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帝国データバンク、農業法人の休廃業・解散動向調査結果を発表

2014-07-14

特別企画:農業法人の休廃業・解散動向調査
震災以降2倍のペースで推移
〜後継者難や生産コストの上昇で増加〜


<はじめに>
 環太平洋経済連携協定(TPP)交渉やコメの生産調整(減反)廃止など、農業を取り巻く環境が変化している。政府は、国産農産物の価格競争力を高めるべく、大規模な農政改革を打ち出し、企業との連携や自由化を進めている。
 近年では、原発事故の影響で東日本エリアのコメや野菜農家が大打撃を受けたほか、円安に伴う配合飼料や重油価格の上昇で生産コストが上がっている。こうした問題に加え、代表の高齢化も進んでおり、廃業を余儀なくされる業者も少なくない。
 帝国データバンクは、2006年度から2013年度の間で休廃業・解散した農業法人について集計・分析した。なお、農業法人の休廃業・解散動向に関する調査は今回が初めてとなる。

 ◇「休廃業」とは、企業活動を停止している状態を指す(官公庁等に「廃業届」を提出して企業活動を終えるケースを含む)。調査時点では当該企業の企業活動が停止していることを確認できているが、将来的な企業活動再開を否定するものではない
 ◇「解散」とは、企業が解散した場合を指す。主に、商業登記等で解散を確認
 ◇「休廃業・解散」は、企業活動停止が確認できた企業のなかで、倒産(任意整理、法的整理)に分類されないケース


<調査結果(要旨)>
 1. 2013年度に休廃業・解散した農業法人は173件。集計を開始した2006年度以降で2012年度に次いで過去2番目の高水準となった
 2. 業種別では東日本大震災以降、「米穀」「野菜・果樹」が大幅増
 3. 代表年代別では「60代」が最多。代表の高齢化・後継者難が深刻化
 4. 従業員数別では「5人以下」の小規模法人が8割占める


1.農業法人の休廃業・解散件数推移〜2012年度から高止まり続く
 2013年度に休廃業・解散した農業法人は173件となり、集計を開始した2006年度以降で2番目の高水準となった。直近でピークとなった2012年度は、東日本大震災前の2010年度と比較すると約2倍の191件となっている。背景として、原発事故による風評被害の影響、その後の電力の値上げなど厳しい環境下にあることが収益を圧迫しているほか、近時は、円安の進行に伴い、トウモロコシが原料の半分を占める配合飼料や重油の価格が上昇、さらに、代表の高齢化や後継者難も深刻化していることなどが挙げられる。

 ※グラフ資料は添付の関連資料「グラフ資料」を参照

2.業種別推移〜7業種中5業種で減少するも高水準で推移
 業種別にみると、2013年度は7業種中5業種が前年度比減少となっており、なかでも「米穀」(19件、前年度比36.7%減)が大幅減少となった。
 ただし、東日本大震災前の2010年度と比較すると、「米穀」(6件→19件)、「野菜・果樹」(16→55件)の増加が目立つ。原発事故による風評被害や、電力・運輸コストの上昇が要因と見られる。また、畜産は、肉用牛(12→16件)、養豚(16→21件)、養鶏(13→15件)が増加傾向となっており、今後も飼料価格の高止りや、電力・燃料コストの影響が懸念される。

 ※グラフ資料は添付の関連資料「グラフ資料」を参照

3.代表年代別推移〜60代以上が7割占める
 2013年度に休廃業・解散に至った農業法人の代表を年代別にみると、「60代」が最多の60件(構成比43.5%)となり、「70代」(25件、同18.1%)、「50代」(24件、同17.4%)が続いている。全体的にみると「60代以上」が全体の約7割を占めており、高齢化が浮き彫りとなった。
 国内の農業人口は減少基調が続くほか、後継者となる若手が不足し、廃業に至るケースが散見される。今後は、「60代以上」の層が拡大していくと見られており、さらに高齢化が進む可能性が高い。

 ※グラフ資料は添付の関連資料「グラフ資料」を参照

4.従業員数別〜小規模法人が8割占める
 従業員数別にみると、「5人以下」が137件(構成比79.2%)となった。「5人以下」の小規模法人は、代表の高齢化や後継者難が深刻化しているものと思われる。
 その一方で「10人以上」の従業員数を有する法人の休廃業・解散件数は少なく、横ばいが続いている。政府では、農業や水産業などの1次産業を食品加工や流通にも展開する6次産業化を推進している。さらに、環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉の行方や2018年に廃止予定のコメの生産調整(減反)を見据えて6次産業化に参入する中堅・大手も増えつつある。資金・生産力がある中堅・大手と小規模法人の二極化が進んでいる。

 ※グラフ資料は添付の関連資料「グラフ資料」を参照

5.まとめ
 2013年度に休廃業・解散した農業法人は173件。集計を開始した2006年度以降で2番目の高水準となった。直近でピークとなった2012年度は、東日本大震災前の2010年度と比較すると約2倍の191件まで増加した。
 こうしたなか、政府は、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉や2018年をメドに廃止が予定されるコメの生産調整(減反)に合わせて、大規模な農政改革に取り組む方針を打ち出している。全国農業協同組合連合会(JA全農)の株式会社化など、企業との連携を加速させる施策は、重点方針の一つである。
 大手企業や生産力を有する農家への集約や自由化が進む一方で、小規模業者は競争の激化や飼料や電力などの生産コスト高が収益に与える影響が大きいと思われる。今後も農業の休廃業・解散件数は高水準で推移する可能性がある。



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