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タカラバイオ、白血病に対する遺伝子治療の臨床研究にて第1例目に遺伝子導入細胞を投与

2010-10-19

白血病に対する遺伝子治療の臨床研究において
第1例目に遺伝子導入細胞を投与



 タカラバイオ株式会社(社長:仲尾功一)と独立行政法人国立がん研究センター中央病院とが共同で実施している白血病に対する遺伝子治療の臨床研究において、10月13日に第1例目の被験者に遺伝子導入細胞が投与されました。

 本遺伝子治療は、高リスク造血器悪性腫瘍患者にハプロタイプ一致造血幹細胞移植を行ったあと、感染症をはじめとした造血幹細胞移植の合併症を軽減しつつ重篤な移植片対宿主病(GVHD)が発症した時の沈静化の手段として、HSV−TK遺伝子導入ドナーリンパ球を追加輸注(Add−back)するというものです。これにより、適切なドナーが見つからないため、造血幹細胞移植を行えない造血器悪性腫瘍患者に新たな治療法が提供できると期待されます。

 当社とモルメド社(イタリア)は相互にライセンス契約を締結し、当社がアジアにおける造血器悪性腫瘍を対象とするHSV−TK遺伝子治療の独占的な商業化権を保有する一方、モルメド社は欧州と米国における当社の遺伝子導入技術・レトロネクチン法の非独占的実施権を保有しています。

 HSV−TK遺伝子治療について、モルメド社はイタリアで治験(第III相)を、当社は国立がん研究センターと共同でドナーリンパ球輸注(DLI)療法の治験(第I相)を実施中です。当社は、これらの治験や臨床研究から得られる成果を最大限利用し、日本におけるHSV−TK遺伝子治療の商業化に向けた臨床開発を推進していきます。


【臨床研究の概要】
 名称:「ハプロタイプ一致ドナー由来T細胞除去造血幹細胞移植後のHSV−TK遺伝子導入Tリンパ球"Add−back"療法」
 対象:HLA適合ドナーがいない高リスク造血器悪性腫瘍
 評価項目:安全性、免疫再構築、GVHD発症時の制御能等
 症例数:10例


●当資料取り扱い上の注意点
 資料中の当社の現在の計画、見通し、戦略、確信などのうち、歴史的事実でないものは、将来の業績に関する見通しであり、これらは現時点において入手可能な情報から得られた当社経営陣の判断に基づくものですが、重大なリスクや不確実性を含んでいる情報から得られた多くの仮定および考えに基づきなされたものであります。実際の業績は、さまざまな要素によりこれら予測とは大きく異なる結果となり得ることをご承知おきください。実際の業績に影響を与える要素には、経済情勢、特に消費動向、為替レートの変動、法律・行政制度の変化、競合会社の価格・製品戦略による圧力、当社の既存製品および新製品の販売力の低下、生産中断、当社の知的所有権に対する侵害、急速な技術革新、重大な訴訟における不利な判決等がありますが、業績に影響を与える要素はこれらに限定されるものではありません。


<参考資料>
 【語句説明】
  ・造血器悪性腫瘍
   血液のがんの総称で、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫等が含まれます。

  ・ハプロタイプとHLA
   HLA(human leukocyte antigen:ヒト白血球抗原)は、自己と非自己を区別して認識する最も重要なヒト白血球上の抗原で、ヒトの6番染色体に存在し、一塊(ハプロタイプ)として遺伝します。ヒトには多数のHLA遺伝子が存在しますが、移植時にHLA適合性として検査されているのは、通常A、B、DRの3種類の遺伝子座由来の抗原です。父母から1組ずつのハプロタイプを受け継ぐので、親子の間ではハプロタイプが一致(多くの場合、6座のHLA遺伝子座のうち2〜3座が不一致)します。また、兄弟姉妹の間では、1/4の確率でHLAが一致し、1/2の確率でハプロタイプが一致します。

