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東北大と阪大、筋細胞に光照射で細胞の成長を促進し収縮能を獲得させる技術を開発

2015-02-13

光で筋肉を再生!
〜ALSなどの難病治療に対する新たな技術として期待〜


■本研究成果のポイント
 ●筋細胞に光を照射することで、細胞の成長を促進し、収縮能を獲得させる技術を開発。
 ●作製された筋細胞は、光に応答して収縮運動することを発見。
 ●筋萎縮性側索硬化症(ALS)など、極度の筋力低下を伴う重篤な難病患者への新たな治療技術として期待。


■概要
 東北大学大学院生命科学研究科の八尾寛教授、石塚徹講師、大阪大学大学院工学研究科の浅野豪文助教(現 東京医科歯科大学・助教/大阪大学大学院工学研究科・招へい教員)、森島圭祐教授(大阪大学臨床医工学融合研究教育センター 創成医工情報学研究部門・部門長/教授(兼))の研究グループは、緑藻の一種・クラミドモナスで発現し、機能している光応答性イオンチャネル(チャネルロドプシン(注1))の改変体を筋芽細胞(注2)に組み込むことで、光に対して感受性を持つ筋細胞を開発しました。また、その細胞に光を照射することで、収縮能力を獲得した骨格筋細胞に成熟させることに成功しました。これは、細胞分化を直接光操作することができる技術であり、従来の電気刺激や薬剤刺激に代わる新たな技術として期待されます。また、本研究で開発した技術を適用することで、今後、筋萎縮性側索硬化症(ALS)など、極度の筋力低下を伴う重篤な難病患者に対し、失われた骨格筋の機能を補完・回復できる新しい治療法の開発が見込まれます。
 本研究成果は、2月9日(月)午前10時(英国時間)に英国ネイチャー出版グループのオンライン学術誌「Scientific Reports」に掲載予定です。


■研究の背景と成果
 未分化な細胞が分化・成熟する過程が活動依存的であることが様々な細胞や組織において報告されており、骨格筋においても収縮能を獲得するには電気刺激や張力などの外部からの刺激が必要であることが知られています。従来の液性因子(タンパク質)による細胞培養法では刺激に対して収縮運動する細胞が少なく、骨格筋を対象とした研究は主に動物実験で調べられてきました。
 研究グループでは、チャネルロドプシンの改変型の一つである、チャネルロドプシングリーンレシーバー(ChRGR)(注3)の遺伝子を遺伝子工学技術を用いて筋芽細胞に組み込むことで、光に対して感受性を持つ筋細胞を開発し、培養中の細胞に対して継続的に青緑色光を照射しました。その結果、光照射を与えた細胞では細胞内にある収縮の最小構成単位であるサルコメア(注4)構造の発達が促進されることを確認しました。また、このように発達した筋細胞が、光刺激に応答して収縮することが分かりました。その効果はChRGRを発現する細胞のみに特異的であることが認められました。さらに検討を進めた結果、一定の周期的なリズムを持ったパルス刺激(1 Hz)が効率的に成熟した筋細胞への分化を亢進させること、この現象は細胞内カルシウムの振動が重要であることが示唆されました。
 このように本研究で開発された技術は、光を照射するだけで特定の時間に、特定の細胞または細胞群を活性化させて細胞の成長・成熟を促進させるものとして注目されます。さらに、光照射に応答して収縮する能力を獲得した骨格筋細胞やマイクロマシンの駆動源となるバイオアクチュエータを効率よく製造するものとして期待されます。

 *図1は添付の関連資料を参照

■本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)
 筋肉が関与する疾患には筋萎縮性側索硬化症(ALS)(注5)や遺伝性ニューロパチー(注6)などが挙げられ、いずれも極度の筋力低下を伴う重篤な難病です。神経の病変を原因とするこれらの疾患に対して、現在のところ有効な予防法や治療法はありません。光で制御できる光応答性骨格筋は光の強度や周波数、持続時間を自在にコントロールすることで様々な細胞活動を与えることができ、筋組織の形成や再生機構を解析できる有用なモデルとなります。さらに、患者自身のiPS細胞やMUSE細胞などの多能性幹細胞から得られた筋芽細胞に、本研究で開発した技術を適用すれば、近い将来、神経入力の代わりに光照射することにより、失われた骨格筋の機能を補完・回復できる新しい治療法の開発が見込まれます。

■特記事項
 本研究成果は、2月9日(月)午前10時(英国時間)に英国ネイチャー出版グループのオンライン学術誌「Scientific Reports」に掲載予定です。
 【論文タイトル】Optogenetic induction of contractile ability in immature C2C12 myotubes
 【著者】Toshifumi Asano, Toru Ishizuka, Keisuke Morishima, Hiromu Yawo
 また、本研究は、文部科学省科学研究費、公益信託 「生命の彩」ALS研究助成基金、大阪大学プロジェクトMEET研究助成、文部科学省プロジェクト”医・工・情報連携によるハイブリッド医工学産学連携拠点整備事業”の支援により行われました。
 特許第5544659号「改変された光受容体チャネル型ロドプシンタンパク質」発明者:八尾寛,石塚徹.特許権者:国立大学法人東北大学(登録日:平成26年5月23日)


 *用語説明は添付の関連資料を参照



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