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古河機械金属子会社、早期乳がんの発見に威力を発揮する「乳房用PET PEMGRAPH」を発売
早期乳がんの発見に威力を発揮する「乳房用PET PEMGRAPH」を発売
当社の100%子会社である古河シンチテック株式会社(福島県いわき市好間町上好間字小館20 社長:薄 善行)は、「乳房用PET(1) PEMGRAPH(ペムグラフ)」(以下、PEMGRAPH)を製品化し、平成26年12月に医療機器製造販売承認を取得し、平成27年4月より製造販売を開始します。
PEMGRAPHは、独自開発の時間分解能(2)に優れたシンチレータを採用し、検出器は空間分解能(3):2.5mm以下を実現しています。全身用PETと比較して分解能(3)が大きく向上したため、全身用PETでは困難とされていた早期乳がんの発見の可能性が大幅に高まります。
また、検出器は平行平板で構成された乳房専用の設計としており、これにより全身用PETに見られるリング形検出器と比べ、検出器を乳房により接近させることができ、大幅な感度向上が可能になります。さらに平板間隔を調整可能な構造とすることで、乳房の大きさに合わせて検出器間隔を適切に設定できます。また、呼吸等に伴う乳房の動揺を低減させるための軽く押さえる固定板を採用し、X線マンモグラフィに見られるような乳房の圧迫を必要とせず、被験者に痛みを生じさせない、または痛みを低減する負担軽減も図っています。
なお、PEMGRAPHは全身用PETによる検査の後に実施する乳がん検査について保険適用機器となっています。
古河シンチテックは平成27年4月よりPEMGRAPHの製造販売を開始し、初年度4台、年間10台の納品を目指します。
※参考画像は添付の関連資料「参考画像1」を参照
《開発背景》
現在、X線マンモグラフィによる乳がん検診が推奨されています。しかし、乳腺の発達した若い年齢層では検出能力が低下し、また、検査を行うためには乳房を圧迫する必要があることから痛みを伴うなどの問題点が指摘されています。そのため、国内での検診率は未だ低いのが現状です。
乳がん診断法の一つとして、放射性薬剤を用いた全身用PET/CT装置があります。全身用PET装置は、がんの早期発見のために広く普及し始めておりますが、実用上は10mm以下のがんの発見は、困難です。一方、乳がんは、発見が早期であるほど治癒率が高いことが知られており、10mm未満の乳がんを発見可能なPET装置の必要性は高いといえます。分解能の向上が実現できれば、乳がん検診に寄与できると期待されることから、当社では、独自のシンチレータ結晶開発と合わせて、NEDO(独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)の平成21年度 大学発事業創出実用化研究開発事業「極初期乳癌・リンパ節癌診断を拓く次世代高解像度PEM装置の開発」において、東北大学サイクロトロンラジオアイソトープセンター、神戸高専との共同研究により乳房専用PETを開発しました。PEMGRAPHは、その成果をベースに製品化した装置であり、当社からの技術移管により古河シンチテックにて製造販売を行うことになりました。
《特徴》
※添付の関連資料を参照
《今後の展望》
これまでの試験において、全身用PETでは発見が困難な大きさの乳がんも発見出来ており、その有用性が認められております。現在、乳がんによる死亡率が増加傾向にあり、精度の高い検査手法が求められていることから、被験者の負担を軽減して早期乳がんの診断を可能とするPEMGRAPHにより、乳がんの早期発見に貢献していきたいと考えております。
※参考画像は添付の関連資料「参考画像2」を参照
《用語説明》
(1)PET
英語でPositron Emission Tomography(PET)となることから、PETと略される。陽電子放射断層撮影装置。
(2)時間分解能
時間計測において、その精度を指す。PETでは、時間分解能の向上によりノイズ低減が図れ、より鮮明な画像を得ることが出来る。
(3)空間分解能(分解能)
空間または物体内で、2つの物体が2つと識別可能な距離を表す。PETにおいて空間分解能が向上すれば、より小さな癌の発見が可能となる。
(4)Pr:LuAG
Pr:Lu3Al5O12(プラセオジム添加ルテチウムアルミニウムガーネット)シンチレータ。東北大学吉川彰教授らにより見出されたシンチレータで、当社と東北大学が共同特許を取得している。エネルギー分解能や時間分解能に優れるためPET用に使用され、特に検出器間隔が小さいPEMGRAPHには最適なシンチレータである。
以上