解能が必要です。
※参考画像は添付の関連資料「参考画像2」を参照
当社の新技術は、テラヘルツ分光・イメージング解析システムで実績のある極めて低ジッタなフェムト秒光パルスを信号源とすることで、5μm以下の優れた空間分解能と同時に最大300mmの測定レンジを実現しました。また、特定した故障箇所をデバイスのCAD配線データ上にマッピングする機能も併せて開発しており、高密度かつ複雑化する配線の故障解析に最適なツールとなっています。
今回発表した新技術は、2015年度中(〜2016年3月末日)の製品化を予定しています。なお、2015年5月27日〜29日に東京ビッグサイトで開催される「ワイヤレス・テクノロジー・パーク(http://www.wt-park.com/)」に、当技術を活用した試作機を参考出展する予定です。
【注】
*1:テラヘルツ波
電波と光の境界に位置する100GHz〜10THzの周波数範囲の電磁波
*2:Sパラメータ
高周波デバイスの周波数特性を表すパラメータ。デバイスに信号を入力し、出力側に透過する信号、および入力側に反射する信号の周波数毎の強度を測定することで算出される
*3:TDT/TDR(Time Domain Transmissometry/Reflectometry:時間領域透過/反射)
伝送路に信号を入力し、出力側に透過する信号、および入力側に反射する信号の応答時間と波形を測定することで、伝送特性や破断点の有無などを解析する手法