  ・ハプロタイプ一致造血幹細胞移植
   造血幹細胞移植は造血器悪性腫瘍に対する有力な治療法です。拒絶や移植片対宿主病(GVHD)を防ぐために、通常はHLA完全一致又は1座不一致のドナーが選択されます。しかし、血縁者、骨髄バンク、臍帯血バンクなどから適切なドナーが見つからない場合も少なくありません。このようなケースには、血縁者から高い確率でドナーを見出せるハプロタイプ一致造血幹細胞移植は有力な選択肢となりえますが、以下の課題を解決する必要があります。
ドナーから採取した造血幹細胞にはリンパ球が多く含まれるので、HLAの不一致度が高いハプロタイプ一致ドナーから造血幹細胞移植を行う際には、重篤なGVHDを予防するために造血幹細胞を純化しておく必要があります。しかし、この移植直後の患者において免疫系はほとんど機能しないので、感染症のリスクが非常に大きくなります。そこで純化した造血幹細胞移植を行った後に、免疫系を回復させるために比較的少数のドナーリンパ球を追加輸注(Add−back)することが試みられましたが、ドナーリンパ球による重篤なGVHDが問題となっています。

  ・HSV−TK遺伝子導入ドナーリンパ球によるAdd−back療法
   単純ヘルペスウイルス1型チミジンキナーゼ(HSV−TK)は、ヒトが持つチミジンキナーゼとは異なり、ガンシクロビルなどの抗ウイルス剤をリン酸化し、細胞毒性を有する最終産物を生成します。従ってガンシクロビルによりHSV−TK遺伝子を発現する細胞のみを死滅させることが可能です。このことから、HSV−TK遺伝子は自殺遺伝子と呼ばれています。
   本遺伝子治療では、ハプロタイプ一致ドナー由来の造血幹細胞を純化してから患者に移植したあと、HSV−TK遺伝子導入ドナーリンパ球をAdd−backします。重篤なGVHDが発症した場合には、ガンシクロビルを投与することによりドナーリンパ球を除去し、GVHDを沈静化します。これにより、免疫系の回復を図りつつ重篤なGVHDを回避することが可能となります。

  ・移植片対宿主病(GVHD)
   移植したドナー由来のリンパ球が患者の細胞や組織を異物とみなして患者自身を攻撃する免疫反応です。造血幹細胞移植にしばしばみられる合併症であり、重篤なGVHDが発症すると生命にかかわることもあります。

  ・レトロネクチン(R)
   レトロネクチン(R)は、ヒトフィブロネクチンと呼ばれる分子を改良した組換えタンパク質です。当社はレトロネクチン(R)に関する日本を含む世界各国における物質特許を保有しています。レトロネクチン(R)を用いたレトロウイルスによる遺伝子導入法は、レトロネクチン法として知られており、いまやレトロウイルスによる遺伝子治療の臨床研究のスタンダードとなっています。そして、当社はレトロネクチン(R)の新たな機能として、リンパ球の培養を増強する効果を発見しています。

  ・臨床研究
   疾病の治療方法等の改善を目的として、人を対象として実施される医学研究のことを臨床試験と言いますが、治験に該当しない臨床試験を臨床研究と呼ぶことがあります。臨床研究から得られるデータは、原則として薬事承認申請には使えません。臨床研究に関する様々な指針を順守し、実施する必要があります。例えば遺伝子治療臨床研究には、「遺伝子治療臨床研究に関する指針」があります。

  ・治験
   医薬品や医療機器の薬事承認を申請するための安全性や有効性データの取得を目的として、企業や医師が主体となって実施される臨床試験のことです。企業が医療機関に依頼する治験(企業治験)と医師が自ら実施する治験(医師主導治験)があります。治験を実施する際には医薬品医療機器総合機構への治験届の提出や「医薬品の臨床試験の実施の規準に関する省令」(GCP)の遵守などが義務付けられています。


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