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東京商工リサーチ、2014年(1−10月)の東北被災3県の新設法人調査結果を発表

2015-03-09

〔特別企画〕
2014年(1−10月) 東北被災3県 新設法人調査
〜震災後初めて新設法人数が減少に転じる〜


 2015年3月11日、東日本大震災から4年を迎える。岩手、宮城、福島の被災3県では、震災後から新設法人が前年を上回るペースで増加してきたが、2014年(1−10月累計)は3,277社(前年同期3,442社、前年同期比4.7%減)と震災以降で初めて減少に転じ、年間累計でも前年を下回る可能性が高くなった。
 増減率では2011−12年は全国平均を上回るペースで増加してきたが、2013年に被災3県(前年比3.6%増)と全国平均(同5.6%増)が逆転。2014年は、1−10月累計で前年同期比8.0%増の伸びをみせる全国平均とは対照的に被災3県では減少に転じ、新設法人数の伸び悩みが目立った。
 3県を内陸部と沿岸部でみると、内陸部(93市区町村)は2,210社(前年同期比0.08%増)に対し、沿岸部(38市区町村)は1,067社(前年同期1,251社、前年同期比14.7%減)だった。沿岸部が大きく減少し、新設法人の「沿岸部離れ」が顕著だった。また、産業別では復興工事需要を背景として、建設業の構成比が全国平均の約2倍になり、被災3県特有の現象がみられた。
 ※本調査は、東京商工リサーチ(TSR)の企業データベース(391万社)に収録されている新設法人データの中から、2010年1月−2014年10月までに設立された新設法人データを抽出し分析した。


■被災3県の新設法人 2014年は震災後初めて減少に
 2014年1−10月に岩手、宮城、福島の被災3県で設立された法人は、3,277社(前年同期3,442社、前年同期比4.7%減)だった。1−10月で比較すると震災発生翌年の2012年(3,267社)と同水準だが、増減率で2011年以降右肩上がりを続ける全国平均と対照的な推移を辿っている。

 *表・グラフ資料は添付の関連資料「表・グラフ資料1」を参照


■宮城が全体の半数 市区町村別では仙台市青葉区がトップ
 2014年1−10月に設立された法人の県別では、岩手499社(前年同期558社)、宮城1,614社(同1,632社)、福島1,164社(同1,252社)で、宮城が3県全体の約半分(構成比49.2%)を占めた。
 市区町村別では仙台市青葉区(383社)がトップ、次いで郡山市(284社)、いわき市(214社)、福島市(198社)、仙台市宮城野区(162社)、盛岡市(159社)と続く。東北最大の都市で復興の拠点でもある仙台市は5区合計では932社と圧倒的な社数を占めた。
 また、福島は上位5市区に3市(郡山、いわき、福島)がランクインした。この3市(696社)で福島全体の6割を占め、3都市圏での法人設立が集中した。


■被災3県の減少率が全国的にも際立つ
 増減率では、岩手が前年同期比10.5%減と減少率が最も大きく、次いで福島が7.0%減、宮城が1.1%減と続き3県すべてで減少し、全国平均(8.0%増)と大きな乖離がみられた。
 2014年1−10月累計で、新設法人数が前年同期を下回ったのは全国で7県のみだったが、岩手は全国の都道府県別での減少率が最大で、福島が3番目、宮城が6番目に大きく、被災3県の減少率が全国的にみても際立った。

 *表・グラフ資料は添付の関連資料「表・グラフ資料2」を参照


■沿岸部離れが進む
 被災3県で2014年1−10月に設立された法人の所在地は、内陸部(93市区町村)が2,210社(前年同期2,191社、前年同期比0.08%増)だったのに対し、沿岸部(38市区町村)は1,067社(同1,251社、同14.7%減)だった。都市部が多い内陸部は微増だったが、沿岸部の新設法人数が大きく落ち込んだ。各県ごとの沿岸・内陸別の構成比の推移でみても、軒並み沿岸部の構成比が低下。特に岩手沿岸部は2013年に比べて8.4ポイント低下と落差が際立った。

 *表・グラフ資料は添付の関連資料「表・グラフ資料3」を参照


■資本金別 「1,000万円未満」が9割
 2014年1−10月に被災3県で設立された法人の資本金別では、1百万円以上5百万円未満が1,600社(構成比48.8%)で最多。次いで、1百万円未満が594社(同18.1%)、5百万円以上1千万円未満が568社(同17.3%)と続き、1千万円未満の法人が全体の9割(同95.2%)を占めた。1千万円以上の減少傾向が特徴的で、小規模資本で事業化に踏み切るケースが増えている。

