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帝国データバンク、円安に対する企業の意識調査結果を発表

2015-01-22

特別企画:円安に対する企業の意識調査
円安をデメリットと認識する企業が半数に迫る
〜円安進行が人件費抑制につながる可能性も〜


<はじめに>
 円相場は2014年12月に終値で1ドル=120円を突破。同年夏まで100円台前半で推移していた相場は短期間で急激に円安が進行した。2015年に入ってもドル円相場の変動幅は大きく推移している。短期間での想定を上回る為替レートの変動は、海外との直接取引がある企業にとどまらず、間接的に輸入製品、原材料・資源を利用している企業にも大きな影響を与える可能性がある。
 そこで、帝国データバンクは、円安に対する企業の意識について調査を実施した。なお、本調査は、TDB景気動向調査2014年12月調査とともに行っている。

 ※調査期間は2014年12月15日〜2015年1月5日、調査対象は全国2万3,324社で、有効回答数は1万583社(回答率45.4%)
 ※本調査における詳細データは、景気動向調査専用HP(http://www.tdb-di.com/)に掲載している


<調査結果(要旨)>
 1.円安の業績への影響について、46.2%の企業が「デメリットの方が大きい」と回答
 2.業界別で、「デメリットの方が大きい」と回答した企業は、内需型企業が多い『小売』が62.2%と最も高く、『農・林・水産』(57.4%)が続いた。さらに細かくみると、海外工場での製造品や原材料などの輸入ウエイトが高い業種で80%以上となった
 3.業界別で、「メリットの方が大きい」と回答した企業は、『製造』が11.7%と最も高く、『サービス』(6.7%)、『運輸・倉庫』(6.6%)と続いた。さらに細かくみると、輸出関連企業のほか、外国人観光客の受け入れが増加している旅館・ホテル業などの構成比が高かった
 4.地域別で、「デメリットの方が大きい」と回答した企業は、『北海道』が52.1%と最も高く、10地域のなかで唯一、半数を超えた
 5.最近の円安に対する対策について、「特に何もしていない」が36.0%(複数回答、以下同)と最も高く、「燃料費等の節約」(26.6%)が続いた。「人件費の抑制」(10.8%)といった回答もあり、円安進行が従業員の人件費抑制につながる可能性も出ている


1.円安の業績への影響について、46.2%の企業が「デメリットの方が大きい」と回答
 円安進行が業績に与える影響について尋ねたところ、46.2%の企業が「デメリットの方が大きい」と回答した。他方、「メリットの方が大きい」と回答した企業は7.2%にとどまった。
 「両者はほぼ同等」は25.8%、「影響はない」「分からない」はそれぞれ13.4%、7.4%となった。

 *グラフ資料は添付の関連資料「グラフ資料1」を参照

 企業からは、「輸出よりも原材料の輸入金額が多いので円安は利益を押し下げる」(冷凍調理食品製造、広島県)、「燃料や大半の建材が輸入品のため工事原価の上昇で収益が減少している」(一般土木建築工事、山形県)といった原材料価格の上昇や利益の減少といった円安のデメリットを危惧する意見が多かった。一方、「円高により産業空洞化が進んだ。国内産業を立て直すには円安しかない」(金属加工機械製造、滋賀県)、「1ドル110円から120円の水準が続けば、海外に出て行った製造拠点を国内に戻すメリットがある」(金属プレス製品製造、静岡県)など、円安基調を見込んだ製造拠点の国内回帰にともなう受注増をメリットとしてとらえる意見もあった。

 *グラフ資料は添付の関連資料「グラフ資料2」を参照

 業界別でみると、「デメリットの方が大きい」とみている企業は、内需型企業が多い『小売』が62.2%と最も高く、『農・林・水産』(57.4%)、『卸売』(53.4%)と続いた。さらに細かくみると、婦人・子供服といった海外製品の輸入販売などを含む「繊維・繊維製品・服飾品卸売」(83.5%)、輸入食材を利用する「飲食店」(81.6%)、「飲食料品・飼料製造」(80.2%)など、海外工場での製造品や原材料などの輸入ウエイトが高い業種で80%以上となった。

