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生理学研究所、脳が光沢を評価する指標を解明
脳が光沢を評価する指標を解明
【内容】
これまで光沢を評価する脳の仕組みは明らかではありませんでした。今回、自然科学研究機構 生理学研究所の小松英彦教授および西尾亜希子研究員らは、株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR)の下川丈明研究員と共同で、画像のどのような情報を元に脳が光沢を評価しているかを明らかにしました。本研究は、Journal of Neuroscience誌(2014年8月13日号)に掲載されました。
私たちの研究グループは、光沢が2つの指標(ハイライトのコントラストと鋭さ)によって知覚されているという心理実験の結果に注目。これらの指標を変化させた画像を作成し、その画像を見ているサルの下側頭皮質の神経細胞の活動を詳細に調べたところ、脳の神経細胞がハイライトのコントラストや、鋭さ、および物体の明るさを指標としていることがわかりました。また記録した神経細胞の活動を用いることで、それらの指標を再現できることも明らかにしました。
小松英彦教授は「今回の研究で、これまで明らかにされていなかった『光沢を評価するために脳が利用している指標』を明らかにしました。この結果は、ヒトと同じように光沢を認識できる機械を作ることにつながる成果だと期待できます。光沢は物の質感に影響する重要な性質なので、さまざまなモノづくり産業に役に立つ可能性があります。」と話しています。
本研究は文部科学省科学研究費補助金の補助を受けて行われました。
※「科研費」のロゴは添付の関連資料を参照
【今回の発見】
1.脳が光沢を評価するために使っている指標を解明
2.指標は、ハイライトのコントラスト,鋭さ,物体の明るさという3種類の情報から成る
3.それぞれの情報量は脳細胞の活動からほぼ再現する事が出来る。
【用語説明】
下側頭皮質:大脳の腹側に位置する高次視覚野。色や形、顔など物体認識に重要な役割を果たす領野として知られている。
ハイライト:光沢の強い物体表面において、光の反射で明るくなっている箇所
コントラスト:画像の最も明るい部分と暗い部分の差。
※以下の資料は添付の関連資料「参考資料」を参照
・図1 記録部位の図
・図2 光沢知覚に関わる画像の指標
・図3 提示した画像の例(灰色だけ)
・図4 神経細胞の応答例
・図5 光沢の知覚的指標を神経活動から再現する
【この研究の社会的意義】
脳が、ハイライトのコントラスト,鋭さ,物体の明るさといった、比較的簡単な画像の指標を用いて光沢を効率よく評価していることが、私たちの研究によって実証されました。このような計算を人工的な画像認識システムに応用することで、ヒトと同じように光沢を認識することができる機械を開発することができるようになると考えられます。
また本研究は、『脳が様々な質感を認知するメカニズム』の全容を解明するための重要な足がかりとなると、私たちは考えています。
【論文情報】
Perceptual gloss parameters are encoded by population responses in the monkey inferior temporal cortex..
Akiko Nishio,Takeaki Shimokawa,Naokazu Goda & Hidehiko Komatsu.
Journal of Neuroscience.2014年8月13日