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東大など、日本列島最古の鉱床年代決定に成功

2014-09-09

日本列島最古の鉱床年代決定に成功
〜Re−Os法により日立鉱床の生成年代が明らかに〜



1.概要

 独立行政法人海洋研究開発機構(理事長 平 朝彦、以下「JAMSTEC」という)海底資源研究開発センターの野崎達生研究員、鈴木勝彦上席研究員、東京大学大学院工学系研究科の加藤泰浩教授は、レニウムオスミウム(Re−Os)年代決定法(※1)を用いて、長い間不明であった茨城県日立鉱床(火山性塊状硫化物鉱床(※2)に分類される銅・亜鉛鉱床)の生成年代を、鉱床を構成する硫化鉱物(※3)から直接決定することに成功しました。その結果、日立鉱床の生成年代はこれまで考えられていた石炭紀前期(約3億2,320万年前〜3億5,890万年前)ではなくカンブリア紀(4億8,540万年前〜5億4,100万年前)であり、日本列島最古の鉱床であることを明らかにしました。

 本成果は、先行研究により提唱された日立地域に分布する1億5千万年間にわたる地質記録の欠落(ハイエタス)や本地域にカンブリア紀の地質が広く分布することを裏付ける証拠であり、日本列島がたどった歴史を再構築するうえで、その初期過程の年代幅を絞り込む重要な年代制約になることが期待されます。

 本成果は、米国のThe Society of Economic Geologists, Inc.(SEG)が発行する学術雑誌「Economic Geology」に9月1日付け(現地時間)で掲載されました。

 タイトル:Re−Os geochronology of the Hitachi volcanogenic massive sulfide deposit: The oldest ore deposit in Japan

 著者:野崎達生(1),(2),(3)、加藤泰浩(1),(2),(3),(4)、鈴木勝彦(1),(2)

 1.海洋研究開発機構 地球内部ダイナミクス領域
 2.海洋研究開発機構 海底資源研究プロジェクト(現:海底資源研究開発センター)
 3.東京大学大学院工学系研究科 システム創成学専攻
 4.東京大学大学院工学系研究科 附属エネルギー・資源フロンティアセンター


2.背景

 鉱床の成因や探査指針を検討するうえで、最も基礎的かつ重要な情報は生成年代です。従来、鉱床の生成年代は鉱床形成の源となる岩石(母岩)に含まれるケイ酸塩鉱物(※4)の放射年代や、周辺地域に産出する化石記録に基づいて間接的に決定されてきました。しかし、分析機器の発達や技術の向上及び前処理法の確立により、研究現場ではRe−Os同位体を用いた年代決定法(図1)が普及し始めています。 Re、Osはともに親鉄・親銅元素(※5)であるために硫化鉱物に濃集する性質があり、鉱床の生成年代を、鉱床を構成する硫化鉱物から直接決定できるという大きな利点があります。また、変成作用(※6)による同位体情報の二次的な擾乱(年代測定に必要な岩石の持っている初生的な地球化学情報が二次的に上書き・改変されてしまうこと)にも比較的強く、変成帯に分布する鉱床でも初生的な年代情報を得られることがあります。

 JAMSTECはRe−Os同位体分析を高精度で行える国際的にも数少ない研究機関であり、これまでにも東京大学などと共同で、Re−Os年代決定法を用いた様々な鉱床・鉱石の年代決定によって、重要な科学的発見がなされてきました(平成25年5月29日「ジュラ紀後期のグローバルな無酸素海洋の発達による大規模な海底熱水硫化物鉱床と石油鉱床の生成と保存(http://www.t.u-tokyo.ac.jp/tpage/release/2013/2013052901.html)」、平成20年12月24日発表「従来の定説より3億年前に酸化的大気が存在したことの直接的証拠の発見」(http://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20081224/))。

 今回、研究対象とした日立地域は、変成作用を被った岩石で構成されており、化石記録や放射年代記録に乏しい地域です(図2)。その北西に位置する日立鉱山(図2)は1591年に開発が開始され、1981年に閉山するまでに約3,000万トンの硫化物鉱石、44万トンの銅、5万トンの亜鉛を採掘した日本屈指の鉱山であり、その鉱床の成因について長年にわたって研究されてきました。これまで、日立鉱床の生成年代は、石灰岩中に含まれる珊瑚化石の数少ない記録から石炭紀前期(約3億2,320万年前〜3億5,890万年前:地質年代については末尾の国際年代層序表を参照)と推定されてきましたが、同地域には、飛騨帯や南部北上帯のように中国古大陸の断片が分布していると考えられることから、その年代はカンブリア紀(4億8,540万年前〜5億4,100万年前)まで遡ると先行研究により報告されていました。しかしながら、他の化石や年代記録が乏しいため、これまでは日立鉱床そのものから直接的に具体的な生成年代を明らかにすることはできていませんでした。

 *以下、成果などリリース詳細は添付の関連資料を参照



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