 *表・グラフ資料は添付の関連資料「表・グラフ資料4」を参照


■産業別 10産業のうち建設業の構成比が大幅に上昇
 被災3県で2014年1−10月に設立された法人の産業別は、サービス業他1,362社(構成比41.6%)がトップ。以下、建設業723社(同22.1%)、小売業330社(同10.1%)の順。産業別の構成比の内訳を見てみると、震災前の2010年との比較ではサービス業他が2.0ポイント低下(43.6%→41.6%)した一方、建設業は9.0ポイント上昇(13.1%→22.1%)した。
 前年同期(1−10月)比では10産業のうち、2014年は小売業(前年同期比17.8%増)や建設業(同12.9%増)が増加する一方、情報通信業(同19.8%減)や製造業(同19.5%減)が減少した。
 建設業は震災後、一貫して増加傾向にあるが、復興需要と関連が見出しにくい情報通信業や製造業などでは伸び悩みをみせており、産業によって法人設立の動きがまだら模様になっていることが浮き彫りとなった。

 *表・グラフ資料は添付の関連資料「表・グラフ資料5」を参照


■被災3県 建設業の構成比が全国平均の2倍
 2014年1−10月に全国で設立された法人の産業別の構成比では、トップがサービス業他の42.4%で、次いで建設業11.7%、小売業10.1%の順だった。
 被災3県では建設業の構成比は22.1%と、全国の約2倍となっていて、復興需要に関連して設立された特有の現象といえる。なお建設業の業種別の推移をみると、土木工事業166社(2010年55社)がトップで、次いで建築工事業108社(同54社)、一般土木建築工事業106社(同18社)の順。2014年は1−10月累計で震災前の2010年と比較して新設法人数は大幅に増加したが、とりわけ土木工事業の伸び率が建築工事業の伸び率よりも高い結果となった。整地や道路建設など初期の復興関連業務に携わる法人が多いこととの関連性がうかがえた。


■法人格別 合同会社の伸びが目立つ
 2014年1−10月に被災3県で設立された法人格別で最も多かったのは、「株式会社」の2,428社(構成比74.1%)で、4社に3社が株式会社だった。以下、「合同会社」の445社(同13.6%)、「一般社団法人」の149社(同4.5%)の順。震災前の2010年から比較すると「株式会社」の構成比が低下する一方で、「合同会社」が大幅に上昇をみせ、設立のしやすさから選択されたことがうかがえる。また、「一般社団法人」の構成比も2倍にアップした。

 *表・グラフ資料は添付の関連資料「表・グラフ資料6」を参照


■地域復興に欠かせない起業支援
 東日本大震災から4年を目前にして、2014年1−10月累計の被災3県の新設法人数は初めて減少に転じ、増減率でも2013年を境に全国平均を下回るなど、起業自体の停滞が見られた。また、内陸部よりも沿岸部での設立が減少。産業別では建設業、特に整地作業などの土木工事業が目立った。
 震災後、重点的に進められてきた復興事業は、がれき撤去から始まり、港湾関連など沿岸部の整地、道路整備が行われてきた。津波被災地域では三陸沿岸の国道45号線の通行再開や三陸鉄道の全線復旧がなされ、原発事故による帰還困難区域内でも2014年9月に国道6号線が限定的に再開した。2015年3月1日には常磐自動車道が全線開通するなどインフラ復旧は着々と進んでいる。
 一方、震災後4年を迎えるが、住む場所を失った被災者は、就業の場や子供の教育などを勘案して地元へ戻らないケースも出てきている。産業別では復興需要を見越した建設関連の新設法人の構成比が高く、全国平均とは異なった推移を示したが、人口や就業者の減少が建設業以外の産業の新設法人の構成比低下に繋がっている可能性も否定できない。
 民間研究機関の日本創生会議では、2040年までに行政機能の維持が難しくなるとみられる自治体を「消滅可能性都市」と定義して試算結果を公表。福島は集計対象外とされたが岩手、宮城の被災2県でも多くの自治体が該当した。「地方創生」は安倍政権の重要施策に掲げられているが、労働力の受け皿ともいえる新設法人の減少は今後、被災3県にとって大きな課題として浮上する可能性もある。被災地域の産業復興の担い手といえる新設法人の減少を食い止めるべく、事業意欲を呼び起こし、起業を後押しするようなさらなる行政側の対応も求められている。



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