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慶大、1素子の受信アンテナでのMIMO伝送システムの実験に成功
1素子の受信アンテナでのMIMO伝送システムの実験に成功
−ウェアラブル端末への応用に期待−
慶應義塾大学大学院理工学研究科の矢部達郎(修士課程2年)、土井寿人(修士課程2年)、松岡暉(修士課程1年)および同理工学部電子工学科の眞田幸俊教授らの研究グループは、1素子の受信アンテナでのMIMO伝送を行う実験に成功しました。
従来のMIMO伝送で2〜4素子の受信アンテナが必要なところ、本研究成果により1素子の受信アンテナでほぼ同等の無線通信特性を実現しました。これによりウェアラブル端末などの小型端末においてもMIMO伝送による高速通信が実現可能です。
本研究の成果は、2014年12月1日(月)−4日(木)に開催されるInternational Symposium on Intel l igent Signal Processing and Communication Systems 2014で、また2014年12月5日(金)に東京国際フォーラムで開催される第15回慶應科学技術展にて、それぞれ発表されます。
1.本研究のポイント
・受信アンテナ素子数を1素子に削減しながら従来とほぼ同等の伝送特性を維持する受信信号処理の開発に成功。
・受信アンテナ数を削減することによりウェアラブル端末のような小型端末にも搭載可能。
・受信アナログ回路数の削減により受信機の消費電力を低減することが可能。
2.研究背景
総務省の2016年度情報通信白書によると、ウェアラブル端末の普及台数は2020年度には日本で600万台、米国で1500万台を超えると予想されています。その中でメガネ型端末は20%程度を占め、エンターテイメントや業務支援システムなどへの応用が期待されています。これらの端末は小型でバッテリサイズも小さいことから、無線通信システムにおいて通信速度を維持しながらその小型化・低消費電力化が必要です。
3.研究内容・成果
眞田教授らは通信速度を維持しながら受信アンテナ数ならびに受信回路を削減する信号処理方式の開発に成功しました。また開発した信号処理方式をソフトウェア無線機に実装し、実証することに成功しました。
従来のMIMO(*1)システムでは複数の受信アンテナが必要でした。これに対して本研究成果を適用した受信端末では、受信アンテナ数を1つに低減できます。開発した信号処理方式ではこのときの通信速度の低下をごくわずかに抑えることに成功しました。
※参考画像は添付の関連資料を参照
4.本研究成果の意味
必要な受信アンテナ数を削減することによって、無線受信システムのサイズを小型化しメガネ型ウェアラブル端末などへの搭載を可能にします。また無線受信回路を削減することによって、消費電力を低減します。
5.今後の展開
今後はより多くのアンテナからの無線信号の受信に対して、特性劣化を抑えながら受信アンテナ数を削減する方式を検討します。
本研究の一部は総務省戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE 141303004)として行われました。
<用語説明>
*1:MIMO
Multi−Input Multi−Output:多入力多出力方式。複数の送信アンテナで並列に信号を送信し、同数のアンテナで受信することによって通信速度を増加する無線伝送方式。