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ノバルティス、多発性骨髄腫治療薬「パノビノスタット」の国内製造販売承認を申請
多発性骨髄腫治療薬としてパノビノスタットを承認申請
ノバルティス ファーマ株式会社(代表取締役社長:ダーク・コッシャ)は、本日、「再発又は難治性の多発性骨髄腫」の治療薬として、パノビノスタット乳酸塩(開発コード:LBH589、以下パノビノスタット)の国内での製造販売承認申請を行いました。
多発性骨髄腫は、白血球のひとつである形質細胞ががん化した病気です。正常な形質細胞は、免疫グロブリンを作り、身体を異物から守って感染を抑えていますが、がん化した「骨髄腫細胞」は、健康な血液の産生を妨げたり、骨をもろくするなどのさまざまな障害を引き起こします。
日本における多発性骨髄腫の推定総患者数は約14,000人(1)、また人口10万人あたりの推計年齢調整罹患率は約2人、年間死亡数は4,066人と報告されています1。患者さんは男性にやや多く、診断時の年齢の中央値は66歳で(2)、40歳未満の発症は極めてまれで、年齢とともに増加します。近年、本疾患の総患者数、推計罹患数および死亡者数は、徐々に増加する傾向がみられています(3)。よく見られる症状としては、血液中のカルシウム値上昇、貧血、腎障害、骨痛および骨折などがあります。多発性骨髄腫に対しては移植や薬物療法による治療が行われますが、現在、治癒できる治療法はなく、再発、または病勢進行を繰り返すことから、さらなる治療効果の向上や既存治療への耐性を克服する新たな作用機序を持つ薬剤の開発が待ち望まれています。
パノビノスタットは、クラスI、IIおよびIVのヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)を強力に阻害する経口剤です。多発性骨髄腫を含む複数のがんでは、HDAC活性の上昇がみられますが、HDACが活性化すると、腫瘍の形成や増殖、血管新生などがんを促進するプロセスが生じます。パノビノスタットは、このHDACを阻害することで、最終的に細胞ストレスを引き起こして細胞死を誘導し、抗腫瘍効果を発揮すると考えられています。
パノビノスタットは、再発・難治性の多発性骨髄腫の患者さんを対象とした第III相臨床試験において、ボルテゾミブおよびデキサメタゾンの併用療法に追加投与した場合、プラセボを追加投与した場合と比較して、無増悪生存期間を有意に延長することが示されています(4)。
パノビノスタットは、現在世界で承認されている国はなく、米国では2014年3月、EUでは5月に多発性骨髄腫治療薬として申請されており、米国では本年5月に優先審査品目の指定を受けています。日本では、本年9月17日に、厚生労働省より希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)として指定されました。
<参考資料>
1.厚生労働省統計表データベースの「平成23年患者調査報告」
2.日本骨髄腫学会 2012
3.厚生労働省大臣官房統計情報部 人口動態・保険統計課 2011
4.Richardson P,et al.Panorama 1:A Randomized,Double−blind,Phase 3 Study of Panobinostat or Placebo plus Bortezomib and Dexamethasone in Relapsed or Relapsed and Refractory Multiple Myeloma.Abstract #8510.50th American Society of Clinical Oncology(ASCO) Chicago,IL
<ノバルティス ファーマ株式会社について>
ノバルティス ファーマ株式会社は、スイス・バーゼル市に本拠を置くヘルスケアにおける世界的リーダー、ノバルティスの医薬品部門の日本法人です。ノバルティス グループ全体の2013年の売上高は579億米ドル、研究開発費は99億米ドル(減損・償却費用を除くと96億米ドル)でした。ノバルティスは、約135,000人の社員を擁しており、世界150カ国以上で製品が販売されています。詳細はインターネットをご覧下さい。http://www.novartis.co.jp/
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