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東京工科大、都市の水辺の「カビ臭」原因物質を初めて特定
都市の水辺の「カビ臭」原因物質を初めて特定
東京・多摩地域の現地調査から明らかに
東京工科大学(東京都八王子市片倉町)応用生物学部の浦瀬太郎教授らの研究チームは、都市の水辺に発生する「カビ臭」の原因物質が、食品のカビ臭の原因となる「2,4,6−トリクロロアニソール」であることを初めて特定しました。本研究成果の詳細は、2014年12月に開催される土木学会環境フォーラムで発表する予定です。
【背景と目的】
都市の水辺に沿った緑道や河川敷内の運動施設を利用する際に、水の臭いを感じることがあります。汚染がひどい場所では硫化水素などを原因とする下水臭がしますが、水がきれいな場所でもカビ臭がする場合があります。水道水のカビ臭は、ジオスミンや2−メチルイソボルネオールが原因物質として知られていますが、都市の水辺のカビ臭の原因物質については、これまで明らかになっていませんでした。
【成果】
東京・多摩地域の多摩川や玉川上水など17か所の水辺から、それぞれ3〜6回季節ごとに水を採取し、その臭いの強さをヒトの嗅覚で試験しました。この臭いの強さは、試料を無臭水で希釈して臭いを感じることができる限界の倍率であらわすと、1倍から300倍程度の範囲でした。臭いの質は、土臭、カビ臭、沼沢臭であったため、こうした臭いの原因物質として、ジオスミンや2−メチルイソボルネオールの濃度を調べましたが、水の臭いを説明できる濃度には達していませんでした。一方、食品のカビ臭物質として問題となる2,4,6−トリクロロアニソールの濃度を調べたところ、その水の持つ臭いのかなりの部分を説明できることがわかりました。嗅覚による試験で100倍以上の限界希釈倍率となった、比較的臭いの強いすべての試料から、13ng/L以上の濃度でこの物質が検出されました。
この物質の起源は調査中ですが、家庭や飲食店、医療現場、工場などで広く消毒・漂白・脱臭のために用いられる塩素系薬剤と有機物が反応すると、2,4,6−トリクロロアニソールのもとになる物質が生成されます。さらにこれが微生物による反応を受けると、2,4,6−トリクロロアニソールとなり、水の中から検出されたと推測されます。
*参考画像は添付の関連資料を参照
【社会的・学術的なポイント】
東京五輪開催を控え、都市の国際的な魅力を語るうえで水辺の「臭い」対策も重要であると考えられます。今回、食品のカビ臭原因として知られていた物質が、都市における臭いと関連していることが初めて明らかになったことで、水辺環境の臭気対策が大きく前進することになると思われます。
※本研究の一部は、文部科学省科学研究費補助(基盤研究(C)課題番号26420536)を受けています。