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ファンケル、温度とpHの両方に応答するデュアル応答性ナノカプセルを開発

2014-11-29

スキンケア化粧品の機能実感を高める新技術
温度とpHの両方に応答する
デュアル応答性ナノカプセルを新開発<特許出願中>
第28回IFSCC Congress(於:フランス共和国 パリ)で発表


 株式会社ファンケル(本社:横浜市中区、代表取締役社長執行役員:宮島和美)は、総合研究所での基礎研究を通じ、スキンケア化粧品の機能実感を高める技術開発を目指し、特定の2つの条件が揃ったときに物性を変化させるナノカプセルの開発および、その物性をより厳密にコントロールできる技術開発を進めてまいりました。
 この度、大阪府立大学大学院 工学研究科を中心とするグループと当社で共同研究を続けた結果、温度やpHに応じて、親水性から疎水性(*1)に変化する「応答性ポリマー」を合成し、ポリマーを生体類似成分で構成されたナノカプセルの表面に吸着させた「デュアル応答性ナノカプセル」の開発に成功いたしました(図1)。≪特許出願中≫当社ではこの技術を応用し、有効性が高く、安定性が低い機能成分を配合した化粧品などの開発を検討してまいります。
 なお、本研究の成果は本年10月27日から30日にフランス共和国(パリ)にて行われた「第28回IFSCC Congress(*2)」で「Development of Dual−Signal Responsive Liposomes Using pH and Thermo−sensitive Polymers」としてポスター発表いたしました。

 ※図1は添付の関連資料を参照


 以下に研究の概要および結果をお知らせいたします。


■研究の概要

<研究の経緯>
 近年、医療分野では目的の場所、適切なタイミングで薬物を放出させる技術(Drug Delivery System:DDS)の研究が盛んに進められています。化粧品分野で応用する場合は、皮膚に塗布した時の環境の変化に応じて有効成分を放出し、効果的に皮膚中に浸透させることができることが期待されます。

<研究の目的>
 そこで当社では、特定の2つの条件が揃ったときに物性を変化させる『デュアル応答性ナノカプセル』の開発と、その物性をより厳密にコントロールする技術の開発を目指し、大阪府立大学大学院 工学研究科を中心とするグループと共同研究を続けてまいりました。
 具体的には、皮膚表面の温度(36℃付近)と表面のpH(弱酸性)の変化に応じて、内包する機能性成分の放出挙動をコントロールできるナノカプセルの開発を目指しました。

<研究の方法>

■応答性ポリマーの概要
 試薬の種類、濃度、温度条件、反応時間等を変え、様々な条件で合成を試みた結果、目的とする温度およびpHに応じて、親水性から疎水性へ変化するポリマーを合成することに成功いたしました。
このポリマーは、温度センサー部分、pHセンサー部分、ナノカプセルへの吸着部分で構成されています。特定の温度とpHになった時に、ポリマーが疎水性に変化し、ナノカプセルの表面が不安定になり、内包成分を放出すると考えております。(図2)

 ※図2は添付の関連資料を参照


■デュアル応答性ナノカプセルの機能性評価
 合成した応答性ポリマーについて様々なpHにおいて溶解性を評価したところ、中性では水溶性のままで、弱酸性から酸性にかけてpHの低下とともに疎水性になることが確認できました。
 次に、デュアル応答性ナノカプセルからの内包成分の放出挙動におけるpHと温度の影響を調べました。カプセルの応答性は、モデル成分を内包させたナノカプセルを作製し、温度およびpHを変化させた際の放出量で確認しました。

 その結果、応答性ポリマーを吸着させていないナノカプセルは、いずれのpH、温度においても内包成分を放出しませんでした。一方で、応答性ポリマーを吸着させたナノカプセルは、弱酸性と体温以上の環境において内包したモデル成分を放出し、さらに温度上昇に伴い放出が促進されることが分かりました(図3)。

 ※図3は添付の関連資料を参照


<研究の結果>
 温度やpHに応じて、溶解性が変化する「応答性ポリマー」を合成し、ポリマーを生体類似成分で構成されたナノカプセルの表面に吸着させた、「デュアル応答性ナノカプセル」の開発に成功しました。≪特許出願中≫
 この技術の応用により、安定配合が難しい美容成分を配合し、美容効果を発揮できる化粧品の開発が可能になると考え、今後この技術を、有効性が高く、安定性が低い機能成分を配合した化粧品などへの応用を検討しています。また、カプセルは生体類似成分で構成されているため、肌へのなじみの向上なども、付加効果として期待できると考えております。


<研究発表と今後の展開>
 ファンケル総合研究所では、本研究の成果を本年10月27日から30日にフランス共和国(パリ)にて開かれた「第28回IFSCC Congress」で「Development of Dual−Signal Responsive Liposomes Using pH− and Thermo−sensitive Polymers」としてポスター発表いたしました。さらに、2014年11月28日に行われるIFSCCの国内研究発表会でも発表する予定です。
 当社では今後も、効果実感を高めたスキンケア化粧品の開発に取り組んでまいります。


■研究者のコメント
 IFSCCでの発表ではフランス、アメリカ、中国、日本など世界各国の方々にブースにお立ち寄りいただき、興味や関心を持って頂けました。会全体の発表を見るとナノカプセルに関する発表は少ないと感じましたが、質問を数多く頂戴し、興味を抱いている方は多く、世界が注目している分野であることを改めて実感いたしました。今後も引き続き、安全性に優れ、効果実感が高い化粧品の開発を続けていきたいと思います。

 Profile 山崎 奈穂子(やまざき なおこ)
 (株)ファンケル 総合研究所 化粧品研究所 スキンケア開発グループ 所属。
 2004年4月に(株)ファンケル入社。以来、化粧品の機能性評価やスキンケア化粧品の処方開発に従事。効果実感が高いスキンケア化粧品の開発に取り組んでいる。

 ※参考画像は添付の関連資料を参照


【用語解説】
*1 親水性・疎水性
 親水性とは、水に溶解しやすい、あるいは水に混ざりやすい性質です。一方で、疎水性とは、水に溶解しにくい、あるいは水と混ざりにくい性質のことです。

*2 IFSCC Congress
 日本化粧品技術者会の母体組織である国際化粧品技術者連盟(The International Federation of Societies of Cosmetic Chemists、略してIFSCC)は世界各国の化粧品技術者会の連合組織。IFSCCは化粧品開発のための諸活動を国際規模で行っており、この行事のうち、最大なものは各国の化粧品技術者が一堂に介して、研究成果を発表し、討論することを目的として開催される学術大会です。この学術大会には西暦偶数年に開催されるCongressと西暦奇数年に開催されるConferenceに分けられ、当社は本研究に関し2014年のCongressにて発表しました。




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