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東北大学、3次元ナノポーラス金属/酸化物ハイブリッド電極を用いた高性能電気化学キャパシタを開発
高性能スーパーキャパシタの開発に成功
(ナノポーラス金属と酸化物とのハイブリッド化)
<概要>
東北大学・原子分子材料科学高等研究機構の陳 明偉教授の研究グループは、3次元ナノポーラス金属/酸化物ハイブリッド電極を用いた高性能電気化学キャパシタの開発に成功しました。これは高電力、高エネルギー貯蔵・供給に向けた次世代スーパーキャパシタの開発において重要な成果です。本研究成果は平成23年2月20日(英国時間)発行の英国科学雑誌「Nature Nanotechnology」のオンライン速報版に掲載されます。
<背景>
1971年に商用機器において節電装置として使われて以来、電気二重層キャパシタ(或いはスーパーキャパシタ)は、高出力と長寿命を併せ持ち、ボータブル機器からハイブリッド電気自動車まで幅広く応用されていることから、これまで大きな注目を集めてきています。スーパーキャパシタは元来優れたサイクル寿命を持った高電力供給元ではありますが、それらのエネルギー密度は従来の電池や多くのアプリケーションで必要とされる値には遠く及びません。たとえば、従来のスーパーキャパシタの貯蔵エネルギー密度は約100F/cm3(或いは150F/g)程度でした。そこで、マンガン酸化物(MnO2)のような擬似容量金属酸化物をスーパーキャパシタ中の電極として使うことが有効である一方、MnO2の電気伝導性の悪さ(10−5−10−6 S cm−1)がネックとなり、これまで十分な性能が出せませんでした。
<本研究の内容>
本研究プロジェクトでは、高性能スーパーキャパシタへの応用のため、新規ナノポーラス金属/酸化物(Au/MnO2)ハイブリッド電極材料を開発しました(図1)。このハイブリッド材料は、独立した3次元ナノポーラス金薄膜にナノ結晶MnO2を無電解めっきして得たものであり、MnO2の電析量(厚さ)はめっき時間で制御することができます。図2(a)にナノポーラス金/MnO2ハイブリッド薄膜の典型的な透過電子顕微鏡像を示しています。これにより、ナノ結晶MnO2が一様にナノポーラス上にめっきされていることがわかります。Au/MnO2界面の走査型透過電子顕微鏡像(図2(b))では、ナノ結晶MnO2が金のリガメントにエピタキシャル成長している様子が観察され、化学結合した金属/酸化物界面が形成されていることがわかります。ナノ結晶MnO2と金の良好な密着により、このハイブリッド材料の電気伝導性が著しく改善されます。電気化学測定により、このハイブリッド電極材料は1160F/cm3(601F/g)にも及ぶ高い電力・エネルギー密度、そして繰り返し使用に対する高い安定性をもっていることがわかりました。開発されたハイブリッド材料は、その高比容量と高充放電率から、高エネルギー貯蔵密度と高度な電力供給を併せ持つ次世代のスーパーキャパシタの有望な候補になることが期待できます。
<今後の展望>
金は貴金属であるため、ナノポーラス銅のような安価な材料で置き換え、安価かつ高性能なスーパーキャパシタの開発に取り組む予定です。
※以下の資料は添付の関連資料「図1・2」を参照
・図1 開発したスーパーキャパシタの外観
・図2 ナノポーラス金属/酸化物(Au/MnO2)ハイブリッド電極材料の(a)透過電子顕微鏡像、(b)走査型透過電子顕微鏡像.(c)スーパーキャパシタの構成図
<用語解説>
(1)スーパーキャパシタ
電気二重層と呼ばれる固体と液体との界面に正負の電荷が蓄えられることを利用したエネルギー蓄積・供給デバイスのことです。
(2)ナノポーラス金(Nanoporous gold:NPG)
孔サイズがナノメーターサイズでスポンジ形状となった金の多孔質構造体。ホワイトゴールド箔を電解腐食することで得られます。
(3)走査型透過電子顕微鏡
電子顕微鏡の観察法の一つで、細く絞った電子線を用いてサンプル上を走査し、それぞれの領域から透過した電子線の情報を検出器で電気信号に変換し像を得ることができます。
(4)エピタキシャル成長
一つの結晶面上に他の物質が規則正しい結晶配位を持って成長することです。
<論文名および著者名>
“Nanoporous metal/oxide hybrid electrodes for electrochemical supercapacitors”
X.Y.Lang,A.Hirata,T.Fujita,and M.W.Chen,Nature Nanotechnology,in press.
http://dx.doi.org/10.1038/NNANO.2011.13