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東京ガス、NEDOプロジェクトで高効率酸素製造装置「HT−PSA」の実証開発を開始

2014-09-11

高効率酸素製造装置「HT−PSA」の実証開発を開始
−最大50%の省エネにチャレンジ、2017年度の市場導入目指す−



 NEDOプロジェクト(※1)において、東京ガス(株)は、従来技術と比べ最大50%の省エネを実現する高効率酸素製造装置「HT−PSA(※2)」の実証開発を開始します。
 高濃度化された酸素は幅広い産業分野で使用されており、省エネで安価な酸素製造技術の確立が期待されています。
 これまでのプロジェクト(※3)では、酸素を吸脱着するための吸着材に、高温下で高い吸脱着特性を示すペロブスカイト型酸化物(※4)を用いるとともに、吸着材で加温されたガス(酸素と窒素)の熱を蓄熱体で回収する酸素製造技術を開発しました。この独自プロセスにより、従来技術に比べて最大50%の省エネ(※5)となることが期待されます。
 今後の実証開発では、スケールアップした高効率実証機の開発や吸着材の高性能化および量産化技術の確立等を実施し、2017年度からの市場導入を目指します。

【用語解説】

 ※1 戦略的省エネルギー技術革新プログラム/実証開発/高効率酸素製造装置(HT−PSA)の開発(2014〜2016年度)
 ※2 High Temperature−Pressure Swing Adsorptionの略
 ※3 省エネルギー革新技術開発事業/実用化開発/高効率PSA酸素製造装置の研究開発(2011〜2013年度)
 ※4 一般式ABO3で表される、金属酸化物の代表的な結晶構造の一つ
 ※5 従来型PSAの電力原単位約0.4kWh/m3Nに対し、本技術の目標値は0.2kWh/m3N以下

 *参考画像は添付の関連資料「参考画像(1)」を参照


1.プロジェクト概要

 酸素製造装置により空気から分離され高濃度化された酸素は、ガラス溶解炉、ごみ処理施設、オゾン発生器、製鉄所の高炉や転炉、化学プラント、石炭ガス化複合発電(IGCC)など、幅広い産業分野で使用されており、安価な酸素製造技術の確立が期待されています。しかし、従来の製造方法(気体が液化する際の温度差を利用して酸素を分離する深冷分離法(※6)と、ゼオライトなどの吸着材を用い、物理的に吸脱着して酸素を分離する圧力スイング法(※7))では、大幅な効率向上が難しいという課題がありました。
 今回開発する技術は、ペロブスカイト型酸化物を用いた吸着材を600℃程度の高温に保った状態で、ブロワで加圧した空気を吸着塔に投入し吸着材に酸素を吸着させる工程と、真空ポンプにより減圧することで吸着材から酸素を取り出す脱着工程を交互に繰り返し、空気から酸素を高効率に分離するものです。また、吸着材を600℃程度に保つためのエネルギーを減らすため、蓄熱体を用い排出ガスの熱を投入する空気で効率よく熱回収し、従来技術と比較して最大50%の省エネルギーが期待されます。

 *図は添付の関連資料を参照


2.これまでの成果

 2011年度から2013年度で実施したNEDOプロジェクト(※3)において、東京ガス(株)は酸素発生量5.0m3N/hのパイロット試験機を稼働させ、以下の成果を確認しました。


(1)ペロブスカイト型酸化物による酸素吸脱着の耐久性を確認

 600℃以上の高温に保った状態でペロブスカイト型酸化物の酸素吸脱着の連続試験を行い、実証開発へ進む判断材料の一つとなる、約9か月(約16万回の吸脱着)の耐久性を確認しました。

(2)蓄熱体を用いた熱回収を行うことで、95%以上の熱回収に成功

 600℃に保つ必要がある吸着材を効率よく加熱、保温するため、吸着材を通過するガスの保有熱を蓄熱体に溜め、熱交換することでブロワから投入した空気を予熱します。東京ガス(株)が持つ熱回収の技術(※8)を応用することで95%以上の熱回収(※9)を実現しました。

(3)パイロットスケール機の基礎データをもとに、最大50%の省エネルギー可能性を確認

 酸素発生量5.0m3N/hのパイロットスケール機を稼働させ、基礎データを取得しました。この結果を踏まえ、酸素発生量1,000m3N/h以上の商用機のスケールにおける電力原単位を試算したところ、従来技術に比べ最大50%の省エネルギーとなる、0.2kWh/m3N以下になることを確認しました。

 *参考画像は添付の関連資料「参考画像(2)」を参照


3.今後の予定

 2014年度から2016年度までの3年間において、酸素製造量500m3N/h以上、電力原単位0.25kWh/m3N以下を達成することを目標とする実証機の開発に取り組みます。この目標を達成するために、吸着材の低コスト化・量産化技術の確立、2015年には100m3N/hのプロトタイプ機を稼働させ、最適な加熱・熱回収、プロセスの最適化などスケールアップ上の課題を解決します。
 実証開発終了後の2017年度より市場導入を開始し、2020年以降に酸素製造量10,000m3N/hクラスの大型機を実用化することを目指します。


4.実施者

 ・東京ガス株式会社
 ・吸着技術工業株式会社(共同開発先)
 ・東京ガスケミカル株式会社(共同開発先)

【用語解説】

 ※6 酸素液化温度−183℃以下に冷却し、液化した酸素を取り出す方法
 ※7 空気中の窒素を物理的に吸着させ、高濃度の酸素を製造する方法
 ※8 リジェネバーナにおける排熱回収技術。
 ※9 熱回収方式には複数の方式あり。



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プロトタイプ ゼオライト 東京ガス オゾン 最適化 窒素 NEDO

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