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東北大、バイオ電流で速く効く・貼ると発電する皮膚パッチを開発

2014-11-22

バイオ電流で速く効く!貼ると発電する皮膚パッチを開発
酵素によるバイオ発電で薬剤の浸透を加速


 東北大学大学院工学研究科の西澤松彦教授の研究グループは、酵素によるバイオ発電の技術を利用して、体に貼ると微弱な電流が発生し、皮膚を通した薬の浸透が促進される「バイオ電流パッチ」を開発しました。生体・環境に優しい有機材料のみで造られたバイオ電流パッチは、軽く・薄く・柔らかく、そして使用後はそのままゴミ箱に捨てることができます。皮膚への薬剤浸透が電流で加速される効果は以前から知られており、病院や美容クリニックなどで利用されてきました。皮膚パッチに自ら発電する能力を搭載し、外部電源を不要にしたことで、家庭用の使い捨てセルフケア用品として普及する可能性が生まれました。
 本研究は、地域イノベーション戦略支援プログラム「知と医療機器創生宮城県エリア」の一環であり、成果の一部が2014年11月17日にバイオマテリアル分野の有力誌「Advanced HealthcareMaterials」にオンライン掲載されました。

<貼ると通電開始!薬が高速で浸み込むバイオ電流パッチ>

 ※参考画像は添付の関連資料を参照

【研究成果の概要】
 皮膚の表面から薬を投与する「経皮投薬」は、必要箇所へ簡便に薬が届くメリットがあり、鎮痛剤を浸透させる湿布(シップ)や、禁煙用のニコチンパッチなどが身近な実例です。さらに、各種有効成分の皮膚内への浸透が、数10マイクロアンペアの微弱電流によって数倍〜数10倍に加速される効果が認められており、局所麻酔剤の高速投与、およびクリニックで行う美肌成分や発毛・育毛成分の浸透促進などに広く利用されてきました。これは、微弱電流に伴って生じる組織液の流れに乗った薬物浸透の結果であり、イオントフォレシスと呼ばれる現象です。しかし、電源および給電のための配線などからなる装置が必要であるため、家庭での個人使用には適しませんでした。小型電池を電極パッドに一体化する試みが進んでいますが、有害物質や金属を含む通常の「電池」を用いる限り、重厚で使用後の処理にも配慮を要します。今回、酵素によるバイオ発電の技術を利用して、電池を必要としない、ただ貼るだけで所定の微弱電流によるイオントフォレシスが起こるバイオ電流パッチを実現しました。生体・環境に優しい有機材料のみで造られたバイオ電流パッチは、軽く・薄く・柔らかく、そして使用後はそのままゴミ箱に捨てることができます。微弱電流で生じる皮下組織液の流れは、それ自体がマッサージ効果やシワ取り効果を有するので、バイオ電流パッチの応用は経皮投薬に限らず多様であり、セルフケア用品としての普及が期待されます。

 ※図1は添付の関連資料を参照

【成果の詳細】
(1)有機材料だけで造るバイオ電流パッチ
 図2のように、酵素を炭素繊維布に固定化したアノードとカソードを、ゴム製の抵抗(ウレタンゴムと導電性高分子の複合体)で連結し、フレームとともにO2透過性のメディカルテープに貼り付けます。これを、糖分(フルクトース)と鎮痛剤などを含むハイドロゲルに組み合わせて皮膚へ張り付けると、皮膚を通してイオン電流が流れる出す仕組みになっています。その際、酵素アノードではハイドロゲル内の糖分を酸化し(電子を引き抜く)、カソードでは空気中のO2を還元する(電子を受け渡す)反応が起きています。皮膚は弱く負に帯電しているため、皮膚内のイオン流の大部分は陽イオンの移動です(アノード→カソード)。よって、これが生み出す組織液の流れに乗った薬剤浸透(イオントフォレシス)は、主にアノード近傍で起こります。

 ※図2は添付の関連資料を参照

(2)酵素反応による経皮電流を内部抵抗で制御
 皮膚に貼り付けた状態でバイオ電流パッチの性能を評価しました(図3)。生み出せる最大電流は、皮膚の抵抗(約700Ω)のために0.3mA/cm2程度でした。この電流値は、痛みを伴う可能性がある0.5mA/cm2よりも小さいので安全です。パッチの電流値はアノードとカソードの間の抵抗値(皮膚の抵抗+パッチの内部抵抗)で決まります。よって、皮膚の抵抗(200Ω〜700Ω)よりも十分に大きな内部抵抗を搭載すれば、皮膚抵抗の寄与が減り、個人差や皮膚の状態によらず所定の電流を発生させることができます。バイオ電流パッチの出力は6時間以上持続するため、就寝時の利用が可能です。また、ゴム製の内部抵抗を搭載するので、体表で最も大きく動く関節部でも使える程にストレッチャブルです。

 ※図3は添付の関連資料を参照

(3)イオントフォレシス(皮膚への薬剤浸透の促進)を検証
 バイオ電流パッチによる薬剤浸透の促進効果を検証しました(図4)。薬剤分子を浸み込ませたハイドロゲルを用い、ブタの皮膚に1時間貼り付けた後、皮膚の断面を観察しました。蛍光色素ローダミンB(モデル分子)と湿布に用いられるリドカイン(鎮痛剤)で実験しました。リドカインには緑色蛍光分子を結合して観察可能にしてあります。図4から分かるように、バイオ電流がない場合(単に貼り付けた場合)に比べて薬剤浸透が促進されています。さらに大きな電流(小さな内部抵抗)の場合には効果が増大しました。

 ※図4は添付の関連資料を参照

<論文名・著者名>
“Organic Transdermal Iontophoresis Patch with Built−in Biofuel Cell”Y.Ogawa,K.Kato,T.Miyake,K.Nagamine,T.Ofuji,S.Yoshino,M.Nishizawa,Adv.HealthcareMater.,DOI:10.1002/adhm.201400457


 本成果は以下の事業・研究領域・研究課題によって得られました。
 地域イノベーション戦略支援プログラム「知と医療機器創生宮城県エリア」
 研究課題名:ソフトウェット電極で創るウェアラブル診断治療シートデバイス
 研究代表者:西澤松彦(東北大学大学院工学研究科教授)
 研究期間:平成24年11月〜平成29年3月



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