 *表資料は添付の関連資料「表資料1」を参照

 一方、「メリットの方が大きい」と回答した企業は、『製造』が11.7%と最も高く、『サービス』(6.7%)、『運輸・倉庫』(6.6%)と続いた。
 さらに細かくみると、鉄スクラップの輸出などを手がける「再生資源卸売」(28.9%)、建設機械や工作機械をはじめとした「機械製造」(23.3%)、自動車・同部品製造などの「輸送用機械・器具製造」(21.5%)といった輸出関連企業のほか、外国人観光客の受け入れが増加している「旅館・ホテル」(20.0%)が20%以上となった。

 *表資料は添付の関連資料「表資料2」を参照

 地域別でみると、「デメリットの方が大きい」と回答した企業は10地域のなかで『北海道』(52.1%)が最も高く、『近畿』(49.9%)、『四国』(49.1%)が続いた。
 一方、「メリットの方が大きい」と回答した企業は、『北関東』(8.4%)が最も高く、『近畿』(8.2%)、『中国』(8.1%)が続いた。
 食料品製造を始めとした内需型製造業の割合が高い『北海道』は10地域のなかで唯一「デメリットの方が大きい」とする企業が半数を超えており、円安進行が企業業績の足かせとなる懸念がある。

 *表資料は添付の関連資料「表資料3」を参照


2.円安への対策「特に何もしていない」が3割超、「燃料費等の節約」が26.6%
 最近の円安に対して、具体的にどのような対策を行っているか尋ねたところ、「特に何もしていない」が36.0%(複数回答、以下同)で最も高く、「燃料費等の節約」(26.6%)が続いた。次いで「原材料やエネルギーコスト上昇分の販売価格への転嫁」(20.0%)、「仕入先・方法の変更」(16.7%)、「既存の仕入価格の変更」(12.2%)となった。
 その他の対策として「既存設備の省エネ関連商品への切り替え」(10.7%)など設備投資のプラス要素もある。一方、「人件費の抑制」(10.8%)、「正社員の採用を抑制(非正規社員を採用)」(5.1%)といった回答もあり、円安進行が人件費抑制につながる可能性も出ている。
 規模別では、大企業が「為替予約等によるリスクヘッジ」(14.1%)、「既存設備の省エネ関連商品への切り替え」(12.3%)などの対策を模索する一方、小規模企業については、それぞれ4.5%、7.4%にとどまり、企業規模で対策の違いがみられた。
 「燃料費等の節約」を地域別でみると、寒冷地の『北海道』(42.2%)の構成比が10地域のなかで最も高く、『北関東』(39.1%)、『東北』(37.2%)が続いた。

 *表資料は添付の関連資料「表資料4」を参照


3.まとめ
 円安進行が業績に与える影響について、デメリットの方が大きいとする企業が半数に迫る一方、メリットの方が大きいとする企業は1割にも満たないことが今回の調査でわかった。
 円安で価格競争力を高め、輸出の増加や為替差益など業績面で恩恵を受けている企業もある。しかしながら、国内展開が中心の内需型企業にとっては、原材料価格やエネルギー、輸送コストの上昇といった利益を押し下げる要素が山積している。
 また、今回の調査のなかで注目されるのが、「人件費の抑制」「正社員の採用を抑制(非正規社員を採用)」という回答である。円安が招くコスト高に対して人件費抑制による対応を模索する企業は1割に及んだ。円安が進行するなか、採算確保の手段として企業が長期にわたって人件費の圧縮を進めた場合、個人消費を停滞させる要因となり、景気の下振れにつながる可能性もある。
 リーマン・ショック以降の円高期においても、大手製造業を中心としてグローバル市場での販売競争や安価な人件費を求め、海外生産体制の構築が促されてきた。ここにきて、昨今の急激な円安進行および今後の円安継続を見込んで、海外生産を国内回帰させる動きが一部の企業でみられている。しかし、短期間での為替レートの大幅な変動は円滑な企業活動にとって大きなリスク要因でもある。長期的に一定の幅で為替相場が推移することが担保できない状況下において、為替変動に対応できる仕組みづくりを企業は模索していく必要がある。


「調査先企業の属性」

 *添付の関連資料を参照



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