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三菱電機、「自動検針用無線メッシュネットワーク技術」のスマートグリッド実証実験を実施
低消費電力型の特定小電力無線を活用して次世代電子メーター500台の30分自動検針が可能に
スマートグリッド実証実験「自動検針用無線メッシュネットワーク技術」
三菱電機株式会社は、低消費電力型の特定小電力無線を活用した無線メッシュネットワーク技術を開発し、実環境における大規模な自動検針システム動作検証を行いました。
本技術では、500台の次世代電子メーターを収容して30分ごとの使用電力量を自動で検針することを可能とする送信タイミング制御方式を適用しており、特定小電力無線においても大規模で安定なネットワークの構築およびその運用が可能となります。
※参考画像は添付の関連資料を参照
<主な開発成果>
1.端末500台・30分検針の「コンセントレーター主導送信タイミング制御方式」
・コンセントレーターから送信タイミングを制御し、各端末からのデータを確実に収集
・通信速度が遅い429MHz特定小電力無線でも従来比10倍の500台を30分で検針可能
・高速の950MHz特定小電力無線では1000台を収容可能
2.無線メッシュネットワークの性能を実環境で検証
・大船地区に設置した500台の通信端末で、無線メッシュネットワークの性能を検証
・尼崎地区の電子メーター42台に429MHzの端末を接続し、30分自動検針を検証
・950MHz特定小電力無線による500台規模の無線メッシュネットワークを業界で初めて実証
<今後の展開>
2011年度は950MHz特定小電力無線通信端末による自動検針システム動作を尼崎地区の製造現場で検証し、電力自動検針システムの実用化を目指します。国内・海外の電力自動検針システムへの適用を主軸に、工場や公共施設におけるエネルギー利用の見える化やガス検針等各種データ収集システムへの展開も予定しています。
<特許>
国内 15件、海外 4件 出願済
<開発の背景>
低炭素社会実現のため、電力システム技術とIT技術を融合したスマートグリッドに注目が集まっています。このため、三菱電機では、将来の電力システムを想定したスマートグリッド実証実験システムを社内に構築し、技術の早期確立と製品化を目指して準備を進めています。
スマートグリッド構築に向けたさまざまな取り組みが展開されるなか、電力会社は、その第1段階として現行の電力メーター検針業務の省力化を進める電力自動検針ネットワークシステムの開発を加速しています。
電力自動検針システムは、通信機能を有した次世代電子メーターを需要家宅に設置し、各地域の営業拠点などから遠隔検針するものですが、ネットワークの構築と維持管理にかかるコストの低減が大きな課題となっています。
そこで当社は、有線通信と比較して低コストでネットワークを構築できる無線メッシュネットワークに着目しました。無線メッシュネットワークは、隣接する電力メーターから受信した計量データを、次の隣接メーターへ順次データを中継しながらコンセントレーターまで伝送する方式です。しかし、各端末が限られた周波数を共有しながら自律的に送信タイミングを判断するため、複数のメーターから同時に同一周波数で送信されると信号が衝突して再送信となり、確実なデータ収集に難がありました。
当社は今回、この衝突を避け、429MHzの特定小電力無線でも数百台のメーターを収容できる送信タイミング制御方式を開発し、その性能を検証しました。
<開発成果の詳細>
1.端末500台・30分検針の「コンセントレーター主導送信タイミング制御方式」
端末数が100台を超える大規模な無線メッシュネットワークにおいて、各端末の送信タイミングをコンセントレーターが制御する「コンセントレーター主導送信タイミング制御方式」を開発しました。これによりネットワーク内の信号衝突を回避し、通信速度が4.8kbpsと遅い429MHz特定小電力無線でも500台規模の次世代電子メーターを収容して、30分ごとの使用電力量を自動で検針することに必要なデータを確実に収集できます。通信速度が100kbpsと高速の950MHz特定小電力無線では1000台規模の収容が可能です。
2.無線メッシュネットワークの性能を実環境で検証
「コンセントレーター主導送信タイミング制御方式」を適用した無線メッシュネットワークの性能を2つの実環境で検証しました。
大船地区では、通信端末500台を3つの建物に分散配置し、429MHzと950MHzの2種類の特定小電力無線で検証しました。データ収集時間、下り制御信号伝送時間、新規通信端末のネットワーク参入時間、障害時の迂回経路生成時間などが次世代電子メーターのデータ収集に十分対応できることを確認しました。950MHzの特定小電力無線による500台規模の実証は業界で初めてです。
尼崎地区では、製造現場で稼働している42台の次世代電子メーターそれぞれに429MHz特定小電力無線の通信端末を接続して、実際の電力使用量を30分ごとに自動で検針する実証実験を行いました。実際の電力使用量が検針できることを確認し、あわせて検針データ収集時間、検針データ収集率、無線電波状況なども計測しました。